2年生3学期 女剣士・その後
「えっ、北欧神話部、倒されちゃうんですか?」
「なんか、4組の鈴木が独り言でそう言ってたぞ!」
2年生が終わろうとしている頃、アリスは2年2組のクラスメートから言われた言葉に固まった。
「そうなんですか。やだー。
見た目、なんか美しいロボットばっかりだったのに、倒されちゃうんですね」
「まぁ、バーニングカイザーの敵勢力になってたから。
それはそうと、アリスのところの女剣士、リベンジに来るって言ってなかったっけ」
「あっ……」
アリスは、普段「オメガピース」で一緒に生活をするトライブの顔を一瞬で思い出した。
敗北直後、トライブは相手となるロボットを探し回ったが、その世界にいないと分かり、そこから動きがない。
だが、テュールソーディアンと再戦を望んでいることだけは間違いなさそうだ。
――私は……、もう一度戦いたい。負けた瞬間から、そう思ってる。
――私だって、ロボのあなたを倒したいわ。
「ソードマスターが、あのまま引き下がるわけがないです」
「だろ?
『クイーン・オブ・ソード』って呼ばれる力、最後にもう一度見たいなって」
アリスは、クラスメートに肩を叩かれた。
うなずかざるを得なかった。
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「宙くん、連れてきましたー!」
翌日、2年1組のホームルームが終わった瞬間にアリスが教室のドアを開ける。
そのまま、宙の席まで行って廊下を指差す。
宙も、その意味が分かったようだ。
「あっ、あの時の……」
宙は、すぐに廊下に向かう。
長身はともかく、金髪を輝かせるトライブの姿は、数ヵ月経った今でも思い出せる。
「もうすぐ、テュールソーディアンに変身できなくなるって、アリスから聞いたけど本当?」
「あぁ。
俺は最終決戦に加われないみたいだけど、たぶんうちの部はそろそろ危ないと思う」
廊下には、これから部活へ向かう2年生が次々と行き交う。
再び学校に現れた女王に、誰もが一目振り返る。
「私、もう一度戦いたい。
本気のテュールソーディアンと」
「マジかよ……。
それで、ここに来たのか」
「そうね。
戦いたくなかったら、いま無理して戦わなくてもいい」
宙の体が、軽く震えた。
「たしか、もう一度戦いたいって言ってたよな。
俺だって、ソウルアップしてもあの力を感じた以上、受けて立たなきゃいけない」
「じゃあ、勝負ね」
2人は、春になりたての優しい光の下に出た。
宙がミラーストーンを太陽の光にかざし、上空へ飛び立った。
校舎の上から白い光が弾け、剣を持った巨大ロボが上空で輝く。
校庭に降りるにつれ体を小さくし、地上に降り立ったときにはトライブとほぼ同じ全高に縮んだ。
「勝負っ!」
剣を銀色に輝かせる、テュールソーディアン。
アルフェイオスを正面に構えるトライブに向かって、鋼の足で駆ける。
「戦う以上、俺は容赦しない!」
テュールソーディアンの口元が動いたところで、トライブの足も動き出す。
「はああああっ!」
両者の剣が、激しい音を立ててぶつかる。
剣の勢いは、少しだけトライブのほうが上だ。
「まだまだよっ!」
一度相手の剣を横に反らし、その上からアルフェイオスを強く叩きつけるトライブ。
テュールソーディアンの勢いを、完全に押さえ込む。
それを傍から見るアリスは、早くも体を震わせていた。
「ソードマスターが、最初から飛ばしている。
今まで、こんなバトルあまり見てないし……、時間が経ったら相手の反撃に耐えられなくなりそう」
アリスの読み通り、押さえ込まれていたテュールソーディアンの剣が一気に振り上げられ、今度はアルフェイオスが右に傾けられる。
だが、トライブは一瞬で剣の向きを元に戻した。
「なかなかやるな、トライブ」
「同じような負け方は、しないから」
トライブが力強く告げたところで、テュールソーディアンが大きく後ろにジャンプ。
テュールソーディアンの剣身に、電撃が走る。
だが、それを見てトライブが走り出した。
「また、負けに来たようだな」
「はあああああ!」
電撃に満ちた剣が、いまアルフェイオスに振り降ろされる。
だが、トライブはアルフェイオスを軽く横に反らし、柄の近くを狙って振り下ろした。
「なっ!」
電撃がほとんど襲ってこない、剣の根本。
相手の手に近く、以前この攻撃で受けた電撃と同じくらいの衝撃が、トライブの手を襲う。
だが、その衝撃は、女王の想定内――。
「はああああああああっ!!!!!」
一瞬の隙もなく、再び振り降ろされたアルフェイオス。
「クイーン・オブ・ソード」が出せる限りの力を、相手の剣に叩きつけた。
1秒もしないうちに、剣がテュールソーディアンから引き離される。
「なんだ……、この衝撃……。
前のバトルを、はるかに上回る……」
落ちた剣を一目見て、トライブにうなだれるテュールソーディアン。
対するトライブは、表情を一気に緩めた。
「強かったじゃない、テュールソーディアンも。
でも、私だって勝ちたかった。
テュールソーディアンに、どうすれば勝てるか、あれからずっと考えてたのよ」
「トライブ……。
この俺に、そこまで考えてたのか」
トライブは、口元を震わせた。
そして、自分のこれまでを確信するかのようにうなずいた。
「私が、剣で生きるって決めたからよ。
本気になれるのが、剣を持った時だけだから」
「すげぇ」
春の夕日が差し込む校庭。
アリスの目に、2つの長い影が映る。
本気の戦いを終えた剣士たちを、優しく包み込んでいるかのようだった。




