2年生2学期 剣の女王、学校に降臨!④
「せっかく呼んだゲストに、そんな言い方はないよ!」
聖名に背を向けたトライブの背に、力強い声が響いた。
アリスとトライブが、声のする方に振り返る。
「あっ、バーニングカイザーの男子……」
群衆の中から出てきたのは、オレンジ色の髪を校庭の照明に輝かせた男子、煌だった。
煌は、聖名を一度見てからトライブの前に進む。
それから、バトルを見守った群衆たちに目をやった。
「こんなのおかしいって……。
人間とロボじゃ、差があり過ぎるよ。
それで負けた人間の剣士に、冷めた評価するのはよくないって」
「弱いから言ってるんじゃない。
アリスが強い強いって言うから、少しは期待してたのに、うちの剣士も倒せないレベルだった」
聖名が、すぐに言い返す。
煌がトライブに目をやると、アリスが真っ先に首を横に振った。
トライブは、相変わらず何も言わず、煌を見守っている。
「あの顔を見ろよ。
完敗して、自信を失ってるよ。
俺たち東領家中に呼んだことで、この剣士が心に傷を負ったらどうするんだよ。
学校に来てくれるゲストはちゃんと迎えるのが、俺たちが先生から教わったことだと思う」
煌が訴える間、トライブは何かを考えるように下を向いた。
煌が学校のヒーローであることは、アリスから聞いている。
だが、出会ってほんのわずかで、トライブは既に違和感を覚えていた。
「そんなわけじゃない……」
「いま、あの弱いクイーンが、そんなわけじゃないって言ってたけど?
だいいち、負けた、そして自分が弱い剣士だったってことを認めてるの。
あなたは、バーニングカイザーでほとんど負けたことがないから、そんなきれいごと言えるじゃない」
聖名が煌を押しのけ、再びトライブの前に近づく。
「あなたは弱いの。
何を言ったって、剣士を辞めるレベルで弱いじゃない。
とっとと、クイーンの名を捨てて、異世界の自称・最強剣士になりなさい」
「その言い方はないわよ。
私だって、私なりに強いと思ってる。
でも、今日のところは負けた。それだけじゃない」
トライブの目が、一気に細くなる。
「バーニングカイザーの男子でも止められなかったから、ソードマスターが本気でキレそう。
あまりキレることないのに……」
アリスが、キョロキョロしながら2人を交互に見た。
「負けを認める。
あなたはそれだけで弱いと認めた。
クイーンじゃないと認めた。残念ね。
悔しいの一言もない、弱い女王だったと」
「悔しいに決まってるじゃない!」
校庭に、トライブの強い声が響いた。
群衆が一斉に静まり返る。
「私は、たしかに異世界で『クイーン・オブ・ソード』と言われる。
でも私は、最初から強かったわけじゃない。
何百回、何千回と敵の前に散って、そこから何度も立ち上がった。
だから、今の私がここにいる」
トライブの声に、聖名が一歩足を引く。
「私に限らず、剣士はみんな敗北から強くなっていった。
それをできるのが、人間なの。
私は……、もう一度戦いたい。負けた瞬間から、そう思ってる。
立ち上がるのをやめた時。それが、私がクイーンの称号を捨てる時よ」
「いいこと言うな、トライブ」
ソウルアップを解き、ゆっくりとトライブの前に近づいたのは、先程までテュールソーディアンで戦っていた宙だった。
「テュールソーディアン……。
あなたに一番聞いて欲しかった。
私がいまどう思ってるか」
「大丈夫。
俺、聖名が話しているところからずっと聞いてたから」
宙が、トライブにスッと手を差し出した。
「トライブ。
俺、テュールソーディアンであそこまでガチの剣バトルをしたことがない。
女王の名を背負う気持ちで、最後まで戦ってたよ」
「そう思ってたのね」
宙が、小さくうなずく。
「聖名は徹底的に弱いって言ってたけど、俺は普通に最強の剣士だと思う。
できれば、俺がロボじゃない状態で、剣のガチバトルをしたい」
「私、手加減しないわよ。
いい?」
「あぁ。
俺、プロの剣士と戦えるって、こんなこと夢のような話ないから」
「あ、エクストラマッチですね」
アリスの声に、2人が同時にうなずいた。
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「フルボッコだったな、宙」
「一度限界まで戦った女なのに、それでも簡単に倒すなんて、さっすが女王!」
剣を渡され、トライブに正面から立ち向かうも固いガードに阻まれ、逆にトライブのパワーを見せつけられた。
元剣道部の宙が、「クイーン・オブ・ソード」の前に屈するのは、30秒もかからなかった。
「ガチで強い。
でも、俺、ここからまた強くなるから。
トライブに追いつきたい」
「私だって、ロボのあなたを倒したいわ。
その時を楽しみにしてるから」
手を握りしめた2人の剣士。
それを見た聖名が、静かに言い残した。
「トライブは、想像以上に女王だった……」




