2年生1学期 メロンパンで日本地理を学ぼう?②
萌の親が運転する車で、東名高速を走るアリス。
「オメガピース」のある世界に高速道はないので、アリスは広い道を多くの車が流れていく光景に、終始目を取られていた。
「アリス。
メロンパンの聖地、もうちょっとで着くから降りる準備をした方がいいよ。
あ、これ、メロンパン代!」
アリスは、萌から封筒を受け取る。
そこには、福沢諭吉の顔が書かれたお札が1枚。そして2回折られた白い紙。
「これ、お金ですか?
食べられそうな感じがします」
アリスよ、お金を食べてしまうのか。
「食べられないよ?
そっちの世界では、お金あるの?」
「はい。
リアというお札を使っていますけど……、1リアからもう紙です」
「そうなんだー。
私たちのいる日本では、500円までは硬貨、1000円からはお札。
アリスに渡したのは、その中で一番大きなお金だから。
今日の社会科見学、それで全部できると思うよ!」
萌がそう言っている間に、車がゆっくり減速し、「P」と書かれた看板の左に吸い込まれていった。
「はい、ここがメロンパンの聖地、海老名SA!
ここはたくさんグルメあるけど、メロンパンが一番有名だから、好きなだけ食べて発表につなげられる!」
「いっぱい食べられるんですね。
やったー!」
車が止まると、アリスは早速車を飛び出した。
「EXPASA海老名下り」と書かれた看板の下にあるドアへと吸い込まれていく。
さっきまで聞いていたエンジンの音がサービスエリアの出口に向かっていくことも気付かずに。
「一番売れてるメロンパン……。
あっ、あそこだ!」
週末だけあって、建物の中は多くの人でごった返していた。
入って右側、すぐのところにメロンパンのイラストを見つけて、アリスは駆けていく。
売り場には人だかりができていて、メロンパンを拝むことも難しい。
「うーん……、見た目だけでもおいしそう!
3コ入りの袋、一気に4つ買っちゃえ!」
当然、アリスが一人で全部食べるという計算である。
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「買ったはいいけど、どこで食べよう……。
萌ちゃんの車の中で食べるしかないかな……」
アリスは、メロンパンの入った袋を抱えながらサービスエリアの建物を出た。
降りたはずの場所に向かう。
「あれ……?」
アリスが降りた場所には、既に全く違う黒塗りの高級車が止まっていた。
それも、複数台横並びに。
「やすやすとここに乗り込んでくるとは。
メロンパンをプレゼントしてくれるのか、あ?」
「いや、違います……!」
かりにも「オメガピース」で兵士をやっているのに、アリスはあっさり逃走。
だが、肝心の車は見つからなかった。
「萌ちゃんの連絡先知らないし、高速の上を歩いて探すしかないのかな……」
アリスはベンチに座った。
そして、思い出したように封筒の中から白い紙を取り出した。
「きっと、ここに連絡先が書いてあるかも。
メロンパンのことを調べられたら呼んで、とかそういう感じかなぁ……」
紙は折られている。
アリスは、ゆっくりと開いた。
そして、息を飲み込んだ。
――アリス、私のイタズラにハマっててざぁこ!
メロンパンの聖地までは案内するけど、そこから先も一緒だなんて言ってないよ!
ここから外に出たら海老名駅までバスあるし、アリスは一人で領家まで帰ってきてね!
じゃっ!
「ああああああああああああ!
ハメられたああああああああ!」
アリスの悲鳴がサービスエリアに響き渡る。
普段、「オメガピース」と東領家中学校の間を転送でしか行き来していないアリスにとって、ここは完全に異世界の知らない場所。
そんな場所に放り出されてしまったことになる。
「どうしよう……。
領家駅まで帰りながら、社会の発表を仕上げないと」
メロンパンの寝言が招いた運命に、アリスは従うしかなかった。




