2年生1学期 メロンパンで日本地理を学ぼう?①
「さて、この2週間、社会の授業では日本の形とか、どういった地方や県があるかとかを簡単に復習してきました。
2年生の地理では、私たちが住む日本について、より深く学んでいきたいと思います」
東領家中学校、2年2組。
社会の教科担任・大出の声が教室に響く。
その中で、アリスは一人うつら、うつら……。
「アリス! 寝るんじゃありません」
「あぁ……。
おいしいメロンパン……」
アリスは食べ物に囲まれる夢を見ながら、完全に別世界にいた。
「アリス!」
2回目の大出の声で、アリスは飛び起きた。
飛び起きた反動で、アリスの口からよだれが落ちてくる。
「いま、メロンパンという言葉が聞こえました。
夢の中で、どこのお店に食べに行ったのですか」
「パン屋さん」
あまりにもひねりのない答えを、寝起きに言ってしまうのがアリスである。
勿論、「オメガピース」での寝起きでもそう言う癖があるのだが。
「さて、アリスがいろいろ旅をしていたということで、皆さんにも日本を旅して頂きます」
大出が黒板の左上に、黙々と字を書き始める。
「5人で巡る日本を知る旅。
2学期に、日本の各地方のことを勉強します。
その時に、実際に日本の好きなところを旅して見てきた、産業や文化、気候など、好きなテーマで、5人1組で発表してもらいます」
2人1組にされたクラスもあるなど、人数は大出の気まぐれである。
一部の生徒からは、安堵の声が上がった。
だが大出は、言い終えたと同時にゆっくりアリスに歩き出す。
「やばっ……。
私へのお説教、まだ終わってなかったんだ……」
「そうですよ、アリス。
このクラスは36人ですので、5で割ると1余りますね。
なので、アリスには1人で……、いいですか、1人で日本のどこかを紹介してもらいます」
「えっと……。
私、普段は『オメガピース』で兵士やってるんです。
放課後はあっちの世界に帰らなきゃいけないんです」
「それは分かってます。
でも、日本の中学校でやり直し中学生ライフをやっていますので、日本のことを知って頂きたいのです」
クラスの人数が36人なので、もともとアリスがそうなる運命だったということは言うまでもない。
「さぁ、メロンがおいしい県に行きますか?
メロンパンがおいしい県に行きますか?」
「メロンパン!」
ごはん以上にスイーツ系が大好きなアリス、即答。
大出が目の前で腕を組む。
「そうは言っても、メロンパンがおいしい店は、どこで調べるかによって変わってくると思います。
なので、そのメロンパンが何故食べられているのかを一緒に発表してもらいます。
もしなんでしたら、その地域の産業や文化まで一緒に調べてもらってもいいですよ」
「ナンですか?
カレーに付けて食べたいですっ!」
ありきたりなネタに、教室中が凍り付いたのは言うまでもない。
「でも、私、『オメガピース』の自治区だったら有名なパン屋さんを知ってるんです。
東領家中学校の校門を出たことがないから……、こっちの世界のパン屋さん、そもそも分からないんです」
「それはそうだな……」
そこに、ピンク色の髪を揺らしながら、白木萌が手を挙げた。
「もしアリスが時間あるんだったら、今度の週末、聖地巡礼しない?
親の車でドライブ!」
「聖地巡礼……?
アニメのですか?」
「メロンパンの。
ちょっと車を走らせるだけでも、いろいろなことが学べると思うよ!」
「行ってみたいです!」
アリスは、社会の授業中であることをすっかり忘れているようだ。
「分かりました。
では、皆さんの研究発表のお手本となるように、アリスだけメロンパンの聖地巡礼旅のことを、1学期のうちに発表してください」
「はい……」
この時、アリスは知らなかった。
萌がアリス以上にいたずら大好きっ娘であることを。




