わだかまり
「ここってリーのいた街とは全然違う?」
道中、唐突に質問が始まった。
「大して変わらないが、どうしてそう思う」
「君がしきりに目を動かすものだから、真新しいものでもあったのかなって思っただけだよ」
真新しいというよりか、懐かしさのようなものがあっただけなのだ。俺は街にいたわけではない。その時はまだリヒトだったから。でも懐かしいと感じている。
記憶に残っているその街の情景はここと大差ない、ごくありふれたものだ。リヒトの視界には大抵、ディアがいて彼はただ無心でいた。そんな記憶。懐かしいはずはないが、記憶にあったからか既視感を覚え、懐かしく感じる。
「懐かしいの?」
「俺にはそんな記憶などないのだがな」
「あ、そっか。その後だもんね」
話が早くて助かる。覚えていてくれたようだ。
そうこうしているうちに中央の広場に着いた。人通りは朝だからか中央はまばらで、店のある方が賑わいを見せている。真ん中にある噴水に腰掛け、まだ温かいクロワッサンを頬張る。
パリッとしていて味も美味しい。
隣のメアも美味しかったようで頬を緩ませ、率直に感想を述べている。
「美味しい! リーはこういうのも作れるの?」
「簡単なのは作れるが、やはり本場には負ける」
「そうなんだ。……やっぱりリーはすごいね。何でもできるんだ」
突然の称賛に頬張っている手を止める。何でもは間違いだ。そんなに大それた人間ではない。
「本当にすごいよ。僕ができるか聞いたこと、今まで全部やってのけているんだもの。ほんとすごい。リーはかっこいいね」
「……」
「どうかした?」
「何でもない」




