レア
日付は変わり、翌朝。俺はいつも通り5時ごろに起床。日課のランニングは欠かさずしている。朝の方が全くと言っていいほど人がいないので、気が楽なのだ。
走り終え、寮に戻り身支度をする。街に行くので庶民の格好だ。俺には馴染みのある服。貴族っぽい服はあまり得意ではないので、多少の安堵感はある。
着替え終わり丁度いい時分、部屋の扉が叩かれる。
「リー、開けてもいいかい?」
「構わない」
部屋に入ってきたメアを見てふと思う。俺はメアの私腹を見るのは初めてではないかと。
学校内は防犯面から平日休日を問わず、制服の着用が義務付けられている。実習の際もそれ専用の服が支給されている。
だからメアは俺の私服を引き籠っていた時に見たことがあるだろうが、俺が見るのは初めてだ。王子様が小綺麗な市井の服を着ている。ゲーム内でメアの私服はちゃんと格式高い貴族のものだったと記憶している。かなりレアだ。幼馴染にキレられそう。
「もしかしてどこか変?」
「……いや、何でもない」
じっと見すぎた。
俺自身、今この瞬間は単なるゲームプレイヤーとしての血が騒ぐんですよ。レア度の高いカードを引いた時よりテンション上がっている自覚ある。別に俺がやり込んでいたゲームではないけど。ここにあいつがいたら絶対に自慢してやるのに。
ゲームを思い出すとあいつの顔がちらついてなんだか無性に寂しくなるんだよな。あんなに仲良かったのに、名前も思い出せない上にもう会えないとか辛すぎる。
今頃元気にゲームやっているであろう幼馴染に思いをはせる。
いや、元気にゲームやってるなら辛くはないな。逆にムカついてくる。あいつがこの世界に来ればよかったのに。
「おーい、リー? 聞こえてる?」
「……え、あ。すまない」
「何考えてたの? すごく思い悩んでいる感じだったけど……」
「何でもない。気にするな」
メアの私服にテンション上がって、幼馴染を思い出して、そいつにイラついていたとか言えないわな。何故かは全く自覚がないが、いつもより今日の俺の情緒は不安定。
「……大丈夫なんだよね?」
「あぁ」
「うん、ならいいよ。しつこくてごめんね」
「気にしていない」
「ありがとう。じゃあ、行こうか」
過保護なメアは俺の些細な表情の変化から本当に大したことではないと感じ取り、そこで追及をやめた。
そして俺と共に連れ立って寮を出る。




