料理スキル
帰寮するとキッチンにそのまま向かう。今の時間帯はまだ食堂は空いていないので一階には人が少ない。キッチンは皆無だ。好機だと思って腕を振るうべく、準備に取り掛かる。
ボウルに卵や薄力粉、砂糖、牛乳などなど必要なものを入れていく。メアが所望したのはパンケーキなので、ホットケーキよりは分厚いものにするためにヨーグルトや隠し味に某調味料も入れる。それをさっさと混ぜる。混ぜすぎはよくないって聞いたことがあるので、手早くかつ均一に。
それを熱した後、一度濡れた布巾で冷ましたフライパンに流し込んでいく。片面に空気の穴が見えだしたら、ひっくり返す合図だ。勢いよく、それでいて丁寧にひっくり返していく。それを繰り返すこと数回。二人分のパンケーキの塔が出来上がった。
冷やしておいたイチゴとバナナをとりだし、適当な大きさに切っていく。このヨーグルトは甘くないので砂糖を追加する。イチゴとそのヨーグルトを混ぜ合わせると即席の苺ソースの完成だ。
上からソースをかけ、アイスとバナナをトッピング。完成だ。
俺にしてはかなり上出来だと思う。滅多に作ったことなどないし、前世ではミックス粉を多用していたから、上手くいって本当に良かった。多分美味しいはず。
「ほら」
「っ! 美味しそう……」
口元を手で覆い、絞り出すようにそう言うメア。手を付けずにずっと眺めている。
俺はそんなメアを無視して、二人分のお茶を入れると食べ始める。うん、美味しい。
「食べないのか? アイス、溶けるぞ」
「ううん、食べます! すっごく美味しそう」
食べ始めるとどんどん手が進んでいっている。その顔は美味しさからか緩んでいる。ひとまず安心だ。
それにしても俺より後に食べ始めたはずなのに、もう俺よりも食べている。さっぱりめとはいえ、一気に食べるには少し躊躇してしまうのに気にせずペロッと食べきった。
「美味しかった……」
「そうか」
「また作ってね。僕、これ気に入ったよ」
そう満面の笑みで言われては、こちらも悪い気はしない。
「夕食はいつ食べるんだ?」
「ちょっと遅めに食べない? 今ので結構お腹たまった」
「わかった」
俺の食事はあれから完全に二人に管理されている。ちゃんと一人前を食べているか目の前で確認される。偏食ではなかったので、食事の内容まで口を挟まれる心配はないのがまだましだった。
一度戻った寮部屋でそんなことを考える。エーファ様はまだしも、メアにまで苦労を掛けている現状は忍びない。でも眼前で大丈夫って言い張っていながら倒れた自分が悪いので甘んじて受け入れる。
俺みたいな人間が心配されているのも悪い気はしない。




