登校再開
「えっと。初めまして。ディアナ・ホールです。よ、よろしくお願いします……」
たどたどしく挨拶をするのは俺の妹だ。
入学と同時に巫女であることも国中に公表され、このクラスに配属されたと知れると皆一様に妹に会いたがった。教室に来るまでに色んな人物がディアに接触を図ったが、俺が隣を歩いていることを知ると近寄れずにいた。
そんな腑抜けに用はないとこちらもどんどん進んでいったので、最終的に近づいてきたのはメアとジキルさんとリチャード先輩とハイドさんだけだった。
「嬉しそうだね。リヒト」
今は隣の席にいるリヒトにそっと声をかけられる。
今まで俺たちの座っていた席に俺とメアが座り、その前にエーファ様とディアが座るような位置関係にした。見事に俺の周りを避けていたので誰もディアの席の近くにいない。当然の結果だ。ざまあない。
そしてメアにはお願いして、人前ではあだ名で呼ばないでもらっていた。なんだか気恥ずかしかったから。
「ああ、あいつらの変化が杞憂に終わったことを知ったからな」
「あの先輩方?」
「何も変わらなかった」
「うん、そうだね」
俺の些細な声色の変化から喜びを感じ取ったようで一緒に喜んでくれる。
「そういえば、最後にあのピンクの髪の先輩の言っていたのは何だったの?」
「ああ、あれか。よかったね、って言われただけだ」
「……そうなんだ。よかったんだね」
「……?」
ハイドさんに別れ際、耳元で囁かれた一言についてだった。意味が通じていることに疑問を持ったものの、ディアの紹介も終わったためメアが正面を向いたことで打ち切られる。
「お兄ちゃん。これからよろしくね」
席に戻ってきたディアが言ったその一言で教室内がざわめく。
今日は今までで一番面白い日かもしれない。復讐とか大それたことはしないけれど、以前まで俺を下に見ていた者たちの驚き、狼狽える様は見ものだった。少しくらいそう思っても罰は当たるまい。
「授業を始めます」
ハイネ先生の言葉で一時間目の国史が始まる。
ディアも一か月分の遅れなんてものともせず、くらいついていく。まだ俺が勉強を始めた年と同じだが、教育は受けたはずなので学習の遅れは一切気にしていない。
俺の思いと同様にディアはきちんと授業を理解していた。




