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悪役補正は……

「そんな顔もできるんだね」


 にこやかに言われるも、だからどんな顔だよと言い返したい。俺は無表情に慣れたから、表情が動かないのは問題ない。それよりも表情が動いたからといって、何かを言われる方が面倒くさいということを痛感した。


「見るな」

「僕には冷たいんだね」


 そりゃそうだろう。俺の口調は共に過ごした時間に比例するように変化していっているから。

 それにエーファ様とディアと一緒にいた時間をなめるな。ほとんど屋敷にいるときはエーファ様に付き従っていたし、ディアとは兄妹だ。初めから構築されている関係性から違う。


「さっきの話に戻るけれど、 “悪意の影”っていうのが浄化されたから、リヒトは表情が改善されたのかしら?」

「そうですね……」


 スチル絵を思い出す。アニメ化されたときの映像も。

 “影”の色が濃くなればなるほど、ゲーム内のリヒトは悪役らしくなっていっていたような気がしなくもない。あれに思考なり感情なりが影響を受けていたとか。

 あり得ない話ではない。それならば、これは悪役補正というよりか、悪役または闇属性持ちだから“影”を引き寄せる体質のようなものなのか。そしてそのせいで精神が侵されていき、最後には狂っていく。

 筋は通っているように思える。


「また一人で考え込んでるでしょう。一から十まで話せ、とは言わないけれどちゃんと伝えるべきことは伝えて」

「善処します」

「善処するっていうのは方便でしょ。もう、教えてよ」

「……確証はないですけど、俺が闇属性持ちだから“影”を集め易いのではと……」

「でもその“影”は浄化ができるのでしょう。浄化をすればいいのではなくて?」


 エーファ様の意見にディアも事の顛末は知らずとも同意している。

 だがしかし、そう簡単な話でもない。そのためにはディアが短い期間で何度も屋敷からここまでを行き来しなければならないことになる。そんなことは生憎だが億劫だろう。

 俺とて今から性格が変わったとしても順応できそうにない。その上、俺が変わったところで周りに変化がないのなら先の二の舞だ。無駄なことはしたくない。

 エーファ様にそう説明すると納得してくれたものの、ディアはそれでも大丈夫だというが丁重に断っておいた。

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