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事案と憂え

 落ち着きを取り戻したエーファは、リヒトの保護者として保険医と対話をし始める。


「彼は最近体調が悪そうだったり、様子が普段と違ったりしましたか?」

「体調は2週間前ほどからあまりいいようではなかったようでした。聞いても大丈夫の一点張りで……。私も額面通りに受け取ったわけではなかったのですけれど、そのまま今日に至っています」

「どのような変化があったのですか?」

「周囲の人たちがリヒトにいい印象を持っていなくて、何処にいるにも針の筵だったと思います。初めは本心から気にしていなかったと思うのですが、それが決定的に悪意に変わったときがありまして……。そこからは表情も硬くなり、笑みも見せなくなりました」

「ふむ……そうですか。ご飯はきちんと食べていましたか?」

「ええ。一度朝ご飯を食べていなかった時、注意してそれからは朝食をきちんと食べていました。昼食は一緒に、夕食もメア様に作ったついでに食べているといっていたので三食食べているかと……」


 今まで黙して聞いていたメアだったが、エーファの言葉に気になる点があり口をはさむ。


「僕、リヒトに夕食を作ってもらってはいたけれど一緒に食べてはないよ。味見で少し口にしてるくらいだったから、食堂で先食べているのかと思っていたのだけど……」

「そうなのですか。じゃあ、リヒトは夕食を食べていない……?」


 エーファは後ろで眠るリヒトを見やると信じられないのか大きく目を見開いて驚いている。その隣のメアも憂慮に耐えられない。


「なるほど。彼は夕食を食べていなかった上に睡眠が不足したため、今回は倒れてしまったようですね」


 一人、保険医だけが事態が軽く済んだと思い安心していた。重い病気などではなく、原因が生活習慣によるもので改善も困難なものではなかったから。

 だがエーファはリヒトの容体を甘く見てはいなかった。彼が一人で内に抱え込むことを知っていたから、寝ることも食事をとることも根本的な原因の改善には繋がらないと悟っていた。


「では、私はこれで失礼します。貴方たちもこの後の授業にはきちんと出るようにしてくださいね。彼の件は私から担任に伝えておきます」

「はい。ありがとうございました」


 返事はしたが、二人とも大事なことは何ら解決していない。

 二人にとって今一番論ずるべきことは、リヒトが夕食をとっていなかったかもしれないということだった。

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