周囲の評価
始業の鐘が鳴り、一時間目が始まる。
一時間目は国史。二時間目は魔法史。三時間目は魔法基礎学。どれも座学だ。
魔法基礎学はその名の通り、魔法の基礎となる魔力や属性についての学問だ。これを経てから、魔法陣学や実践に移っていく。結構重要だけど、俺にとっては既知の内容なので復習でしかなかった。
昼休みには一般棟の前にある掲示板に基礎能力試験の結果がはりだされた。基礎知識、属性魔法演習、精霊魔法演習、魔力量、総合。それぞれで上位をとった者の名前が5人ずつ書かれている。
エーファ様につられて俺も見に行った。
「リヒト、凄いじゃない。全部で一位を取っているなんて」
「エーファ様だって載ってるじゃないですか」
「私はぎりぎりだけど、リヒトはトップよ。しかも分野によっては他の追随を見せないのもあるわ。えっと、魔力量なんてそうじゃない」
魔力の項目を見る。一位は俺。相対的な数値は5000越え。二位はメア様で約2500。一般的な魔力量を1000とみるから、俺はその5倍。平民は大体200もないから、そこから考えると25倍以上ってことになる。歴代の魔法使いでトップなのは7000だから、そこには負けるけれど規格外なのに変わりはない。
「俺もそこまでとは思ってなかったです」
「リヒトでこの数値ならディアナはどうかしらね。二年後にしかわからないのがもどかしいわ」
ディアも巫女ということは俺と同レベルはあるのだろう。ゲームでこの魔力量のリヒトを倒したのだから、それくらいあってもおかしくはないし、絶対にあると思う。
魔力測定がこの学校でしかできないので、それを知ることができるのはディアの入学時だ。巫女だから特別に測ってしまえばいいのにと思うが、まだ世間一般には公表していないので特別扱いはできない。エーファ様の言う通りもどかしい。
「すごいね、リヒト」
俺の周りに寄ってきた物好きがいたと思ったら、メア様だった。
俺たちというか俺を避けて周りには人がいなかった。そのおかげで掲示板は見やすかったが、いい気はしない。
「そんなことはない」
「基礎知識なんて満点だし、魔法演習の評価もA+。魔力量なんて僕の二倍もあって、文句なしの一位じゃないか」
表情を見る限り本当に思ってそうだが、嫌味にしか聞こえない。基礎知識は元々勉強していたからだし、魔法演習も魔力量もリヒトだからだろう。俺としては、自分がゲームのリヒトであることを証明するような科目で高順位はとりたくなかった。結果は結果として受け入れるが、他人にとやかく言われたくなかった。エーファ様は別として。
「誉め言葉として受け取っておく。では、エーファ様」
「そうね。メア様、私たちは昼食をとるので失礼いたします」
そそくさと退散した。やっぱりメア様の隣は居心地が悪い。
食堂の端の席で昼食を食べる。エーファ様の配慮だ。それでも視線はなくならないが、気休め程度にはなる。
「大丈夫なの? 本当に」
「大丈夫ですよ。メア様だって普通でしたでしょう」
「そうだけど……。何かあったら言うのよ」
曖昧に頷いておく。心配をかけるのならばと、俺は言わない選択を取るだろうから。
その日からエーファ様は俺に大丈夫か聞くようになった。言わない日はないくらいに。
俺の返事は変わらない。「大丈夫です」と答えるだけ。実際、何か実害を被ったわけでもないから。間違ってはいない。




