入学初日
設定の説明が長いですが、大体で大丈夫です。
今日は二話ほど出します。不定期(一週間に二・三回ほど数話ずつ出す予定です)ですが、読んでくださる皆様には感謝です。今後ともよろしくお願いいたします。
「リヒト、どうかしたの? さっきからボーっとしているみたいだけれど」
エーファ様の言葉で思考が現実に引き戻される。
「ああ、すみません。ちょっと過去を思い出してしまって」
「どんなこと?」
「俺とエーファ様が出会った日のことです」
「懐かしいわね……。あの日、初めてお父様に怒られたの。それは衝撃的だったわ。今となってはいい思い出ね。リヒトとも出会えたし」
エーファ様はそう言うと大人っぽく笑う。
彼女も俺ももう14歳だ。あと一週間もしないうちに学校が始まる。エーファ様の通う学校は国立魔法教育学校。国が運営する唯一の学校である。
国は魔法が強いものは皆一様にこの学校に入るように指示している。なぜなら魔法の暴走を事前に防ぐためだ。コントロールの仕方や身の守り方を知ることで、これから引き起こされる危険を軽減するためである。
中世のヨーロッパと形態が似ているこの国には。庶民の教育機関はほとんどないに等しい。だが、優秀な魔法士になれそうな人材には身分を関係なく特待生として入学することができる。特待生でもなければこの学校に通うことは経済的に無理だろうから、庶民は限りなく少ない。前述の理由のため特待生の枠に基本的に限りはない。経済的な問題を抱えている優秀な生徒であれば誰でもその資格を有するも、その優秀さが大きな壁であるのだ。
この国の人々は皆一様に魔力を有している。しかし基本的に魔力量や適性能力は貴族の方が高い。その両者の間は大きく隔てられており、庶民と貴族の魔力保有量は雲泥の差だ。だからこそ、庶民で魔法に適性が大いにある人物はとても稀有である。国としても優秀な人物を守り育てていきたいし、庶民にとっては大きな出世のチャンスであるから、皆この学園に通うことを夢に見ている。それがどんなに狭き道だとしても。
俺の場合はエーファ様と出会った当初に見よう見まねだが魔法が使えたので、この学校に通うことは確定したも同然であった。加えて俺の使用した魔法に中級以上の魔法も含まれていたようだったのもある。
俺としてはエーファ様に付いて行くつもりだったので、それが使用人枠か同級生枠かの違いでしかないから大差ないのだが。
「そういえばリヒトは学校に通う準備は終わったの?」
「ええ、もう既に」
「リヒトもすごいわね。特待生をちゃんととってくるのだもの」
「有難いです。でも、魔法を使えるところを見せたら一発だったので、なんだかそれでもいいのかなとは思いましたけど」
「そういうものよ。私たちなんて試験もないもの。皆、魔法は少なからず使えるのだからあとは通えるかの問題だもの」
エーファ様のことだから、試験があろうとなかろうと合格するに違いない。それに俺も落ちるなんて微塵も思っていない。絶対にお嬢様に付いて行くために合格しただろうな。
「そうですね。俺は運がよかったんです。エーファ様には感謝してもしきれないです」
「私も常々リヒトには感謝しているのよ。学校でもよろしくね」
「ええ、任されました」