1 天に上げられる
「俺は天と地の一切の権限を授かった……。そう、天にいる主からな」
ガラリヤのとある山の頂、男は十一人の弟子達に囲まれながら語り出した。言葉を紡ぐ中、男の体は水晶の様におぼろげに輝く。弟子達はその姿に無制限の崇敬を覚えていた。真の奇跡、神の使いであると。
しかし、だというのに場は悲しげな静寂に満ちていた。
「オメェら、行きな。そして、すべての民に俺の話を聞かせてやってくれ。世界中の困ってる奴らに洗礼をくれてやるんだ。……分かったな」
「そんなっ、先生! 行かないでください!」
話を遮るように、弟子のうちの一人がとっさに立ち上がった。弟子は男の目前へと迫り、震えながら泣き崩れる。
「ペトロ……」
「どうか、私たちにまた教えを授けてください! また私たちと旅を続けてください!」
「……泣くなよ。いい年した男がかっこわりぃ」
「せっかく……、せっかく、こうしてまた会えたというのに……。これでお別れだなんて……!」
ふと、その男はペトロと呼んだ弟子の涙を自らの指で拭い、そして彼の胸を小突いた。
ペトロは小突かれたところに手を当てる。暖かい、優しい暖かさだ。不思議と、惜別の念から解放されるような心地よさを覚える。
「お別れ、じゃねぇ」
「え?」
「俺ァ見守ってるぜ。いつかこの世界が終わるまで、オメェらとずっと一緒にいてやる。だからさ、まぁ安心しろよ」
「……分かりました。貴方の魂が私たちと共にあることを信じます」
ペトロのその言葉を聞き、男は破顔する。
「じゃあな。また会おうぜ」
男は天に昇り、光の粒になって消える。十一人の弟子達はその様を見つめ、一身に光の粒を浴びた。
男が完全にそこから消えた後、弟子のひとりがポツリと呟いた。
「……天から見守っていてください、我らの師、神の子のキリストよ……」
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「……ここはどこだ?」
男が目を覚ますと、見覚えのない原っぱが目の前に広がっていた。
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