11・手紙とお金
「ごめんね。連れ出しちゃって」
「いえ、すこし驚きましたけど、大丈夫です」
私は殿下に連れられて、廊下を歩いていた。
やばい、知らない展開だ。何言ったらいいのかわからない。
「あ、えーっと」
「ん?」
「王子は確か氷魔法がお得意なんですよね」
でも、どうにか会話をつなげようと話題をひっぱりだした。
「うん、というより温度を下げる魔法かな。皆は氷のイメージが分かりやすいからそう思われているみたいだけど」
「そうなんですね!」
……やばい会話が続かない。マルコス様は会話がなくても楽しそうにしているけど、ちょっと会話がないと私にはきつい。
そのあともあんまり会話は弾まないまま、学園の正門まで来てしまった。
「それじゃあ、またね」
マルコス様がそういった。
「え? あのお食事とかは」
「ああ、あれは君を連れ出すための口実。ごめんね俺意外と忙しくて」
「ああ、いえ。マルコス様の立場を考えれば当たり前だと思います」
「マルコスでいいよ。それとそんなにかしこまらないで。橋の下を覗こうとして落っこちるような子が今更つくろわれてもね」
そういっていじわるそうに笑うマルコス。
ゲームでは私に夢中だったくせに。
「あれは忘れてください。いろいろあって疲れていたんです」
「そっか。それじゃ。僕はこの辺で」
マルコスは私の寮とは反対方向に歩いていった。
★
さて、マルコスとご飯を食べに行かなくてすんだのは、ラッキーだった。
今日は郵便局に向かう必要があったからだ。
この一週間で翔と手紙のやり取りを秘密裏に行うためのシステムを、公爵家の娘という権力を使い完成させた。今日は翔からの初めての手紙が届く日なのだ。それを受け取りに行く必要があった。
・・・・
香織へ、なんて小さい頃から一緒にいたから、今更こんな改まっていうのもなんか気恥ずかしいんだけど、近況報告です。
と言ってもあの夜話したゲームのストーリーを今は殆どなぞっています。今は、妹と一緒に魔法の習得のためのイベントをこなしています。
今からクズなことをいうのですが聞いてください。
装備を整えたらかなり攻略が楽になるのですが、お金がありません。なのでお金をください。終盤の町に行って最強装備を最強鍛冶師に作らせます。
一億くらいで多分大丈夫です。
リディス家ならそのくらいのお金を持っていると思います。
それでは。
・・・・・
寮の一室で一人で手紙を開けて読んだ。
いやはや、最初に送る手紙がお金の打診とは。それでも、なんのためらいもなく金策を考えている私は、沼にはまる気質がある気がする。
それに、お金のために取り入ろうとして、丁寧になっている文章もちょっとかわいく思えてきた。
さあ、どうやって金策をしようか。いくらリディス家の娘と言えど、私が理由もなく、一億なんて大金を使えるわけではない。
こんこん。と部屋のドアをノックする音。
「カオリ様。パール・ナロバーム様がお見えになっています」
キャシーの声でそういわれた。ん? パールの部屋訪問イベントはまだまだ先だったし、キャシーにばれないように侵入してくるはずじゃ。
「えーと、なんのよう?」
「決闘の申し込みだそうです。学院の職員や生徒会の承認は降りているので、後はカオリ様の承諾が必要とのことで、お受けなさいますか?」
本人の承諾なしで決闘を承認する学院ってどうなのよ。
「痛いのは嫌。別にパールに恨みがあるわけでもないし」
「それは決闘の条件次第ですし、怪我が残るような攻撃は禁止されています。それに、勝った方に生徒会の副会長になっていもらうそうですよ」
生徒会の副会長? ゲームの選択肢を思い出す。確か、入学式の直前にそう誘われるイベントがあったはず。それで入るとCクラスに行って隣国の王子様ルートというのがあった。
そのさきの展開を私はまだ見ていないから、生徒会がどんなものかは分からない。でも、かなり自由な行動がさ許されるというイメージはあった。金策もやりやすくなるかもしれない。
というより、勝手お金を巻き上げるとかでもいいのではないだろうか。
「それって勝てばお金を巻き上げたりできるの?」
「うわあ。あ、いや、そんな規定はないですが、受ける条件として、金銭をかけてもらう交渉ぐらいはできますよ。何なら私が行ってまいりますが」
「いくらぐらい巻き上げられそう?」
「いくらナロバーム公爵の長男と言いましても、学生の身分ですから。まあ、パール様の大事になさっている剣を売れば五千ぐらいにはなると思います」
翔のいていた金額の半分。私は決闘を受ける決意をした。
ども、水雪です。
二桁話数に来ました。
なのでこれまでの話の改稿をしようと思っています。
明日かな。
一日、投稿できなかったらすみません
ではでは。