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97.喧嘩(けんか)

 オルレアンの浜辺で『上位昇進(レベルブースト)』のスキル実験を行ったのち、『風のクリスタル』の加護内まで戻り一安心する。このオーロラのような光のカーテンが僕たちを、ゴブリンたちのような悪いモンスターから守ってくれる。この安心感、プライスレス。セバスさんから声がかかる。


「え~スズキ君、我々はここで」

「はい、『円卓騎士』会談、みなさん頑張って下さい」

「かっかっか、小僧。新しいカードのスキルチェック、しっかり確認するんじゃぞ」

「はい、ガイア師匠!」


「スズキ君、スキルカードも毎日チェックしてる?あなた弱すぎていまだにレベル1のままなんだから、せめてスキルだけでも上げておく事!ポイント余らせてても意味無いんだから、2日後の決戦までにちゃんとスキルアップしときなさいよ!墓場までスキルポイント持って行かないように

「ラジャー・・」

「意味分かんない!はっきり、はいと言いなさい」

「はい・・」


(ゴロ ゴロ ゴロ)2エルフ、1ドワーフを乗せた馬車が目の前を王宮方面へ消えていく。

 どうもこのオルレアンに来てから通じる英語と通じない英語の違いが段々分かって来た。日本で言う『造語』や『ジョーク』のたぐいだけ、どうやら通じないらしい。

 この前エリスは『オッケー』とか言ってたな、普通のネイティブアメリカンの会話は通じるのかも知れない・・今度エリスで試してみるか。


 『円卓騎士』でも無いただの借金の塊の漁民、とりあえず借金返済をすべくギルド会館を目指す。海岸線の店が点在する石畳を歩き、一路ギルド会館へ。

 オルレアンでは少量だろうが、危険な海で釣ったと思われる魚も焼いて売っていた、今度ジョン君と一緒にお店を回ってみたいものだ。


 ギルド会館前まで到着すると、ここから見えるギルド会館前の宿屋の方を確認する。

 来る途中に王宮兵士団一個師団のゆうに2・300人はいるであろう無駄警備の隊列は解散している、どうやら嵐は去ったようだ。今のうちに定宿(じょうやど)でチェックインでもしておこう。行先変更、宿屋にチェックイン。


「お帰りなさいませ、旦那様」

「はいただいま・・いないよね、野獣とか、聖女とか」

「はい、聖女様たちとギルド長様はすでにお帰りになられました」

「そう、それは良かった。部屋空いてます?」

「はい、いつもの2階のお部屋でよろしいですね?201号室、空いております」

「良かった。今日は鍵かかってませんよね?」

「はい、もちろんです」


 どうやらギルド長の信用は絶大らしい。自分がアイリスと食事に来ただけで全室鍵を閉められたのとは雲泥の差(うんでいのさ)だ。


「お願いします、とりあえず1泊」

「はい、お食事付一泊銀貨1枚です。少し休まれて行かれますか?」

「ええ、そうします。もう入って良いんですか?」

「はい、こちらが鍵になります」

「どうも」

「ごゆっくりお過ごしください」


 営業スマイルが心地よい、受付のお姉さんが笑顔で見送ってくれる、手荷物は無いのでそのまま2階の部屋に上がる。

 部屋に入り、まず鍵を閉める、聖女やアカレンジャーは『円卓騎士』会談で来ないはず、他の青い・・アオレンジャーの侵入にもそろそろ警戒をしておかないと。

 一瞬の気のゆるみが大事故に繋がる、注意一秒、ケガ一生。

 ベッドの近くに置かれている机とイス、イスに腰掛けて笑いの神となったガイア師匠が作ってくれた黒い怪しいカードをタッチする。


「(ぴこ・・ぽぽぽぽ~ん)ん!?」


 怪しい起動音が流れる・・怪し過ぎる・・爆発する?そのまま中央の「ここ押せよ」と主張している丸いアイコンをタッチする・・。


「『アリゾナプライム』・・『アリゾナ』は・・師匠の生まれ故郷だけど・・何がプライム?」


 プライム・・プリキュア?・・ああ、『変な仮面』、確かに『ベネチア』の『仮面舞踏会(カーニバル)』のだからプレミアは付くかもって思ったけど、もうほとんど言葉遊びの世界だし。

 一体なんだろうこれ?しばらくすると、タブレット中央で円がグルグルまわっているのを待っていると、グルグルが終わるや画面が突然起動する。


「(ぱっぱぱぱぱ~)うおっ!?・・こ、これって!?」


 やりやがった、このトップページ・・日本で毎日使ってた『アリゾナプライム』まんまだよ。

 なになに、説明書きが下に・・<1日1回利用可能・重量制限20キロまで・配達時間帯指定可能・当日配達『プライム会員様限定』使用可能・・>・・全然意味が分からない、とりあえずアイコンをスライドして進めてみる・・。


「すごい!お米にカップラーメン・・コーラにポテチ、レモン牛乳まで!?・・利用履歴になんでいつもうちで発注してたやつが・・」


 驚いた・・死ぬ前・・転生前?に利用していた利用履歴までそっくりそのまま・・って、使えるわけが・・とりあえず試してみるか。


「(しゅっしゅ)マミがよく頼んでたやつだな、とりあえずラノベかな・・ふんふ~ん・・おお!?『悪徳令嬢フラグ立ちまくり・ヒロイン全員デレちゃいましたけどなにか?』・・あいつの好きそうなやつ、さっそく・・」


(そっちじゃないよ・・)


「えっ?・・それじゃあこの『転生したら私、能力は最強にしてって言ったよね』に・・」


(そっちじゃないよ)


「ええ!?じゃあ妥協(だきょう)するから、『転生したら聖女になったのでやりたい放題やっちゃいました』に」


(そっちじゃない)


「うるさい啓示だな!じゃあ・・」


・・(201号室前 廊下掃除中の宿の職員)


「ちょっとここの客1人でしょ?誰としゃべってるの?」

「この人、ちょっとあれなんじゃない?」


(201号室内 啓示と戦う漁民)


「じゃあこれ、『タモクテキトイレ・ワタベの挑戦』」


(そっちじゃない)


「じゃあ『オオシマさん?コジマダヨ!』」


(そっちじゃない)


「これ!『バーウーイーツ、自転車で高速道路逆走』!」


(それもちがう)


・・(201号室前 廊下掃除中の宿の職員)


「今日は歴史に残る『円卓騎士』会談の日でしょ?みんなこの噂でもちきりなのに何してんのこの人?」

「怖いからもう行こうよ」

「何言ってるか意味分かんないでしょ?逆に気にならない?」

「それはそうだけど~」


(201号室内)


「はぁはぁ・・ちょっと別のジャンルに・・嗜好品(しこうひん)でも頼んでみるか。ランキングベスト3・・1位が秋田県産『卵かけご飯専用醤油』、良いね~最高」


(それもちがう)


「えっ?良いじゃんこれで・・2位熊本県産『カラシ蓮根・2位じゃ駄目なんですか?』、旨そう・・へ~ふるさと納税の返礼品なのか、熊本県民じゃないから逆にここで頼むのも手だな」


(それもちがう)


「うるさいな~・・じゃあ産まれ故郷の新潟県産『コシヒカリ』」

 

(・・・)


「・・からの『プリティーキュア トゥインクルスタータクト』」


(ちがう!)


「じゃあ米で」


(・・・)


「(すっ)」


(ちがう!)


ダメか。


「じゃあお米で(ポチっとな)」


・・啓示がようやく落ち着いた、もう疲れたので新潟県産『コシヒカリ』で妥協(だきょう)する。とりあえず重量上限の20キロ頼んでみたけど、一体どこに届くんだろう?



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