85.母の威厳(いげん)
オルレアンへの『転移結晶』ゲートを、アイリスと2人でくぐる。ゲートの出口では・・オルレアン王宮の兵士団が集結しており、こちらの2人を確認するや声をかけてくる。
「アイリス様!お戻りになられ・・その囚人からお離れ下さいアイリス様、危険です!」
「お黙りなさい!」
「はは!(ざっ!)し、しかしながら・・」
「お母様!どうしてそいつを・・」
「ようやくお戻りになられたのですねお母様・・」
オルレアンの『転移結晶』があるほこら周辺を埋め尽くすほどの兵士団が、一斉にアイリスにひれ伏すと同時に、ルナとジャンヌだけが立ったままアイリスに話しかけている。
「ルナ、ジャンヌ。わたくしの可愛い娘たちよ」
「はい・・」
「お母様・・」
「このお方は、わたくしの大事なお方。これ以上の侮辱は、たとえあなたたちと言えど、容赦は致しません」
「そっ・・」
「そんな、お母様・・」
「変わらぬな、聖女アイリスよ」
「シャルル=ドゴール女王陛下!」
聖女アイリスが2人の娘に話をしているところを、兵士団が2つに割れ、人の道が出来たところを女王陛下が近づいてアイリスに声をかける。
自分もアイリスも周りに合わせて、女王陛下にひざまずく。
「女王陛下・・(ざっ)」
「苦しゅうない、アイリス。そなたとわらわの仲では無いか」
「そうは参りませぬ女王陛下。幼少の頃より親しくしていただいた恩義、15年の時が流れましたが、今でもわたくしにとってあなた様は・・」
「本当に変わらぬな聖女アイリス・・そなたの幸せが、今でもわらわの願いじゃ」
「ありがたきお言葉・・」
「して聖女アイリス、なにゆえその者の肩を持つ。聖女ルナ、聖女にして『ナイト』のジャンヌより話は聞いておる。即刻その者は処刑相当ではあるまいか?そなたの考えを聞きたい」
「女王陛下・・(ざっ)」
地面に片膝をつけ、女王陛下にひざまずいていた聖女アイリスがおもむろに立ちあがる。
「このお方は15年前、あの『風の神殿』襲撃の際、このわたくしを黒装束から救い、このわたくしの盾となり石となった命の恩人。このオルレアン、そして今のわたくしがあるのは、すべてこのお方のおかげにございます」
「ほお、そうであるか・・そなたの話が真実だとして、石化が解けたそなたは、なぜ泣いておったのじゃ?」
「それは・・」
「ふむ」
「・・イチロウ様が生きていてくれて、もう一度わたくしの前に現れてくれて・・本当に嬉しかったからです」
(ぴかっ!)アイリスの首元で、白い光が発光する。
「女王陛下、おさがり下さい!」
「わらわはよい、何事じゃアイリス!」
「お母様が・・」
「光に包まれて・・そのペンダント!ジャンヌも欲しいペンダント!」
次第に光が収まっていくと・・アイリスの胸元に、白い輝きを放つペンダントが首から下がっていた。
「アイリス・・その輝き、『光のクリスタルのかけら』であるか?」
「・・・はい、女王陛下。『光のクリスタル』がそう申しております・・」
「ふふふ・・そうか、やはりそなたが『光のクリスタル』の使徒。あい分かった、黒き闇が住まいし心に、『光のクリスタル』の輝きは無し。さすが聖女アイリス、やはりそなたは我がオルレアンの宝じゃ」
「お母様が・・」
「『光のクリスタル』の使徒?」
「アイリスよ、そなたの言葉はわらわの言葉じゃ。そなたの好きなようにするが良い」
「女王陛下、もったいなきお言葉」
「そこの者!」
「は、はい!」
「名はなんと申す?」
「スズキイチロウ・・オルレアン連合ギルドの・・銀等級冒険者です!」
「ほほう、オルレアン連合ギルドの・・と申すか・・ふふっ」
「え?何か・・」
「そなたがなぜこのオルレアンにこだわるか、わらわには計りかねておるのじゃよ」
「ああ、それでしたら・・アイリスが頑固で、オルレアンにすぐ帰って来いって、天国の果てまで探しに来るってしつこいんです。凄く迷惑してるんですよ」
「ちょっとあんた!女王陛下に向かってなんて口聞いてるのよ!」
「こら、ジャンヌもお黙りなさい!あなたもお口が乱暴なのです」
「ふ、ふはははは」
「いかがなされましたシャル?」
「はははは、いや聖女アイリスよ。やはりそなたは、あざむけんな、ははははは」
「分かるようにお話下さいシャル、それでは何も分かりません」
「ははは、よいよい。さあ、わらわの用はもう済んだのじゃ。聖女アイリスよ」
「はい。何でございますか?」
「すぐにわらわの部屋に来るように、今日はそなたを帰さん。ゆるせ、聖女ルナ、ジャンヌよ」
「えっ、だめ・・」
「こらジャンヌ、今日は我慢です」
「え~お母様取られた~」
女王陛下と聖女アイリスが仲良さそうに2人並んで消えていく。自然と兵士団も解散する。
聖女ルナとジャンヌとは一瞬目が合ったが、お互い気まずく声はかけなかった。そのまま聖女2人は、王宮の奥へと消えていった。




