82.15年ぶりに会う君へ
『風のクリスタル』と『光のクリスタル』、2つのクリスタルが輝きを放ち、交互に光の波紋が広がる中、アイリスと思われる石像と向かい合ってしゃがみ込む。しばらく無言のまま石像を見つめる、アイリスの顔はルナとジャンヌ、そして・・やっぱりマミにそっくりだ。
「アイリス・・相変わらず、マミにそっくりだよ君は」
石像は動かず、話さない。
「この前会った時は、僕の方が石になってたよね。ははっ・・今度は逆に君が石になっちゃったね、似た者同士なのかな、僕たち・・」
石像は動かない。
「さっきルナとケンカしちゃってさ・・マミが出ていったの思い出して、あわてて追いかけたんだけど・・もう元には戻らないかも知れない」
石像は話さない。
「15年前から、君に聞きたい事があってさ。君も僕に何か聞きたくて、『ベネチア』まで石化を解く方法を探しに来てくれたんだよね?違うのかいアイリス・・」
石像は動かず、話さない。
「やっぱり石・・だよね、話せなくて当然か。何言ってるんだろ・・」
(コツン・・カラン カラン・・)
「ん?」
アイリスそっくりの石像の足元に、かなり痛んでいる黄色いスキルカードが落ちていた。
「誰のスキルカードだろ?さっき『瞬足』使ってたから、あわてて誰か落とした・・にしては、かなりボロボロ・・まるで・・ミューラから石化が解けて、牢屋で僕がもらった時と同じような痛み具合・・」
「(かつ かつ かつ)貴公、聖女様の母上の石像から離れるのだ!」
「貴公って、ライン=ハルト!・・じゃなくて、ジャック=ハートか・・」
振り返ると、お兄ちゃんのジャック=ハートを先頭に、先ほど『瞬足』でいなくなったメンバーが戻ってきた。1人メンバーが足りない事に気づく。
「ミューラ。ライン=ハートはいないの?」
「ええ。ハートはゴブリンチャンピオンの攻撃からみんなをかばって、ケガをして・・。最後はジャック=ハート様がとどめを・・」
「貴公、我が弟の名を軽々しく口にしないでいただきたい」
「悪かったよ・・」
「聖女ジャンヌ様の話では、最後の『風のクリスタル』の使徒のあかしを手に入れるためには、貴公の力が必要だと聞く。そうですなジャンヌ様?」
「そうなの・・」
「別に根拠なんて無いと思いますけど?」
「貴公には聞いておらん」
「こいつに『上位昇進』1回だけかけてもらえば、私もジャックと同じペンダントが手に入るの!」
「・・分かりました、やりますよ」
「スズキ様・・」
「それでいいんでしょルナ様もジャンヌ様も?1回試せば満足するんですよね」
「そうだよ・・」
「はいジャンヌ様、スキルカードお願いします。やれば良いんでしょ、やれば?」
「スズキ君。そんなに投げやりにならなくたって・・」
「良いんですよミューラ、どうせ僕、これ終われば用済みですから」
「貴公、聞き訳が良いな。聖女様のお役に立てるのだ、光栄に思うが良い」
「・・はい、壊さないでよ」
「へいへい」
「やる気が無いよ!」
「ありますって、ボタン押すだけの簡単なお仕事ですよ・・(ぽちっ)」
自分の銀色のギルドカードの星のマークをタッチする、星のマークは2つ表示されている。スキル、スタンバイ・・・『黄金色』のカードが2枚出てくる。
まず一枚をジャンヌの黄色いスキルカードの左から1枚セットする。『黄金色』のカードが1枚余る・・。
「ちょっとあんた、早くしなさいよ」
「ええ・・(ブブー)あっ、『2重上位昇進』なんで、誰かもう1人必要みたいですね・・」
「誰でも良いでしょ!どうせ3分だけなんだから、もうゴブリンチャンピオンもジャック様が倒してくれたんだから、早くしてよ!」
「えっと・・じゃあルナ様で良いです?姉妹揃ってやれば文句ないでしょ?」
「それがいい!ルナお姉様お願い!」
「えっ、ええ・・ではわたくしのカードを・・」
(そっちじゃないよ・・)
「えっ!?」
「なによ今度は?早くしてよ!」
「いや、なんでも・・他の誰かにしろって事?」
「なにブツブツ1人ごと言ってるのよあんたは!」
「貴公、私がやろう。早くそれを渡すのだ」
「えっ、ジャックが?・・じゃあ・・」
(そっちじゃないよ・・)
「えっ!?こっちも違うの?」
「貴公・・さっきから何を言っている?おかしくなったのか?」
「ミューラは聞こえない?啓示」
「ええ!?啓示が聞こえるのスズキ君?まさか・・『風のクリスタル』の・・『ウインダム』様・・ジャンヌ様はどうです?」
「そんなの聞こえないよ!嘘言ってないで早くしてよ!」
「でも・・確かに・・ん?」
ふいに、さきほど床に落ちていた痛んだ黄色いスキルカードを左手に手にする。
「あんた、なによそれ?」
「あの、ここにいる全員、誰がスキルカード落としませんでした?」
「落としてないわよ」
「わしもあるぞ小僧」
「・・啓示が黙りました。これに入れてみます」
「もう好きにしてよ!どうせそんなボロボロのスキルカード、あんたのなんでしょ?」
「僕のは・・もういいですよ、さっさとやれば良いんでしょ、やれば」
「そうだよ!さっきから言ってる!」
左手に持つ痛んだ黄色いスキルカードに最後の1枚の『黄金色』カードを右から入れる・・入った。
「いきますよジャンヌ様」
「やって」
(そっちじゃないよ・・)
「・・また」
左手に持つ、傷んだ黄色いスキルカードを見る。啓示はまただんまり、こっちに『上位昇進』をかけるのが合ってるってでも言いたいのか?
「早く!」
「いきます・・『2重上位昇進』!!」
【『2重上位昇進』 マミフレナ=ジャンヌ=ダルク 属性『光』『風』】
【職業ジョブ】『聖騎士』→『ロードオブパラディン(神)』
【レベル】『レベル15』→『レベル45』
【固有スキル】『2刀流』『光の螺旋』
【固有装備】『エクスカリバー(光)』『ラグナロク(風)』
天使のような光の羽が生える。青い瞳は金色に変わり、ジャンヌの無垢だった顔が大人びた表情に変わる。
「おお、なんと神々しいお姿・・まさに神・・天使様」
「・・同じです、以前わたくしが見たジャンヌと・・」
「ルナ様、このジャンヌ様のお姿こそ天使様、まさに神のお姿ですぞ!」
「しかし・・『風のクリスタル』の使徒では・・ジャ、ジャンヌ!」
突然神となったジャンヌが、地面に片膝をつけ、こちらに向かってひざまずいてくる。
「な、なにやってんのジャンヌ!?」
「我らが主よ・・」
「主?ルナとミューラの時と同じ事をまた・・」
「我らがすべての源・・無能」
「はは・・ジャンヌまで僕の事・・無能なんて・・」
「(しゅぅぅぅ・・・)・・はっ、あ、あんた!?」
3分が経過し、神となったジャンヌが元の制服姿に戻っていく。背中の羽も、光のチリとなって消えていった。
「あれ!?ペンダント無いよ!どうして!?」
「・・どうやら『上位昇進』が『風のクリスタル』の使徒の鍵では無かったようですねジャンヌ」
「おかしいよ!?なんでみんなにはあって、私にだけ無いの!?おかしいよ!?」
「お黙りなさいジャンヌ。あなたも聖女なのですよ?なにか別の方法があるはずです、1つずつ試していけば良いだけの話ではありませんか」
「ううっ・・うん、分かったルナお姉様・・」
「いい子ですねジャンヌ・・さあ、今度はお母様の石像を・・」
(ピキキッ)
「(全員)え?」
(ピキキキッ)
「(全員)ええ!」
(ピキキキキキキ・・・パリーン!)
「(全員)ええええ!!」
「マ、マミ?」
「・・ここは・・わたくしは一体・・ああ・・あなた様はもしや(うるうる)」
「(2人)見るな変態!!」
(バシッ!!)
「痛った!!」
「ご婦人、このジャック=ハートのマントを。ルナ様お早く!」
い、意識が・・遠のいて・・いく・・(バタッ)。




