79.逃走中
2時間目の授業終了が近づく。相変わらずミューラ先生をそっちのけで、イナズマブラザーズが正義の雄たけびを上げている。
「あの後ろで座っている親衛隊もどきに、われら稲妻の騎士2人が、正義の鉄槌を下す!」
「(おおーー)(ぱちぱちぱち)」
2・300人は入っているであろうこの教室内に、先ほどの親衛隊選抜試験の内容が詳細に告知されている・・と思われる。
今回の『マドリード攻防戦』でも、勲章をもらったのはルナとミューラ達に違いない。『ベネチア』での実績も含めて、こちら2人の活躍など誰も知る由もない。完全に言いたい放題言われている
。
「ジョン君、我々の死期はもはや近い。2時間目終了後、拘束されるのは時間の問題だろう」
「銀等級・・」
「ジョン君、私はなおこの貴族社会に逆らって生きていく。君は今からでも遅くない、エリス伯爵に頭を下げるのだ」
「うるさいぞ銀等級。俺は『月の雫』の一番槍、東門も西門も関係あるか、正面突破で突撃するのが俺の心情、ジェフ家の男だぜ!」
「うむ、そうかジョン君・・して、ジェフ家はクラウド家より地位が低いのかね?」
「俺んちは・・男爵だからよ・・」
「男爵イモがどうしたかねジョン君、カレーに最適、私はそんな君が大好きだ。私など爵位もクソも無いただの漁民だぞ?そんな我々がジョン君、ここまであの聖女シスターズと対等にお話出来てきたのはなぜだね?」
「それは・・ちょっとは信用してもらえてるからじゃあ・・」
「馬鹿だなジョン君、ルナ姫は君の事が好きなのだよ」
(好きなのだよ 好きなのだよ 好きなのだよ)
「ば・・ばか・・な・・」
「ただし、そのかすかな希望も、今やあのイナズマブラザーズの仕向けたゴブリンファイヤーボールによって打ち砕かれようとしている。やつらの態度はどんどん大きくなるばかり、これ以上あの兄弟にスーパーキノコを与えてはならんのだよ」
「おれ・・もう死んでもいいかな」
「諦めたらそこで試合終了だぞジョン君」
「でも銀等級・・」
「次の3時間目の間、やつらイナズマブラザーズの魔の手から逃げ切る」
「俺たちが海岸線に連行される前に、今日1日逃げ切るってわけだな」
「そうだぞジョン君。もはやこの会場の学院生全員敵、すべてハンターだと思ってこの後に備える」
「銀等級、作戦は?」
「この大教室は講堂近くの3階に位置する。後ろの出口からすぐの階段と、先日我らが血祭りに上げられた『温水プール』方向へ進んだ奥の階段の2つのルートが存在する」
「2手に分かれるか?」
「もちろんジョン君、頭が良いな。目も良い君がよく眺めている『温水プール』方向はさぞ詳しいだろう、脚力に自信のない私がすぐの階段を下に降りる。君はそのまま『温水プール』を目指し、水の楽園へダイブするんだ」
「良いのか銀等級?近くの階段、よりハンターに捕まる危険が高いぞ?」
「私を誰だと思っているジョン君、怪盗ルパン1世だぞ?お呼びとあれば即死亡、聖女御免の大怪盗」
「・・じゃあ、明日から土日みんな、ゆっくり休んで頂戴」
(「は~い」)
「来るぞジョン君、あのイナズマブラザーズの魔の手から、姫を救えるのは君しかいない」
「だれだよ姫って。ルナ様の事で良いんだよな?」
「そうだぞジョン君。あのイナズマブラザーズの真のねらいは、姫の胸に輝くあの青い結晶に違いない」
「なんであいつらが『水のクリスタルのかけら』なんかを?」
「・・・来週はみんな、テストやるぞ~」
(「ええ~」)
「そろそろ時間だ」
「分かったぜ、ルパン1世」
「・・・それではこれで今日の授業を・・」
「作戦名はプリズンブレイク。バルスと合図したら、後ろの出口まで走るぞジョン君」
「分かった」
「終了しま~す」
「バルス!!(2人)」
「あっ!お姉ちゃん、あの2人逃げてるよ!追ってハート!」
「兄さん!」
「無駄なあがきを!ハンター諸君、先ほど説明したとおりだ、ミッションスタート!」
(ばばっ!!)教室にいたほぼ全学院生が一瞬で黒いスーツに身を包み、黒いサングラスをかける。
「見つかった!」
「走れジョン君、振り向くな!」
「(がばっ!!)ル、ルパ~ン!!」
「ジョン君!すまん!!」
(だだだだだだだだ!!)ジョン確保、教室内の黒いハンターの大群が、一斉に教室の後ろの扉を目指し放出される。




