77.第4章 <復活する光と闇> 稲妻の使者
第4章 <復活する光と影>
「・・様、・・キ様、スズキ様起きて下さい!」
「へ?マ、マミ!?」
「なにがマミですか!いつもいつも勝手にその名前を使わないで下さい!」
「ごめん。あれ、ここ・・どこだっけ?」
「あんた馬鹿でしょ?ギルド会館だよ」
「ジャンヌまで・・ああ、昨日『マドリード』行って・・『ウインダム』に清掃クエスト行って・・」
「またクエスト行ってたの?なんで昨日王宮の祝賀会来なかったのよ!」
「僕は借金の返済で首が回らないんですよ」
「昨日くらいいいじゃないのよ!」
「行こうとは思ってたんです。そうそう・・なんかクエスト終わったら疲れちゃって、仮眠して良いってセバスさんに言われたんで、そのまま朝まで寝ちゃったんですよね」
「・・最低」
「そんなにお疲れになられていたんですね・・」
「ルナお姉様、なんでこいつにだけ、いつもそんなに優しいの?」
「ジャンヌ・・わたくしは何も・・」
「さっきのもおかしい!絶対おかしいよ!」
「なんです、さっきのって」
「スズキ様には関係無いのです!もう学院に行きますよジャンヌ!」
「は~い・・こいつ置いてくの?」
「はっ、そうでした・・スズキ様、宜しければ、ご一緒にエルミタージュへ参りませんか?」
「えっと・・まだ7時過ぎか・・早いですね・・別々に行きましょう」
「そんな・・」
「なんでよ?」
「上の階に見張りがいますし、刺客も見張ってるでしょうから、一緒に馬車に乗ってたら、天から雷が落ちてきて僕の命が危険にさらされますし・・」
「ああ、パパね、それもそうね」
「ちょっとジャンヌ」
「さっきのあれの後だし、こいつが消されないように別々に行った方が良いよお姉ちゃん」
「ジャンヌ」
「ルナ様。お気持ちだけいただきますので、後でエルミタージュで」
「そうですか・・行きますよジャンヌ」
「は~い」
2人がギルド会館1階の治療室から出ていく。ベッドがいくつか用意されているので、昨日クエスト終了して仮眠を取らせてもらっていたが、そのまま朝を迎えてしまったらしい。
ギルド会館を出ると、さわやかな風、朝日がまぶしい。最高の登校日和、そして危険な1日の始まり。出だしさっそく聖女に出くわしたが、王宮からエルミタージュはギルド会館は馬車で逆方向、わざわざ迎えにくるなんて、ルナお姉様には頭があがらない。
『月の雫』のよしみと思って、ありがたくお気持ちだけいただいておこう。
治療室から出て1階ホールの1番窓口へ向かう。まだ時間があるので、サリーさんに挨拶して行こう。
「おはようございますサリーさん」
「おはようスズキ君、最近君、稼ぐようになったね~」
「また僕の個人情報のぞき見してますね?」
「そうよ~毎日チェックするのが私の日課なの」
「借金の残高チェックご苦労様です。今日の僕の借金、いくらになってます?」
「そうそう、この前の『マドリード』の活躍で報奨金が今日支給されてるよ」
「本当ですか!カードです、はい!」
「はいはい~おお~」
「どうです?借金増えてたりしませんよね?」
「なな、なんと、聞いて驚け!今回のクエスト報奨金、なんと金貨185枚!」
「はは・・なんか半端ですね。とりあえず、全額返済にお願いします・・」
「えっとね~、スズキ君の借金、昨日時点で金貨685枚でしょ?今回の返済で、なんと金貨500枚まで減ったよ、やったねスズキ君!」
「ははは・・わ~い・・」
「このペースなら借金完済も夢じゃないかも!」
「勝手に夢にしないで下さいよサリーさん。とりあえず全額返済が現実になるまで、常に命の瀬戸際で頑張ってるんですから」
「はいはい。どうも今回の報奨金、何やら上乗せされてるみたいね~あっ、今の秘密ね」
「なんですその秘密って・・」
「ふふ~聞きたいでしょ~」
「聞いたところで危険は無いんですよね?」
「さあ、どうでしょう。ふふ、ルナ様がギルド長にお願いしたみたいよ、上乗せ支給」
「なんですそれ?・・そういえば、あの2人、こんな朝早くからギルド会館来てましたよね?」
「そうよ~。なんでもルナ様がスズキ君のお給料増やすように言ってくれたみたいよ?」
「ルナ様が・・僕なんかのために・・」
「なんでもお給料増やしてくれたら、今日はジャンヌ様と一緒に「お父様のお背中流しても良いかもです」だって。ギルド長が飛び跳ねて喜ばれたそうよ。その後セバス様が~」
「ああ、もう、いいです。エルミタージュに急ぎますんで、これで」
「え~、ここからが面白いのに~」
「この国はいずれ滅びますから、オルレアン連合ギルドが潰れる前に、エルミタージュをしっかり卒業して借金を完済しておきます」
「はいはい、そしたら私たちもお払い箱ね。『ベネチア』との国交も戻ったみたいだし、こっちが潰れたらあっちのギルドにでも転職しようかしらね」
「その時はアクア王女に署名状を出してもらいますよ。サリーさんたちの再就職あっせんは僕が保証します」
「ええ、本当!さっすが銀等級様、頼りになるわ~」
「僕には何の力もありませんが、僕の人脈だけは甘く見ないで下さい」
「はいはい、王女様によろしくお伝え下さい。じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ギルド会館を後にする。外の風が心地よい、朝日を浴びながらエルミタージュまで大通りを歩いて進む。
どうやら今日入金された報奨金、普段より多く支給された。学院に登校したら、あの2人にはお礼を言っておこう、今日は僕のために一肌脱いでくれるらしい。
エルミタージュの正門まで、歩く事3、40分、やはり徒歩では時間がかかる。エルミタージュの正門まで歩くと、なにやら講堂の方から騒がしい音が聞こえてくる。
正門をくぐり、白い石畳を講堂へ向かってまっすぐ歩いて行くと、黄金に輝く馬車が1台止まっていた。
「銀等級!」
「ジョン、おはよう。何かあった?」
「『雷のクリスタル』がある『トロント』から、伯爵家の兄弟が転校して来たんだよ。この前『ベネチア』の『アカデミア』からサラ先生と王女様が来たばっかってのに、このエルミタージュも騒がしいったらありゃしないぜ」
「また伯爵家・・それって偉いのか?」
「あたり前だろ?エリスのクラウド家と一緒だぜ?」
「悪い、全然分かんない。エリスって、そんな偉いの?」
「あたり前だろ?今までなんだと思ってたんだよ?」
「ただのうるさい女だとばかり・・」
「誰がうるさい女です?」
「げっ、なんでいるんだよエリス・・」
「イチロウ君、ちゃんと周りよく見てないでしょ?女の子の目の前で悪口言わないでもらえる?」
「悪かったよ、謝るから、ごめん」
「はいはい、今のでマイナス10点です」
「ただでさえテストの点悪いんですから、これ以上悪くしないでもらえません?」
「だったらちゃんとメモを取る!昨日のミューラ先生の授業、ちゃんとメモ取ってるんでしょうね?」
「えっ、何それ?・・立たされてて全然メモ取ってないよ!」
「ほらやっぱり!ジョンがいなかったからぼ~っとしてたし、怪しいと思ったのよね~」
「なんで1列目に座ってて、エリスも聖女も後ろにいるこっちを監視できるんですか!」
「あっ、なんでそれ知ってるの?」
「ジャンヌがそれらしい口ぶりだったから・・」
「あちゃ~そこから漏れちゃうか~ちゃんと止めとか無いと」
「漏水ならちゃんと蛇口閉めといて下さいよ。今朝から、起きたら目の前にあの2人がいて、毎日事件の連続ですよ、小学生の名探偵じゃないんですよ僕?」
「なによそれ?」
『月の雫』の3人と講堂を通り、1時間目のサラ先生の授業へ向かう。今日は昨日の夕方からしっかり寝たので目もぱっちり、夜更かしは子供の大敵だ。
教室に入ろうとすると、何やら教室内が騒がしい。3人で同時に教室に入ると・・制服を着た聖女姉妹2人にひざまづく、2人の男の姿が目に入ってきた。教室内の学院生が、羨望のまなざしでその光景を眺めている。
「ルナ様。我は、雷の国『トロント』より参りました、ハート家嫡男にして長男の、ジャック=ハートにございます」
「はあ・・」
「ジャンヌ様。同じく雷の国『トロント』より参りました、ハート家次男、ライン=ハートにございます」
「かっこいい・・(びびっ)」
制服姿のジャック=ハート、ライン=ハートと名乗る兄弟が、聖女姉妹2人を先導して教室の1列目席へご案内中。
「エリス、あいつら2人、気を付けろ。ルナ様をお守りしろよ」
「もう陥落したんじゃないの?」
「なに~」
「・・行こうかジョン君」
「ちょっと待てって銀等級」
(き~んこ~んか~んこ~ん)
サラ先生の授業が始まる。サラ先生・・左手に包帯巻いてる・・昨日あんなに無理してたのに、どうして傷ついているのか知っているものは少ないだろう。
気丈に授業を進める、雷の国『トロント』についてが今日の講義、もちろん聞くだけで単位が貰える人気の授業だ。
「・・雷の国『トロント』。『雷のクリスタル』を保持し、『3国同盟』が締結されていた250年前を最後に、現在はこのオルレアンとの国交はありません。昨日、オルレアンのシャルル=ドゴール女王陛下、ベネチアのアクア第一王女、マドリードのサム国王の3者会談による『3国同盟』締結により、『トロント』側から民間サイドでの人事交流再開が打診されました・・よろしい?」
「はは!サラ様、ご指名いただきありがとうございます。ハート!(だっ!)」
「はい、兄さん!(だっ!)ここにお集まりの皆様、お騒がせする事をお許し願いたい。我ら雷の国より参った、ハート家兄弟!」
聖女ルナとエリスが2人並んで座り、その隣でジャンヌを挟んで座っていたハート兄弟。1列目の席から前に机を軽々飛び越え、サラ先生のところまで飛び出すと、教室の前で名乗りを上げる。
「我がハート家嫡男にして長男、ジャック=ハート!」
「ハート家次男、ライン=ハート!」
「我ら、ハート兄弟、このオルレアンの皆との絆を深めるため、『トロント』より参った使者!(2人)」
(キャーー!)
(かっこいい!!)
2人とも金髪の超イケメン男子、学院生の女性陣から悲鳴にも似た歓声が沸き起こる。
「銀等級・・」
「ジョン君、城は陥落した、聖女2人はもうあきらめるんだ」
「なんでだよ銀等級」
「2人はもはやライオンハートにメロメロ、ブロンズ冒険者の君に勝ち目は無い」
「本当か・・って、なんだよそのライオンなんとかって?」
オルレアンのすべての女子と絆を深めるために、わざわざこのオルレアンに来たらしい。他にも『雷属性』だの『強い』など散々武勇伝を振りまいている、これでサラ先生の授業が成立するのだから、やはりこの授業は卒業のためには外せない。あっという間に1時間目の授業が終了する。




