71.薬草
オルレアン王宮にある『転移結晶』のゲートをくぐり、まず『ベネチア』に入国。最後にゲートをくぐり、『炎の鎧』を身にまとうクラウドに担がれる漁民。『ベネチア』入国の際、胸を強打し、体力1が消えかかる。ルナと先行してゲートをくぐっていたエリスが話しかける。
「パパ!イチロウ君、大丈夫なの?」
「足の次に胸を強打した」
「スズキ様が死んでしまいます!」
「ううっ・・」
味方陣地ですでに重症、キグナス将軍がこちらを見るや、『ベネチア』の兵に指示して何やら葉っぱを持ってくる。
「漁民よ、薬草を食べろ、ほれ!(ぐいぐい)」
「むぐぐ(むしゃ)げ!まず!」
「スズキ様!良薬口に苦しです、全部お食べなさい!」
「ルナ様。この葉っぱすごく苦いですよ、僕、馬じゃないんですから(むしゃ)」
「いいから飲み込むのです!」
「はい(ごくり)に、苦い・・」
「薬草なのです、当たり前です。もっとお食べなさい」
「このまま死ぬことは許さんぞ漁民!アクア様をお助けした後に逝き絶えるのだ」
「(むしゃむしゃ)かしこまりました」
「勝手に死なないで下さい!」
「イチロウ、そなたはうまになったか?」
「そうですアクア様、イチロウは今日から馬として生きていきます(むしゃむしゃ)」
「勝手にヒューマンである事を捨てないで下さい!」
薬草の効果は絶大、さすが竜王を倒した勇者が愛用していただけの事はある、想像を絶する不味さ。これならいくら効果があっても、必要に迫られないと広く一般に流通する事は無いだろう、どおりで安く売られているわけだ。
薬草をむしゃむしゃ食べる馬と化した漁民。その様子を見ていたキグナス将軍がさらに兵士に指示する。
「『水の鎧』と『水の盾』をここに!」
「はは!」
指示された兵士が青い鎧と青い盾を持ってきた。エリスが叫ぶ。
「『水の盾』も!これがどうして・・」
「先日お前たちが『ベネチア』に入国した際、接収したものと聞いておる」
「そうです、僕が身ぐるみはがされた『水の鎧』のセットですね(むしゃむしゃ)」
「漁民よ!貴様は体力1しかあるまい、『水の鎧』をすぐに装備するのだ!」
「体力1の僕がいくら防御力上げたところで・・しかも僕、今歩けませんよ(むしゃむしゃ)」
「それくらいなら俺が運ぶぜ」
「クラウド・・重いよ・・」
「じゃあ装備ね、お姉さんがつけて差し上げましょう」
「悪い、エリス・・」
「お前らやっぱり・・」
「違うって言ってる!(2人)」
『水の鎧』をすでに装備しているエリスが、手際良く『水の鎧』を装備させてくれる。
「はい、オッケー(がちゃ)。パパ」
「おう、さあスズキ・・よっこらしょっと!(がちゃ)まあまあ重いが、このくらいなら余裕だな」
「すまんクラウド・・(がちゃ)」
「どうせ15年前、森でミューラに使ったあれをやるつもりなんだろ?」
「ああ、よく覚えてたね」
「あの時のミューラは凄かったからな。あれを使うまで俺がお前を守ってやる、期待してるぜ相棒」
「ああ、頼むよクラウド」
「ねえイチロウ君、『水の盾』・・使わないよね?この前の盾、イチロウ君がたい焼き作るのに使っちゃったから」
「もちろん、エリスが持っててよ。どうせ僕、両腕使えないし(がちゃ)」
「オッケー。これで私もあなたをしっかり守れるわ、炎の攻撃なら全部この『水の盾』で防げちゃうし」
「頼むよエリス」
「守ってあげるんだから、ルナ様がピンチの時はお願いねイチロウ君」
「ラジャー・・・」
「大変です!!」
「何事じゃ!?」
『ベネチア』の兵士が突然叫ぶと、オルレアンからくぐってきた『転移結晶』のゲートとは違うもう一つの赤い光を発するゲートを指差す。そちらを見ると、人1人分以上の大きさがあるゲートの光が、両脇から扉でも閉ざすかのごとく黒く光を徐々に失っていく。
「まずい。『マドリード』側からゲートが閉ざされようとしておる!」
「なんですって!」
「わらわはゆくぞ」
「アクア様!」
「じいや・・」
「やむをえん、サラ!!」
「はい」
「アクア様をお守りするのだ!わしは別の『転移結晶』を起動させ、『マドリード』からの退路を確保しよう。『ベネチア』とオルレアンの防衛は我らに任せ、ゲートが閉じる前にゆくのだ!帰りは迎えをよこす!」
「かしこまりました・・アクア様」
「さら、たのむぞ」
「御意」
「私たちも行きましょう!ルナ様」
「ミューラ様、それに・・」
「このエリスがルナ様をお守りします。パパ!」
「スズキは俺が連れて行くぜ。エリス!俺の盾、ちゃんと持って来いよ」
「分かってるわよ、さあ!」
「行きましょう!!(全員)」




