53.第3章 <3国同盟> 秘密の花園(はなぞの)
第3章 <3国同盟>
「・・君、・・キ君、スズキ君、起きなさい!」
「へ?」
(あはははは)教室内でエルミタージュの生徒たちに笑われる漁民。
『水の神殿』での激闘を制したものの、『水のクリスタル』は徐々に闇にむしばまれ、双方の痛み分けとなったのが今朝の話。
オルレアンへの帰還を果たし、戦士の休息という名の居眠りをしていたところを、先生からの非情の指摘を受ける。
まさかの帰還初日の登校、毎日毎日、一体なんの拷問なんだろう、この眠らせない縛りプレイは一体・・。
「はい、そこのウトウトしていたスズキ君!(びしっ!)」
ミューラ先生が、教室の一番後ろの一番端でバレないように寝ていた漁民を、右手の人差し指を突き立てて、名指しで自分を指名する。
「さっきの話聞いてたの?テストに出るから答えて頂戴」
「え?は、はい」
「しゃんとして、しゃんと。はい、『火のクリスタル』がある国の名前は?簡単でしょ?」
「・・・熱海です」
(あはははは)教室内が爆笑に包まれる。
「ぶぶー!全然違う!も~だから何なのよその熱海って?スズキ君、いつも忘れちゃったらそれ言えば誤魔化せるとか思ってるんでしょ!そこに立ってなさい!(びしっ!)」
(わはははは)教室は大爆笑。ミューラ先生から、右手の人差し指を突き付けられ、拷問タイムが宣告される。
「では~ジャンヌ様、お願いします」
「馬鹿でしょあいつ・・『マドリード』です」
「はい正解、さすがジャンヌ様。ここテストに出ます!」
全員が一斉にメモを取る、いつもいつもバラして良いのか試験問題?
そもそも『火のクリスタル』があるのが火の国『マドリード』なんてオルレアンに来て1週間の自分は知らないし・・文句を言いつつ、自分もすぐに忘れるのでスキルカードを起動して、立ったままノートにメモを取る、『マドリード』が何だって?
「火の国『マドリード』は、このオルレアンとは国交は無く、水の国『ベネチア』とは歴史上、戦略的同盟関係にあります。15年前のかつては、同盟国『ベネチア』を介して様々な物資の交易や人の往来が盛んに行われていました。『水のクリスタル』を有する『ベネチア』は、『火のクリスタル』を有する『マドリード』に対して属性有利の関係にあり、火の国『マドリード』は『ベネチア』から歴史上常に戦争の危険にさらされてきました。同盟関係を維持するため、様々な物や・・・時にはヒューマン・ドワーフ・エルフを贈り物として献上してきた過去があります。なおこれは100年以上前の話であり、現在はこの風習は無くなっていると伝わっており~」
テストの問題は冒頭言ったので、いつも通りミューラの講義のメモを取る学院生はいなくなり、先生のマシンガントークだけが進行していく。
それにしても100年も前の話とはいえ、ヒューマンやエルフも贈り物にしなければいけないなんて・・国が滅ぶよりはましなのか・・。
まあ、歴史をずっとさかのぼれば、農民だって、今みたいに自分の田んぼや畑は持てず、百姓として小作農をしてるもんな。奴隷制度とかあっても、不思議では無いだろう・・。
『ベネチア』から帰還したその日の朝の1時間目の授業でミューラ先生から愛の拷問を受けた漁民。
2時間目は、エルミタージュの生徒であると知り昨日驚いたジョンに1時間目の授業終わりに誘われて、『槍術』の授業へ一緒に行く事になった。
「銀等級、漁民だから脚力より腕力あるだろ?下半身は捨てて、上半身で勝負しようぜ」との事、なるほど、一理ある。
昨日豪快に女王陛下の前でこけてしまった脚力が脆弱な漁民、上半身だけでも鍛えておけば、自分も必殺技の1つでも撃てるようになるかも知れない。
授業に行くとほとんど男子の貴族ばかり。全員鎧を装備したガチ勢の筋肉ムキムキの男たちは、こちらもガチの戦士ですよねって先生とガチバトルの戦闘訓練を実施している。
ジョンが「銀等級、お前死ぬからあっちで木の槍で練習しようぜ」と優しく声をかけてくれる。
さすがジョン君、分かってる。激戦をくぐり抜けてきたにも関わらず、相変わらずレベル1の体力1、石ころ1つ当たっただけで、私の体力1はすぐに吹き飛んでしまうのだよ。
エルミタージュ敷地内の、近くにお花畑のある平原で、近くに石が落ちていないか確認完了、こける心配も無さそうだ。
盾をお互い片手に装備、ジョンと槍の戦闘訓練を開始する。
「(カチン!カチン!ビュ!ビュ!)な、なあ、銀等級」
「(ビュ!ビュ!カチン!カチン!)ん?どうしたジョン」
「(カチン!カチン!ビュ!ビュ!)お前さ。ルナ様・・どう思う?」
「(ビュ!・・)どうって?」
「(カチン!)そりゃあ、可愛いとか・・だよ」
「はは~ん、ジョン君、ルナ様に惚れてるな。さすがルナ様親衛隊『月の雫』の一番槍」
「うるせえイチロウ!一番槍はお前だろ!(ビュ!)」
「(カチン!)おおっと、上手いな・・。まあ確かに可愛いよなルナ様は。だがなジョン君、私の経験では、あのタイプは歳とったら将来豹変するから、十分考慮して考えた方がいいぞ(ビュ!)」
「(カチン!)豹変?ルナ様に限って、大きくなったら野獣にでもなるって言うのかよ(ビュ!)」
(お花畑に隠れて2本の槍を見つめる6つの眼)
「ルナ様ルナ様、言いたい放題言われてますよ」
「エリスさんの言うとおり、ルナお姉さまモテモテだったんだね~凄いね~」
「なんという事を・・(青ざめるルナ)」
「良いんですかルナ様?2時間目のお花の授業、早くお花取って戻らないと先生に怒られちゃいますよ?」
「・・もう少し様子を見ます・・」
「ルナお姉ちゃん、結局気になるんでしょ~」
「ジャンヌはお黙りなさい!見つかるでしょ!!」
「お姉ちゃんこわいよ~」
(戦闘訓練中・・と思われる漁民とジョン)
「(カチン!カチン!ビュ!ビュ!)な、なあ、今日クリスマスだろ?」
「(カチン!カチン!ビュ!ビュ!)そうなのか?だから愛の天使が欲しいってわけか。そりゃルナ様必要だなジョン君」
「なあイチロウ。どうやったらルナ様と仲良くなれる?(カチン)」
「守ってどうする、ジョン君!ここは攻めの一手だろ!(ビュ!)」
「だって俺だぜ?ルナ様が俺なんかに・・(カチン!)」
「あの手のタイプは押しに弱い。城壁こそ強固だが、正門さえ突破すれば、後はあそこにあるお花畑も同然(ビュ!)」
「それって・・(カチン!)」
「正門を突破し、中庭にあるお花畑で、ジョン君!君はルナ様の膝枕で毎日クリスマスパーティーだ!(ビュ!)」
「おお!!本当かイチロウ!(カチン)」
(ふたたびお花畑)
「ちょっとお姉ちゃん!あの2人の中でお姉ちゃん凄い事になってるよ!!」
「ああ・・わたくしのお花畑で・・なんという事を・・(青ざめるルナ)」
「ルナ様・・お花畑は・・あるんですね・・」
「なぜ・・名前も・・あれも・・なんで知ってるの・・(青ざめる)」
「ああ、お姉ちゃんの秘密のあれね」
「ジャンヌはお黙りなさい!」
「こわいよ~」
(ふたたび戦闘訓練?)
「でもよイチロウ。俺、こわいんだよ、正面から行って、嫌われるのが、怖くて怖くて(カチン!)」
「ジョン君、頭を使うんだ!右利きのルナ姫、東門が駄目なら、次は左側の西門から攻めるぞ!(ビュ!)」
「西門?ジャンヌ様か?(カチン)」
「そうだぞジョン君、西門はお子様、守りも薄いただの小娘。クリスマスプレゼントを連発すれば、あっという間に城門は聖なるパワーで大解放!正面突破だけが脳では無い、頭を使うんだよ頭を!(ビュ!)」
(ふたたびお花畑)
「あいつら、言わせておけば!!」
「(がしっ!)やめて下さいジャンヌ様!今ここで飛び出しては、こらえて下さい!」
「(がしっ!)おやめなさいジャンヌ、我慢です。この前スズキ様をひっぱたいて、天国に行きかけたのをお忘れですか?スズキ様は弱いんです、体力1しかないんです」
「ううーー!!」
(ふたたび戦闘訓練?)
「西門を突破すれば、城内はもはや制したも同然。妹を攻略したのち、お姉ちゃんもダブルでいただく。両手に花、土曜日エルミタージュ、1年経ったらハネムーン、ジェフ=ジョン=ダルクの誕生だ!!(シュシュ!)」
(お花畑)
「あいつら、消す!!」
「(がしっ!!)我慢よ、ジャンヌ!」
「(がしっ!!)ジャンヌ様!あの歳の男の子はみんなあんなもんなんです、我慢して下さい」
「ううーー!!」
(戦闘訓練)
「よしジョン君、今日の特訓の総仕上げだ!」
「先生!!」
「あのお花畑に向かって青春爆発!正義のパワー、全開だ!!」
「はい!!」
「ルナ様のお城に向かってーー、槍、かまえーー!!」
「おおーー!!」
(お花畑)
「まずいですルナ様、こっちに来ます!急いで逃げますよ(右にざっ!)」
「お姉ちゃん早く逃げて(左にざっ!)」
「ちょっと2人とも待って・・」
「(突撃ーー!!)(おおーー!!)」
「ちょっと2人とも、どっちに逃げればいいんですかーー!!」




