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52.第2章 最終話 戦士の帰還

 『ベネチア』の海、地平線の彼方がうっすらと明るくなっていく、夜明けが近づいてくる。まだ上空には無数の星々がキラキラと輝いている。王宮での闇の襲撃の事実は、『ベネチア』の一部の民にしかまだ認識されていない。

 

 それを物語るかのように、お城の敷地から黒い煙がいくつか立ち上るも、丘の滝の水は未だその衰えを知らず、脈々とその水量を維持したまま、『水のクリスタル』の近くから湧き出る多量の綺麗な水を、『ベネチア』の運河に供給し続けている。


 『水の神殿』での黒装束の襲撃、『水のクリスタル』の止めようのない闇の浸食という大きな代償を払いつつ、大臣による最悪の結果だけは防ぐ事に成功したオルレアンの4人の水の戦士たち。


 未だ国交が無いこの『ベネチア』との協定は、もうすぐ来る夜明けまでに国外に退去する事。キグナス将軍と、傷つき倒れていたサラに誘導され、馬車に乗って『ベネチア』側にある『転移結晶』の青いゲートのある海岸線の施設まで送り届けられる4人。

 馬車を降り、天使化したルナの消耗は激しく、『水の鎧』を装備したエリスに肩を支えられながら共に歩く。


「ルナ様、大丈夫ですか?」

「はい・・わたくしは大丈夫です・・」

「大丈夫かジョン?」

「銀等級、それはこっちのセリフだろ?」


 お互いを気遣(きづか)う4人の水の戦士、『転移結晶』の前には、アクア王女とキグナス将軍、それに青い髪のエルフ、サラの姿もあった。


「ルナ・・たいぎであった」

「アクア様・・もったいないお言葉、ありがとうございます」

「そこの漁民、待たれよ」

「え?ぼ、僕です?」

「その仮面、いつまでつけておるつもりか?」


「ああ!!」


「ぷっ、ふふふ」


「あははは、銀等級、今まで気づかなかったのかよ?」

「もはや体と一体化してて、全然忘れてましたよ」


「はははは(全員)」


 感動の別れを一瞬でぶち壊す、その場の空気を破壊する、エアークラッシャーとは私の事。


「そこのぎょみん・・なはなんともうす?」

「あ、はい王女様。スズキイチロウです」

「イチロウ・・イチロウ・・」

「はい?どうされました?」


「こんどあそぶ、わたしといっしょ」

「へ?またまた、ご冗談を、はは」

「ルナともあそぶ、2人でいっしょに」

「まあ、それは大変嬉しゅうございます、ふふ」


「水の戦士たちよ!」


「はい!(4人)」


 キグナス将軍から声をかけられる。


「近くシャルル=ドゴール女王陛下へ使者を出すゆえ、これからの両国の架け橋となって欲しい。この老兵の、最後の頼みじゃわい。どうか、この通り」


「キグナス将軍!」

「頭をあげて下さい」

「どうか・・どうか・・アクア様の・・お力となって欲しい・・」


「じいや・・」


 キグナス将軍の姿が、実家の親父と重なる。まるで、自分の娘を思う父のように、自分の身が最後まで尽きる一瞬まで、愛する娘を守るためにこの人は・・頭を・・平気で下げられる。

 たとえ血がつながっていなくても、愛する者のためなら、人は身分を超えて、平気で頭を・・下げられる。こんなに素晴らしい光景は無い、くそ、本当に、力になってやらなくちゃって、思わされるじゃないか、このおじさんは。


「オルレアンの使者よ!夜明けが近づきました、急ぎ『転移結晶』へ!」


「はい!(4人)」


 たとえ友好的になったとはいえ、今回の約定は『夜明けまでにオルレアンに戻る』が絶対条件。このオルレアンや『ベネチア』において、一度交わされた約束は絶対なのだろう・・軽い口調で、安易(あんい)に人と約束しないよう、注意しないといけないな。

 歩き方がつたないルナ様とエリスが先にゲートへ、2人寄り添い、ゆっくり歩を進める。


「アクア様、また、必ずルナは参ります。お約束致します」

「アクアもやくそくする、かならずまたあう、あいにいく」


「まあ、アクア様。本当可愛らしいですねルナ様」

「ふふ、そうですねエリス」

「あっ、ちゃんと名前で呼んでくれるんですね」

「もちろんです。約束したから・・」

「あら、じゃあ次は何をお願いしましょう?」

「勝手に増やさないで下さい!」

「ふふふ、行きますよルナ様」


 2人は相当仲良くなったようだ。微笑ましい光景の後、ゆっくりと歩を進めるジョンと漁民。


「銀等級、今度はこけるなよ?」

「分かってるよ、また十字砲火(じゅうじほうか)を浴びたら、1しかない体力が吹き飛んじゃうよ・・」

「なんだよ、十字砲火って?」

「知らないのかジョン、オルレアンの世間(せけん)の風は(きび)しいんだぞ?」


 仲良くなったジョンと漁民が青いゲートをくぐると同時に夜明けとなり、オルレアン側に入ると、『ベネチア』側より若干明るく感じる。先にゲートの『転移結晶』をくぐったルナ様とエリスが、その場を埋め尽くす兵士や冒険者(ハンター)に囲まれていた。

 皆口々に、聖女ルナの生還と、偉業(いぎょう)の達成を褒めたたえている。どうやらあちらでの出来事も、ある程度このオルレアンに伝わっている様子だ。


「あっ、仮面付けないと!」

「どうした銀等級?」

「秘密なんだよ、自分が『ベネチア』にいる事」

「なんで?」

「ルナ様と夜一緒にいたなんてギルド長のセガールに知られたらまずいんだよ」

「誰だよ、そのセガールって?」


 慌てて仮面をつける漁民。後からオルレアンに到着したこちらを見るなり、聖女ルナと抱き合っていた聖女ジャンヌがこちらを見るなり叫ぶ。


「あっ、変態がいる!」

「本当だ!ハンター諸君、変態を捕えろ!!」


「確保ーー!!」


「嘘だろジョン!時間稼いで(かせいで)!」

「俺を巻き込むなよ、銀等級!」

「『月の雫(つきのしずく)』だろ俺たち?このまま捕まったら、俺、海の藻屑(うみのもくず)にされちゃうよ!」


(わーーー!!)


 無数のハンターに追いかけられる漁民、なぜか全員黒いスーツを身にまとい、黒いサングラスをかけたハンターしかいない。サンダースパパに捕まれば最後、もはや命の保証はどこにも無い。1秒で1枚銀貨の借金が増えていく男、スズキイチロウ。


「『感知』スキルを使え!やらしいオーラをとらえるんだ!」

「ギルドカードの位置を特定しろ!『転移結晶(てんいけっしょう)』を通ったログから割り出すんだ!」


『ベネチア』の運河にそそぐ水の流れ(やさ)しくも、オルレアンに吹きつける緑色の世間(せけん)の逆風は、とてもとても、(きび)しかった。


第2章 <2つの光> ~完~


【第2章 登場人物】


《主人公 スズキイチロウ》『水属性』1日1回3分限定『上位昇進』スキルで異世界を駆け抜ける。


《主人公の嫁》

本作最大のミステリーにして影の主人公。


《マミフレナ=ルナ=ダルク》

『光属性』『水属性』を持つ聖女の1人。性格は母似、草食系、思春期。主人公の嫁にそっくり。双子姉妹の長女。


《マミフレナ=ジャンヌ=ダルク》

『光属性』『風属性』を持つ聖女の1人。性格はパパ似、肉食系、パパ大好き。主人公の嫁にそっくり。双子姉妹の次女。


《シャルル=ドゴール女王陛下》

オルレアン王国女王にして、シャルル7世襲名。絶対的な権力を持ちながら卓越した統治により、オルレアン全国民より絶大な信用を得ている。


《ジェフ=ジョン》

『水属性』のブロンズ冒険者にしてエルミタージュ学院100期生。ルナ様親衛隊『月の雫』のメンバー。


《クラウド=エリス》

『水属性』のブロンズ冒険者にしてエルミタージュ学院100期生。ルナ様親衛隊『月の雫』のメンバー。85期生クラウドの実娘。


《ミューラ》

『火属性』のエルフ。王立学院エルミタージュの教師。オルレアン連合ギルド所属の銀等級冒険者。主人公の第1村人。心優しきエルフ。


《サンダース》

『雷属性』オルレアン連合ギルド長。金等級冒険者の武闘家。通称「セガール」、双子姉妹のパパ。


《セバス》

『火属性』のエルフ。オルレアン連合副ギルド長。ミューラの実兄。独特の話し方が特徴。


《アクア=マリン王女》

死別した両親の第一王女にして王位継承権第一順位の立場。『ベネチア』のトップであるが、その幼さ故、実権は大臣に握られている。


《キグナス将軍》

『ベネチア』王宮兵士団の将軍。オルレアンとの断交を主張する大臣に不信を抱く。アクア王女の両親にも仕えていた老兵。ダルク家の過去を知る人物。


《サラ》

『水属性』のエルフ。ミューラによく似た青色の髪のエルフ。主人公たちをアクア王女の元へ向かい入れた水先案内人。


《奈落》

闇の黒装束リーダー格。性格は残忍。


《諸刃》

黒装束の影の1つ。『ベネチア』の大臣に化け、仮面舞踏会を利用し冒険者を溺れさせた影。その真の姿は・・。


《刹那》

黒装束の影の1つ。その正体は・・。


《円華》

黒装束の影の1つ。大人の女性の艶美な声を発する謎の影。ゴブリンを瞬時に召還する謎の力を持つ。


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