34.功績
朝 オルレアン連合ギルド会館 15年の時が経ち、ギルド会館は見違えるような綺麗な建物に建て替えられていた。
茶色く3階建ての以前の建物は完全に無くなり、クリスタルに輝く外装、建物は大きな棟が3つそびえ、中心棟が最も高く、両脇の2つの棟がやや小さくも辺りの建物をはるかに凌駕する高さ。
会館内は白を基調とした大理石造りで、2階へ続く入口中央階段は赤いカーペットがひかれている。
1階奥のホールは以前の倍の窓口が横一列に並び、受付のエルフのお姉さんと冒険者の間にはガラスの仕切りがあり、さながら銀行や役所をほうふつとさせる内装。以前の怪しい観光案内所とは大違い、15年の時の経過を感じさせる。
「あ、死体が動いてる・・」
「エミリーさんじゃないですか!」
先導のサリー、サンダースにセバス、ルナ、ジャンヌ、ミューラの順に続いて2階へ向かってギルド会館内を歩いていると、以前王立学院エルミタージュ受験の際にお世話になった3番窓口受付エルフのエミリーさんが通りかかる。
「あなたは石化中、死亡登録済、なぜ動く?」
「勝手に殺さないで下さいよ、解けたんですよ、石化が。あっ、僕2階についてこいって言われてるんで、また今度、じゃあ!」
「・・また仕事が増えた」
エミリーさんと別れ、2階の階段を駆け上がる途中、今度は同じくお世話になった2番窓口受付エルフのリンダさんと目が合う。
「ちょっと、スズキ君じゃない!」
「あっリンダさん、おはようございます」
「おはようじゃないわよ!石像のあなたが何で歩いてるのよ!」
スマホやネットも無いこのオルレアン、どうやら自分の情報はギルド会館まで伝わっていなかったようだ。
先ほどサンダースの攻撃により残り体力1が消滅しかかったが、まだ、生きてる。若干の体のだるさは感じつつ、2階応接室の中に入る。以前の屋敷のような応接室とはうって変わり、大きなガラスのサッシから、太陽の光がサンサンと入り、室内は光輝いていた。
「(がちゃ)失礼します」
部屋の中に入ると、先ほどまで治療室にいた全員が集まっていたが、その中に以前冒険者試験を受けた時にいたドリフのおっさんも立っていた。
「あっ、えっと、ガイアさん。お久しぶりです」
「かっかっか、憶えておったか小僧」
「採用してくれた面接官は全部ちゃんと覚えてますよ」
「くっくっく、そうかそうか」
応接室が広いとはいえ、ギルド長サンダースに副ギルド長のセバスさん、ミューラ、ルナ、ジャンヌ、これだけ人数が集まると視界が埋まり狭く感じる。なんでここに呼ばれたのか、まるで見当がつかない。
「ねえパパ、ジャンヌ、エルミタージュ行かないといけないの」
「そうですお父様、立会とは一体何を?」
「そうだな、小僧1人に時間ももったいない、セバス!はじめるぞ」
「はは~。仰せのままに」
何やら副ギルド長のセバスが、奥の方から銀色のカードを手に持ってこちらに近寄ってくる。
「それではこれより、高等序列昇進の儀を始めます。本儀礼に際し、オルレアン連合ギルド要領第2条を適用し、金等級冒険者兼ヒューマンを代表する1名をギルド長サンダース様」
「御意」
「ヒューマンを除く銀等級冒険者2名以上の異種族、ドワーフを代表しガイア様」
「立会人 ドワーフの名にかけて ガイアが証人とする」
「続いてエルフを代表し・・ミューラ、ちゃんとやりなさいよ」
「分かってるわよ兄さん、もう。立会人 エルフの名にかけて ミューラが証人とする」
「では、え~わたくしオルレアン連合副ギルド長、セバスの名において、スズキイチロウ」
「はい・・」
「まさかお父様!この方は変態行為を働いた囚人です。ねえジャンヌ・・ジャンヌ?」
「スズキ・イチロウ・・イチロウ・・イチロウ・・」
「どうしたのジャンヌ?」
「え~15年前の『風の神殿』において、黒装束の襲撃による石化攻撃から身を挺してアイリス様の身代わりとなったその勇気・・」
「アイリス・・お母様?」
「この囚人が身代わり!?」
ルナとジャンヌが顔を見合わせ、驚きの表情を浮かべる。
「え~さらに、石化を解き、15年ぶりとなる黒装束の襲撃時、聖女ジャンヌ様をロードオブパラディンへと導いたその功績を称え・・」
場が静寂に包まれる。
「そなたをオルレアン公認 序列3位 銀等級冒険者に昇進と認める」
「異議なし!!」
「え~ではスズキ君」
「え?あっ、はい」
呆然としている自分にセバスが歩み寄り、銀色のカードを差し出す。
「え~君は、このカードを持つのにふさわしい男だ。これからも期待しておるよ、それと・・」
「え?」
(がちゃがちゃ・・かちゃ)セバスが首に付けられた囚人の首輪を外してくれる。首輪を取り終えると、セバスが耳元で小声でつぶやく。
「・・これからも、ミューラを頼んだよ。君がいない間、ずっと泣いておったよ」
「・・分かりました。ごめんなさい、お待たせしまして」
「兄さん、何言ってるの?」
「え~何も。さあ、エルミタージュへ急ぎなさい、お前は授業があるのでしょう」
「あ、いっけな~い、もうこんな時間!あと10分で正門、閉まっちゃう」
ミューラは応接室の時計を確認している、ミューラの見ている方向を見上げると、時間は「7時50分」を指していた。
「ルナ様、ジャンヌ様、急ぎますよ!ほらスズキ君、もう15年も留年してるんだから、今年こそ卒業してよね!」
「ええ!?そんなに留年してたんですか?」
「いつ石化が解けてもいいように、セントルイス学院長にお願いして、あそこに置いてもらってたの、君の石像!」
「ミューラがそんな事するから、石化が解けてから僕、散々何ですけど」
「ほら走る、ルナ様!ジャンヌ様!聖女様が留年したら、国中の笑いものですよ!」
「それだけは・・行きますよジャンヌ!」
「わかってるから。ちょっと待ってよルナお姉様!」
ミューラがせかし、ルナとジャンヌも慌てて応接室の外に出る。セバスから銀色のカードを受け取り、3人の後を追いかけて部屋を後にする。




