表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/301

30.十字の光

 王立学院エルミタージュ 地下牢屋


 変態の汚名を背負い、牢屋の中でうずくまる。ミューラが去ってどれくらい時間が経っただろうか、今頃サンダース様に報告出来たのだろうか?


 やる事も無いので、ミューラが先ほど渡してくれた赤いギルドカードを起動する。カード自体は汚れてはいるものの、タブレットサイズのビジョンが表示されると、ちゃんと星のマークが映っている、どうやら使用には問題なさそう。


 続いて黄色いスキルカードを手にとって眺める。15年前、ラインハルトとの決闘(けっとう)で憧れの公務員に3分だけだったけどなれた・・・きっとこいつ、かなり無理したはず、こんなに傷ついて、夢をありがとう・・・。


 深夜 王立学院エルミタージュ 


 黒装束(くろしょうぞく)を着た2つの影が、結界を突破し、学院内に侵入する。


「15年ぶりか・・円華(まどか)陽動(ようどう)の手はずは?」

「もちろんよ刹那(せつな)、チャンピオンにはまだ早い」

「お前らしいな、頼りにしている」

「『風の神殿』までお願いね。すべては・・」


「(2人)(やみ)のクリスタル復活のために」


(ドォォォォーーーン)


敵襲(てきしゅう)ーー!!」


 牢屋の天井が振動し、砂煙(すなけむり)とともに砂がボロボロ落ちてくる。この振動、啓示(けいじ)の話、これは、やつらが攻めてきたのか?誰かが階段を降りてくる音がする。


「(かん かん かん かん)スズキ君!」


「ミューラ!」


「彼を出して!」

「いけませんミューラ様!」

「この『署名状(しょめいじょう)』を見なさい!」

「それはサンダース様の!はい、ただいま!」


(ガラガラガラガラ)牢屋の扉が開かれる。


「急いでスズキ君、もうそこまで、黒装束(くろしょうぞく)の2つの影が(せま)ってる!」

黒装束(くろしょうぞく)!?」

「聖女様が先に向かわれたわ!あなたも来て!」

「聖女様?」


ミューラとともに牢屋の階段を上にのぼる。


(ドォォォーーン!)


「うわ!」


 爆発が収まると、要塞(ようさい)の壁に大穴があいていた。砂煙(すなけむり)が舞い上がり、次第(しだい)に晴れると黒装束(くろしょうぞく)の2つの影が見えてきた。


刹那(せつな)、『風の神殿』へ」

「いくぞ円華(まどか)


「待ちなさい!」


「何者!?」


「ここから先へは」


「(2人)一歩(いっぽ)も通しません!!」


「ルナ様とジャンヌ様が来られたぞ!」

「我々には、聖女様がついてるぞ!」


 金髪の髪をした2人の女の子が、黒い2つの影に立ちはだかる。『風の神殿』近くの要塞からは、ニ聖女の登場に兵士たちの士気が上がる。


「・・似ている」

「どうした刹那(せつな)?」

空似(そらに)か・・すぐに片付ける」

「任せたわ」


 刹那(せつな)と呼ばれる黒装束(くろしょうぞく)の影が、腰から引き抜いた剣を天にかざす。顔はフードで覆われており、表情をうかがい知る事はできない。


「アストラルバルト!」


 上空から黒い雷が剣に落ち、刹那(せつな)が黒いオーラに包まれる。。


「ルナお姉様!(やみ)がくる!」


 刹那(せつな)が剣を振りかざす。


「必殺!ブラックセイバー!!」


 漆黒(しっこく)閃光(せんこう)が2人の聖女目がけて放たれた。


 神官の姿をしたルナが(つえ)を、騎士の姿をしたジャンヌが剣をかまえる。


「ジャンヌ、あれをやるわ」


「ルナお姉様!」


(つえ)と剣が天に重なる(クロスする)


「(2人)ニ重魔法(ツインマジック)! 聖なる光の多重壁(クリスタルウォール)!!」


ニ聖女の展開した聖なる光の多重壁(クリスタルウォール)に、ブラックセイバーが着弾する。


(ズガァァァーーン!)


「(パリーン!)キャー!!」


 『聖なる光の多重壁(クリスタルウォール)』は砕け散る(くだけちる)辺り(あたり)の巻き上がった砂ぼこりが収まると、要塞(ようさい)側は2人の展開した光の壁を(さかい)に無傷だったものの、敵側には展開した光の壁を境に大穴が空き、ブラックセイバーの破壊力を物語っていた。


「やったわ刹那(せつな)。ニ聖女の(そろ)ってのお出まし、こちらにとっては好都合・・『闇の召還(ブラックジョーカー)』・・」


 黒装束(くろしょうぞく)を着た円華(まどか)と呼ばれる影が『闇の召還(ブラックジョーカー)』と叫ぶや、満月で照らされた大地に出来たあちこちの地面の影から、地面を埋め尽くすほどのゴブリンが湧き出す(わきだす)

 刹那(せつな)円華(まどか)の近くの影では、周辺の大木(たいぼく)よりも背丈(せたけ)のあるひと際大きなゴブリンが徐々に姿を現してくる。


「ゴブリンの大軍だーー!」

「大きいぞ・・あれはまさか・・ゴブリンチャンピオンだ!!」


 同刻(どうこく) 牢屋の階段をかけあがるミューラと囚人(しゅうじん)


 さっきから上の方で、やたら大きな爆発音が聞こえた。兵士たちの叫びも聞こえる、ただ事ではなさそうだ。


 要塞の外に出ると、すでにあたりは真っ暗な闇に覆われ、空を見上げると、黄色い満月が輝いていた。牢屋の上は要塞になっており、壁にある無数のたいまつが辺りを灯す(てらす)。石造りの壁の2階から、兵士たちがゴブリン目がけて矢を次々と放っていた。


「ミューラ・・これって」

「15年前の再来ね・・あれは!ゴブリンチャンピオン!しかも・・(やみ)の・・」


 ミューラが声を震わせて見ている方向に目をやると、以前遭遇した事のあるゴブリンチャンピオンと同じサイズの巨体があった。月夜を受けて巨大な影がこちらの要塞にのびている、チャンピオンからは黒いオーラがふつふつと立ち上っていた。


「聖女様は・・・いた!ルナ様、ジャンヌ様、ご無事ですか?」


ミューラが地面に横たわっていた2人の女の子の近くにかけよる。


(ズシーン!ズシーン!)「ウォォォォーーー!!」


黒いゴブリンチャンピオンが歩く度に大地が揺れる。雄たけびをあげながら近づいてくる。


「うう・・だ、大丈夫。ルナお姉様は?」

「こっちも大丈夫よジャンヌ・・ミューラ様、来てくれたのですね・・ああ!?」

「ミューラ先生!そこの変態、危険です!早く離れて!」

「ううっ・・」


 こいつら、あの時の2人・・まだ()に持ってるのか。


「この子はスズキ君で・・・」


(ズシーン!ズシーン)「ガーーーーーー!!」


 闇のゴブリンチャンピオンが天に両手をかざす、黒い炎の塊が、ゴブリンチャンピオンの頭上で少しずつ大きくなっていく。


「まずい!もう時間がない、スズキ君!」

「は、はい!」

「『上位昇進(レベルブースト)』いける?」

「ちょっと待ってください・・」


 慌てて赤いギルドカードを出し、ビジョンを起動、星のマークをタッチ。そのまま、『序列昇進(レベルブースト)』をタッチすると、黄金色のカードが出現し手に取る。


「いけます!ミューラに・・」

駄目(だめ)!」


「どうして?『(ドラゴン)レンジャー』になれば、ミューラなら一発で・・」


「15年前の森で会ったチャンピオンとは違う。『火属性』の私じゃ、闇のゴブリンチャンピオンに致命傷(ちめいしょう)を与えても、また(やみ)の力で再生するだけ!『光属性』で攻撃して、浄化しないとあいつには勝てない!ルナ様、ジャンヌ様、スキルカードを出して!」


「え?」


「はい・・これ・・」


 ミューラが2人から黄色いスキルカードを受け取るや、手のひらに乗せ、こっちに差し出してくる。


「スズキ君、1回しか使えない。『上位昇進(レベルブースト)』は私にも扱い(あつかい)が分からない、あなたが選ぶのよ」


「(3人)ええ!?」


「先生、嫌です!」

「そうだよミューラ、何でこの2人に?」


「ガーーーーーー!!」


 黒い炎の塊が大きくなっていく。


「『光属性』はこの子たちだけなの!早く選んでスズキ君!」

「ええ!?」


ど、どうする。2人の姉妹がめちゃめちゃ(いや)そうな目でこちらを見ている。すでに2人の好感度は地に落ち、こちらは2人にとって変態以外何者でもない存在。年功序列(ねんこうじょれつ)、やはりここは・・。


「ではお姉ちゃんに・・」

「ええ!?」

「チャンピオンが撃ってくる!はい、ルナ様のスキルカード!早く入れてスズキ君!」


 ルナと呼ばれる女の子のスキルカードを受け取る。長い金髪、神官姿の女の子が、涙ぐみながらこちらに目で訴えてくる。この顔・・泣きそうな顔がマミにそっくりだ。


「お願い・・入れないで・・」

「ぐっ・・むむ・・」


 無垢(むく)(ひとみ)が必死に訴えてくる。罪悪感(ざいあくかん)半端(はんぱ)ない。『上位昇進(レベルブースト)』の黄金色カードを、ルナのスキルカードに()し込もうとする手を止める。


(そっちじゃないよ・・)


「え?・・や、やっぱり妹!」


「ええ!?絶対に(いや)!!」


 お姉ちゃんよりも妹はさらに酷い(ひどい)拒絶反応。こっちはわざわざスキルで強くしてやろうとしてるのに、段々腹が立ってきた。

 ミューラからジャンヌと呼ばれる女の子のスキルカードを受け取る。短い髪、セーラー服のような騎士の姿の女の子が、涙ぐみながらこっちを睨み(にらみ)つけてくる。この顔・・怒った顔がマミにそっくりだ。


「君に決めた、もう入れるから」

「嫌!やめてよ!」


 ジャンヌがスキルカードに右から挿し込もうとするこちらの右手にしがみつき、必死の抵抗(ていこう)


「(がちゃがちゃ)あ、あれ?入らない」

「それ大きすぎて、入んないよ!!」

「そんなわけあるか(がちゃがちゃ)」

「無理矢理しないで!壊れちゃうよ!」

「ちょっとだけだから(がちゃがちゃ)」

「やめてよ!!」


「ガーーーーーー!!」


 黒い炎の塊がますます大きくなり、ゴブリンチャンピオンの顔よりもはるかに大きく膨れ上がる。


「スズキ君!ジャンヌ様は左利(ひだりき)きだから、左の穴から入れて!早く!」

「よし、入った。いいかジャンヌ!合図(あいず)したら、メイクアップと叫ぶんだ!」

(いや)ーー!!意味わかんないよ!!」

「みんながやられてもいいのか!」


「ガーーーーーー!!」


 ゴブリンチャンピオンが両手を振りかざし、黒い炎の(かたまり)をこちらに投げつけてくる。


「ジャンヌ!」


「ジャンヌ様!!」


「ぐすん・・めいく・・」


「『上位昇進(レベルブースト)』!」


上位昇進(レベルブースト) マミフレナ=ジャンヌ=ダルク 属性『光』『風』】


【職業ジョブ】『聖騎士』→『ロードオブパラディン(神)』

【レベル】『レベル15』→『レベル45』

【固有スキル】『2刀流(にとうりゅう)』『光の螺旋(らせん)

【固有装備】『三種の神器:エクスカリバー(光)』『ラグナロク(風)』


 アイリスの時と同じように、天使のような光の羽が生える。青い(ひとみ)は金色に変わり、無垢(むく)だった顔が大人びた表情に変わる。


 ゴブリンチャンピオンの放った黒い炎の塊が、こちらの眼前に迫る。ジャンヌは両手に剣を持ち、右手のエメラルドグリーンに輝く剣を天にかざし、左手の白金(しろがね)に輝く剣を水平に構えると、『風の神殿』がある背中の後ろでエメラルドグリーンの発光が夜空を照らした次の瞬間、ジャンヌが両手に持った剣を十字に振り下ろす。


「グランドクロス!!」


(ズバッ!!・・シューー・・・・)


 (はな)たれた光の十字架(じゅうじか)が、黒い炎の塊とゴブリンチャンピオンを一瞬で吹き飛ばした。ジャンヌは両手の剣を地面に手放し(てばなし)、続いて両手を開いて伸ばし体の前にかざす。


「光の螺旋(らせん)!!」


(ピカッ!パァーー)『上位昇進(レベルブースト)』したジャンヌを中心に波紋(はもん)が広がり、あたり一帯を光が幾重(いくえ)にも流れていく。


「ギギィィ(バン!)・・コツン コツン」


 光がゴブリンの大軍に当たった瞬間、ゴブリンたちは黒い霧となって吹き飛び、一瞬にして魔石に変わっていく。


「グググッ・・ゴブリンどもが・・・か、『風のクリスタル』を・・」

「引くわよ刹那(せつな)

「しかし円華(まどか)!」

駄目(だめ)

「なぜ?」


「あなたはここで終わる人じゃない」


「・・しかし」


陽動(ようどう)は成功した。予定通り先に水を攻める。相手の能力が分からない、諸刃(もろは)と合流するわよ」

「くっ・・了解した」


(ビュン!)


 2つの影は消え去り、おびただしい数の魔石が、あたり一帯に、無数に散らばっていた。


 次第に空が明るくなり、海の向こうの地平線から、太陽が昇ってくる。


 オルレアンに、朝がやってきた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ