17.再会
12時 王立学院エルミタージュ 面接会場
「(バン!)何だね君!このデタラメな答えは!!」
「君は我がオルレアン国王 シャルル5世を侮辱しておるのかね?回答によっては死罪に問うぞ!」
散々待たされたうえで面接会場に入ると、暗がりの面接室にイスが一つ、向かい窓側に面接官5人、全員角帽にガウンを身にまとい、大学の入学式にいる学長のような服装をしていた。
「第1問の君の書いたこの『内閣総理大臣 カメハメハ大吾』とは何だね?」
「私の島の大王の名です」
「これが?」
「はい、元総理のお孫さんで・・」
「そんな事は聞いとらんのだよ!(バン!)」
「それから第2問の我が国の国歌、当然『クリスタルの名のもとに』だが、なんだね?この『OTI』というのは?」
「それはカメハメハ大吾のデビュー曲、O【おれ】T【超】I【いけてる】という国歌クラスの名曲で」
「ふざけるのもいいかげんにせんか(バン)!もう出ていきなさい!!」
「・・はい」
やはりオルレアンでは通用しなかったか。5人の面接官に睨まれながら、面接会場を後にする。転職5回人生においてもワーストに並ぶであろう、まったく手ごたえの無い面接試験。十中八九駄目だなこれは。
2階の面接会場からとぼとぼ階段を降りる1階へ、何やら奥から賑やかな声が聞こえてくる。近くにいた学院関係者が声をかけてくる。
「ああ君、最後の1人だったね」
「はい、お邪魔しました・・」
「・・ついて来なさい」
「え?」
面識の無い男に言われるまま、賑やかな声の聞こえる会場に誘導された。1階の大広間では、お昼という事もあるのだろう、面接を終えた貴族たちが楽しそうに立食パーティーを楽しんでいた。
「あの。僕こんな格好ですし、農民ですし・・」
「分かっている。すぐそこの空いているテーブルで食事をしていきなさい」
「えっ、良いんですか?」
「もう2度と来る事も無かろう、食事だけは取らせるよう、あるお方から声がかかった」
「はは、優しい貴族の方もいるんですね・・」
「あまり奥には行かないように、目立つ行動は控えるように」
「分かりました、お言葉に甘えます」
この分だと、来年受験しようが農民が永遠にこのエルミタージュを合格する事は無いのだろう。しかし食事だけ取らせるようにって、一体誰からの恩情なのだろう?
入口手前のテーブルには、まだ手付かずの豪華な食事があり、大広間にはゆうに100人以上の貴族の面々、皆若く綺麗な服装をしており、各々自己紹介をしながら今後の学院生活のパートナーを探しているのかも知れない。布の服を着た場違いな農民1人、惨めなだけだ、気づかれないうちに退散するとしよう。
「よう、どうだった?」
「クラウド・・」
「は~ん、その様子じゃ、あんまり上手くいかなかったみたいだな」
「まったく、全然・・」
「・・まあ、食おうぜ」
長身でがっしりした体形のクラウド、この前会った時は赤い鎧を身にまとっていたが、今はモーニングに身を包み大人の感じが漂う、こっちとは大違いだ。クラウドと向かい合って話を始める。
「しっかし、俺の服、全然似合わなくてさ、いつもの鎧の方がまだマシだぜ」
「はは、確かにあっちの方が似合ってる」
「お前はそっちの服の方が断然似合ってるぜ」
「本当の事言うなよ」
「はは、怒んなって」
大広間の奥の方ではこちらに誰も気づかず、あるものは食事を楽しみ、あるものは会話に夢中になっている。
「やっぱ駄目そうか?」
「うん、2日前にオルレアンに来たばかりで・・筆記も面接もまるで駄目・・」
「そうか・・・って、お前!2日でどうやってブロンズ冒険者になれるんだよ?やっぱあれか、チャンピオンか?」
「うん、そんなところ。ミューラがいたから、偶然が重なっただけで・・」
「そうか・・まあ気にすんなって。お前なら上手くやれるよ」
「ありがとうクラウド、会えてよかった」
「会えて良かったのはこっちの方だぜ、おかげで命があるんだもんな、感謝してるぜ恩人」
「言い過ぎ、そうだ、ケガ大丈夫なのか?」
「ほれ」
クラウドはモーニングを少しはだけさせる、ワイシャツの中、胴体に薄っすら包帯が巻かれているのが見えた。
「折れてるのか?」
「死ぬほど痛いぜ」
「ふ、ふふ」
「ははははは・・・いってー、痛いから笑わせるなよ」
「はは、そんな無理して。とりあえず受験か・・根性あるなクラウドは」
「そりゃあこれ逃したら親父に怒られるからな、無理もするさ・・・あっ」
「どうした?」
(こつ こつ こつ)歩く音が近づいてくる。
「アイリス様。どちらへ?」
(こつ こつ こつ)歩く音がさらに近づく。
「アイリス様、あのような農民にお近づきになってはなりません」
大広間の奥を向いていたクラウドが驚いた表情に変わる。クラウドが向いている方へ振り向くと、修道服を着た女の子が歩きながらこちらに近づいてきた。顔を見た瞬間、一瞬で全身が凍り付く。
「マ、マミ・・(うぐぅ)」
この名前を言ってはいけない、ミューラからあれだけ口止めされていたのに。結婚生活10年間連れ添った女とうりふたつの顔を見て、その名をおもわず口に出してしまい、両手で口をあわててつぐむ。
(こつ こつ こつ)「どうしてあなたは、わたくしの名を知っているのでしょうか?」
女の子が近づいてくるたびに、体が拒否反応を示し、自然と後ずさりしてしまう。
(こつ こつ こつ)「あなたは一体、どこから来たのでしょうか?」
近づいてくるのと同じ歩を後ずさりしていく、段々と後ろの壁が迫り、これ以上後ずさりできなくなる。
「あなたはなぜ・・」
(ドン)壁に到達。眼前に、女の子が迫る。
「わたくしの事を・・恐れているのでしょうか?」
「う・・ごめん・・」
「ふふ」
「え?」
女の子は笑みを浮かべる。
「わたくしは、あなたへの興味が尽きません」




