168.家族と迎える朝
朝日が差し込む、オルレアンに朝がやってきた。
天気は今日も快晴。
オーシャンビューのオルレアン海を一望できる『ギルド会館第二タワー』10階、朝日が海に反射してキラキラと輝く。
ソファで仰向けに横になり眠る1人の男。
地面には無数の報告書が散らばっていた。
テレビが設置され、コーヒーテーブルとソファが置かれるリビング。
顔の両ほほに温かく柔らかな感触がしたと思った次の瞬間、かなりの重量を感じる塊が2つ体にのしかかる。
「ぱぱ!!(ガバァ!)」
「ぐはぁ!?だ、誰!?」
「『ユニ』だよお父様」
「『ペガ』だよパパ」
「ええ!?子供なんて僕には・・ん?『ユニ』と『ペガ』・・なのか?」
「(2人)ぱぱ~」
「(グサッ!)痛い『ユニ』!角、刺さってる刺さってる!や、薬草・・(もぐもぐ・・ごくん)はぁ!は~は~」
「『ユニコーン』ちゃん、スズキ様を頭の角で刺しちゃダメなのです」
「『ペガサス』ちゃん、お母さんのところに戻りなさい」
「(2人)まま~」
「マスター、ご無事ですか?」
「重症ですよ、重症」
太陽の光を浴びて早朝から擬人化した『ユニコーン』と『ペガサス』の『聖獣』2体に襲撃される。
特に『ユニ』の角をつく攻撃によって体を刺されるパパ。
『マドリード』産の薬草によって、なんとか一命をとりとめる。
朝からなんて騒がしい家なんだ、この家は・・。
「大丈夫ですかスズキ様?」
「ルナお母様。子供の面倒、ちゃんと頼みますよ」
「そのお母様と言う呼び方はちょっと・・恥ずかしいのですよわたくしは?」
「お母様、『ユニ』はお母様って呼んで良いでしょ?」
「はい、もちろんなのです『ユニコーン』ちゃん」
「わ~い」
「ねえママ、ママの事ママって呼んで良いよね?」
「『ペガサス』ちゃん可愛い!もちろんだよ『ペガサス』ちゃん」
「パパの扱いがひどすぎる・・僕、いない方が良いですよね?」
「スズキ様、そんな事はございません。この子たちにとって、あなたは本当の父親なのですよ?」
「そうだよ一郎。私と一郎のタマゴから生まれたんだから、ちゃんと最後まで責任取りなさいよ」
「(2人)ぱぱ~」
「・・太陽の光を浴びると、本当にヒューマンの子に擬人化するんですね・・『ユニ』は若干女の子っぽくて、『ペガ』は少し男の子っぽいのかな?」
「マスター、『聖獣』に性別はありません。しいて言えば、両性です」
「両性!?なんですそれ『カーバンクル』。この子たちとカエルちゃんも、同じ両生類って事ですか?ああ、だからタマゴちゃんから孵化するのか・・なるほどなるほど」
「マスター、それは意味がまるで違います。両性であって、『ユニコーン』は女性の寄りに、『ペガサス』は男性寄りに性差が寄って擬人化しているに過ぎません。女性でも男性でも無く、両性なのです」
「一郎、あんた馬鹿でしょ!『聖獣』は男性も女性も1人で兼ねてるって言いたいのよ!両生類のカエルちゃんは川と陸に住めるから両生類でしょうが馬鹿!」
「ねえママ、パパは馬鹿なの?」
「え!?『ペガサス』ちゃん・・ああ、えっと・・たまによ、たまに」
「・・ちょっとジャンヌママ、それひどく無いですか?」
「ルナお母様、お父様はやらしいのですか?」
「ええ!?『ユニコーン』ちゃん・・時々ですよ、時々」
「ルナお母様まで・・この子たちには、正しい知識を教えて上げて下さいよ」
「(二聖女)あなたが言うな!」
「マスター、誕生期からレベルが上がり、『ユニコーン』と『ペガサス』は成長期を迎えております。成熟期、つまり大人になる前に正しい言葉を教えないと、後々魔法を使う時やスキルを使用する時に、正しく能力を使う事が出来なくなってしまいます」
「それは困るよ『カーバンクル』。それじゃあ、今日からさっそく『ギルド本館第一タワー』の6階にある『保育園・小学校』フロアに通わせて読み書きを覚えさせましょう」
「『ユニ』はお父様と離れたくありません」
「『ペガ』もだよパパ。ママとも一緒に居たいよ」
「まあ、『ユニコーン』ちゃん・・可愛いのです(ダキッ)」
「『ペガサス』ちゃん可愛い・・(ダキッ)」
「ほらルナ様もジャンヌ様も、何そんなに最初から甘やかせてるんですか?今日月曜日ですから、エルミタージュ学院に、まさかこの子たち一緒に登校させるつもりじゃ無いでしょうね?」
「はい、もちろんなのです」
「そだよ」
「(2人)わ~い」
「なに馬鹿な事言ってるんですか2人とも。そう言うのが親馬鹿って言われるんですよ?エルミタージュのサラ先生やミューラ先生の講義なんか聞いたって、『あかさたな』も書けやしませんよ?ちゃんと保育園・・少なくとも小学校から読み書きの『筆記』スキルを学ばせるべきです。『筆記』スキルだけ取ったって、文字は書けても何の文字を書いてるか分からないじゃ無いですか?自分の名前くらい自分で書けるようにさせないと」
「スズキ様・・厳しすぎるのです」
「そうだよ一郎、もっと優しくしてあげようよ~可愛いからジャンヌ一緒に居たいよ~」
「ダメダメ、そんなに言うなら2人とも、明日からこの子たち連れて王宮戻って下さいよ」
「お父様、『ユニ』はお父様と離れたくありません」
「『ペガ』も、パパと一緒じゃなきゃ嫌だよ。パパのご飯毎日食べたいよ『ペガ』は」
「いつの間にか『ユニ』と『ペガ』って名前になってる・・2人とも」
「(2人)はい」
「わがまま言って父さんの言う事が聞けないなら、マリーゴールドさんのところの子供になりなさい」
「(2人)ええ!?イヤだよ!!(シュ~・・)」
「スズキ様!『ユニコーン』ちゃんの体が透明に薄くなっていくのです!消えそうなのです!」
「一郎、可哀そうな事言わないでよ!『ペガサス』ちゃんもドンドン体薄くなっていってるよ!」
「分かったから分かったから・・『ユニ』、『ペガ』。今日はお隣さんにお前たちと同じくらいのエルフの子が2エルフいるから、一緒に『小学校』行って読み書きを覚えて来なさい、良いですね?」
「(シュ!・・)ぱぱ~(ギュ!)」
「よしよし、良い子出来るか2人とも?」
「お父様、『ユニ』良い子する」
「パパ、『ペガ』も。良い子する」
「よしよし。父さんと母さんたちも別の学校行ってくるから。お昼には王宮に母さんたちと一緒に行かないとだから、ちゃんと迎えに行くまで良い子で勉強していなさい。父さんがおいしいお昼ご飯作ってやるから」
「本当!ぱぱ~」
「よしよし・・じゃあルナ様、ジャンヌ様もそういう事で」
「『ユニコーン』ちゃんが、お父さんの言いなりなのです・・」
「『ペガサス』ちゃんまで一郎の言う事素直に聞いて・・そのマリーゴールドさんって人を恐れてるよ、なんだかおかしいよ!」
「何言ってるんですかジャンヌ様まで、マリーゴールドさんはヒューマンじゃ無くて恐ろしいエルフなんですって。『ユニ』、『ペガ』。今日行く『小学校』だけど、お隣さん家のエルフの子のうち、マリーゴールドさんのお子さんのマーガレットちゃんがいるから。ちゃんと粗相の無いように仲良くしなさい。マーガレットちゃんに何かあったら、同じタワーで働いてるマリーゴールドさんがムチを持ってくるから気を付けなさい。調教されちゃうぞ」
「怖いよお父様・・(ギュ)」
「パパ~ムチ怖いよ~(ギュギュ)」
「はいはい、仲良く遊んでたら大丈夫。2人は調教されないから」
「スズキ様・・その調教とは、一体どういう意味なのですか?」
「ああ、ルナ様・・競走馬を育ててるエルフの部下が一名おりまして・・はは」
「一郎、私になんか隠してるでしょあんた?」
「またまた美馬さんまで、何でもありませんって、何でも。優秀な競走馬を育てる調教師が、新しく部下になったって話ですって」
「・・あんたの『無のクリスタルのかけら』消えないのね・・あんた、本気で馬鹿な事言ってるから、何言ったってその『クリスタルのかけら』消えないんじゃ無いの?」
「なに言ってるんですか美馬さん。僕は愛のクリスタルの使徒ですって。競走馬にも、愛のムチを振るってるって話ですって」
「なんでそんなデタラメな話ばっかりしてて、あんたの『クリスタルのかけら』消えないのよ!」
「お母様、『ユニ』、お腹空いてきちゃった・・」
「まあ『ユニコーン』ちゃん・・」
「ママ、『ペガ』も。お腹空いたよ~」
「『ペガサス』ちゃん・・一郎、私もお腹空いたよ~」
「美馬さん、なに子供と同じ事言ってるんですか?分かってます分かってますって、よっこらしょっと。今6時過ぎか・・朝ご飯食べて、一度ギルドに寄ってからエルミタージュに通学と・・それでよろしいですかお2人とも?」
「はいスズキ様。お願い致します」
「一郎、朝ご飯なに?」
「サンドイッチ・・『サンド』にしましょう。昨日オルレアン市場で買ったタマゴと豆を使って、『タマゴサンド』と『小倉サンド』作りますね」
「やった!美味しそう!」
「ねえママ、『タマゴサンド』って美味しいの?」
「『ペガ』ちゃん、すっごく美味しいよ。パパの作るお料理は、全部全部美味しいの」
「本当ママ!やった~」
「お母様、『ユニ』も『タマゴサンド』食べて良いの?」
「もちろんなのです『ユニ』ちゃん。スズキ様・・お父様は優しいのです、なんでも美味しい料理を作っていただけるのです」
「お母様、『ユニ』早く食べたい!」
「はいはい皆さん。準備始めますから、ちゃんと朝は顔洗って、歯磨きもして下さいよ。美馬さん、この子たちに洗面台の場所とか教えてあげて下さい。聖女様お2人は、エルミタージュの登校準備にお時間かかるんじゃありませんか?」
「そうなのです・・ジャンヌ、制服はちゃんと持ってきましたか?」
「もちろんだよルナお姉様。ちゃんと『アイテムボックス』入れてるもん」
「ああ、美馬さん。昨日夜間に自動静音運転モードで回ってたドラム型洗濯機、みんなの服も乾燥機能で乾いてるはずですから、お2人の下着とかちゃんと王宮持って帰って下さいよ。僕王宮にお2人の服持って行くの、嫌ですからね」
「一郎、あんたはいつも一言多いのよ馬鹿!そんなやらしい事言ってんじゃないわよ!」
「そうですスズキ様。女性の下着などと・・エッチなのです」
「ねえルナお母様、お父様はエッチなの?」
「え!?・・そうなのです」
「ねえジャンヌママ、パパやらしいの?」
「ええ!?・・そうだよ『ペガ』ちゃん」
「・・全員、朝ご飯無しにしますよ」
「(4人)ええ!?」
騒がしい我が家・・『ユニ』と『ペガ』、はた目には幼稚園の年長さんか、小学校の低学年くらいの子供がいきなり2人・・自宅マンションでこの朝の光景、まるで日本にいた時のうちの家みたい・・。
(回想)
「パパ~(ガバァ!)」
「ぐはぁ!?」
「パパ~起きて起きてよ~」
「分かった分かった・・ああっ、もうこんな時間!?」
「一郎~早く会社行かないと遅刻するわよ~」
「ヤバいヤバいって。ああ!?目覚ましアラーム止まってる、電池切れ!?ちょっとマミ、分かってたんなら起こしてくれって!」
「パパ~一緒に歯磨きする~」
「するよするよ、スペシャルマッハで」
「ほら、パン焼いといてあげたから、さっさと歯磨きして来なさい」
「ありがとうマミ」
あの騒がしい頃はもう自分も2社目に転職してたかな・・騒がしくも、楽しい家族3人の生活だった。
こっちの世界の子供の成長はあまりにも異常な早さだ。なるほど、異世界の異って、異常の異だったのか・・。
朝から騒がしい我が家。なんだかんだ言いながらパパの指示通り、ルナお母様と『ユニ』、ジャンヌママと『ペガ』が洗面台へと向かって行く。
美味しいご飯が絡めば、何でも指示通りに動く母と子供たち。
台所へ向かいお湯を沸かす、サンドイッチだけでは味気ないので、昨日オルレアン市場で買った『マドリード』産のトウモロコシで、『コーンポタージュスープ』でも作ってあげよう。
鍋に水を入れ、火をつけて、『アイテムボックス』から『兵式飯盒』を取り出し、保存として中に入れていた普通の牛乳を取り出し煮詰める。
『アイテムボックス』内で賞味期限が約3日、それ以上は腐る事が昨日のマミとの話で聞いた期限。
ポテトチップも腐るので、昨日オルレアン市場で買った物やポテチは、あらかた魔法瓶の機能がある『兵式飯盒』へ移している。
昨日買い入れた食材程度では、ポテチに2つ、食材に2つ程度しか埋まらなかった。
しかも二聖女のせいで、昨日『アリゾナプライム』の番組3時間の間に、ポテチが『兵式飯盒』2つ分全部無くなってしまった。
太ると脅したにも関わらず、あのルナ様までおデブちゃんまっしぐらを目指す始末・・お芋は全部『ユニ』と『ペガ』に平らげられてしまったので、ニンジンと一緒にたくさん買っておかないと・・食費がやっぱりかかりそうだ。
「(ダッダッダッ)お父様~ルナお母様が変なの付けててね~『ユニ』にはまだ早いって付けさせてくれないの~」
「(ダッダッダッ)パパ~ジャンヌママがこれ付けちゃダメって言うんだ~『ペガ』もお着替え付けて良いでしょ~」
「こら『ユニコーン』ちゃん、それはお母様のなのです!持って行ってはダメなのです!」
「『ペガサス』ちゃんそれ返してよ!ジャンヌ寒いよ~」
裸の天使が4人リビングに来て、すぐにお着替えの部屋へ消えていったような気がしたが、『タマゴサンド』と『小倉サンド』のお料理に集中している自分は気にしない事にする。
『タマゴサンド』用のマヨネーズは無いので、市場で売っていた謎のソースで代用する。
ゆでタマゴちゃんを容器に潰して謎ソースを混ぜる・・ちょっとお塩を追加・・悪くない。
火の結晶石で焼いた両面焼きのパンを刃物でカット、タマゴをサンドしてさらにカット・・『タマゴサンド』がたくさん完成する。
『小倉サンド』は、過去に作った事のある『たい焼き』の餡子をベースに作る。水気は多少引かせて、ドロドロした触感では無く、和風のコシ餡子の塊に魔法の力で煮詰めていく。
今日の『小倉サンド』の餡子が完成。
さっそく火の結晶石で焼いた両面焼きのパンを刃物でカットして『小倉サンド』を完成させる。
さながらシベリアといったあんばいに仕上がった、我ながらあっぱれな一品。
『タマゴサンド』と一緒にたくさん作ったので、今日はお昼のお弁当として『ユニ』と『ペガ』にも持たせよう。
ニンジンを切らしているし、お芋も無いが、さすがに擬人化しているので、ヒューマンの食べ物も食べられるはず。
後であの子たちに朝食として食べさせて、問題無ければお弁当に持たせよう。
今日あたり、また市場のマーケットで色々と買いあさっておこう、『アイテムボックス』の食材が二聖女とニ聖獣の胃袋に消えていって、すっからかんになってしまった。
これはこれで言い知れぬ満足感を味わう専業主夫スズキイチロウ。
「(ダッダッダッ)お父様、『ユニ』のこの服見て見て~。ルナお母様がお洋服作ってくれたの!お母様と一緒の服!」
「(ダッダッダッ)パパ、『ペガ』の服も可愛いでしょ?ジャンヌママが作ってくれたの!『ペガ』も大好きなママと同じ服なの!」
「よしよし2人とも、可愛い可愛い。もうすぐ朝ご飯出来るから、手を洗ってそこのイスに座ってなさい」
「は~い(2人)」
「スズキ様、昨日も今朝も申し訳ございません。お料理をまた作らせてしまいまして・・」
「ルナお母様大丈夫ですよ、僕らの子供なんでしょ『ユニコーン』ちゃん?ちゃんとご飯作りますって」
「そのような言い方は!・・意地悪なのです・・」
「一郎、グルグル回して作ってるそのスープ、『コーンポタージュスープ』でしょ?ジャンヌお腹ペコペコだよ~早く食べたいよ~」
「はいはいジャンヌ様、お2人とも制服相変わらずよく似合ってますね。2人も手を洗って、『ユニ』と『ペガ』と一緒に座ってて下さいよ。『カーバンクル』は・・食事は食べなくてよかったんだよね?」
「はいマスター。契約しておりますマスターの魔力をちょくちょくいただいておりますので、ご心配なく」
「・・死なない程度に、ほどほどにお願いしますね・・」
「スズキ様・・やっぱり制服の方がお好きなんじゃありませんか?」
「ルナお姉様、一郎やらしいから、しょうが無いんだよ~」
「・・朝ご飯、いらないんですかお2人とも?」
「(二聖女)いります!」
先に仲良く手を洗った我が子たち二聖獣がリビングのイスに良い子して座って待っている。
昨日の今朝であるが、2人のお母さんの言葉を覚えたのか、成長が早い。
振る舞いやマナー、言葉づかいまでどんどんと覚えていく。
この分なら、今日1日『小学校』に通わせるだけで、読み書きも覚えられるんじゃないだろうかと思わせる成長ぶりだ。
1つ気になるのが・・『ユニコーン』の角が大きくなっているような・・ステータスオール1男、体力1が『ユニコーン』の角で吹き飛ぶ命の危険を想像する。
死の恐怖を覚えながらリビングに『タマゴサンド』、『小倉サンド』、『コーンスープ』を4人の家族に配膳する。
「わ~お父様のお料理、どれも美味しそう!」
「パパ~食べていい?『ペガ』もうお腹ペコペコだよ~」
「はいはい、『ペガ』はジャンヌママに本当にそっくりになってきたな」
「ちょっと一郎、恥ずかしい事言わないでよ~」
「さあ、お母様お2人お願いしますね。『ペガ』と『ユニ』も、お食事の前に神様にお祈りだぞ」
「(4人)はい」
父よ、あなたのいつくしみに感謝してこの食事を頂きます。
ここに用意されたものを祝福し 私たちの心と体を支える糧として下さい。
「(5人)いただきます」
昨日の夕食で、二聖女が口ずさんでいた食前の神様へのお祈りを、今度は『ユニ』と『ペガ』もマネをして言っている。
「美味しい!『ユニ』、お父様のお料理大好き!」
「美味しいよ!『ペガ』もパパのお料理大好き!」
「美味しいよ!ジャンヌもパパのお料理大好き!」
「ちょっとジャンヌお母さん、子供と精神年齢変わんないんじゃ無いですか?」
「うるさい一郎、私まだ16歳なんだからね!」
「なに40の女が冗談言って・・(目がきらん!)いや~ジャンヌお母様の制服姿、激マブですよね~あんまり可愛い女の子なんで、とても人妻に見えませんでしたよ~」
「あんたそれ・・私の事、馬鹿にしてるでしょ?」
「なに言ってんですか美馬さん、褒めてるんですって。『聖獣』の子も授かりましたし、これで許嫁ライン=ハート兄さんとの結婚準備も万端ですね?」
「だからあんた、結婚はルナ姉が先だって約束したばっかりでしょうが?」
「そうでしたそうでした。今日にも『トロント』行きましょうよ2人とも。午前中はエルミタージュとして・・午後のお2人のご予定はどうされます?」
「どうしよお姉ちゃん?」
「そうですね・・ジャック様もお早くお助けしたいところなのですが・・『トロント』王国に、聖女であるわたくしたちが勝手に出入りするのは問題なのです」
「分かりましたルナ様。この後、サンダース様のところに行って、『トロント』への入国許可をもらってきますね」
「はいスズキ様、宜しくお願い致します。それとその・・たくさんお願いしてしまって、申し訳無いのですが・・」
「一郎、お昼は一度ルナお姉様とこの子たち連れて王宮行きたいの。シャルル女王陛下に合わせに行かないとなの」
「はいはい、聖女のメンツを保つのも大変ですよね・・そんなに居づらかったんですか、王宮で暮らすの?」
「スズキ様、お母様がいらっしゃった時は、一緒に行動しておりましたので何とも・・でも今は・・」
「一郎、お母様赤ちゃん生まれても、しばらく『病院』でしょ?私とルナお姉様だけじゃあ、帰りづらいんだよ~」
「なに家出少女みたいな事言ってるんですかお2人とも。こんなヒューマンの子2人もいるんですから、堂々と王宮に凱旋すれば・・夜中に空飛ぶ馬に戻っちゃうんでしたね・・はぁ~もうお2人の好きにして下さいよ」
「本当ですかスズキ様」
「やった一郎、ありがとう。あのねあのね、とりあえず学院朝終わったらね、王宮行って、夜はまたお泊りするの」
「最後になんですって?」
「お泊りするって言った」
「今夜も?お姉様も?」
「そだよ」
「嫌ですって」
「好きにして良いってさっき言った」
「・・ギルド長の許可、ちゃんとお2人がもらって下さいよ。僕は知りませんからね」
「(2人)はい」
朝ご飯を済ませて、台所で食器の片づけを開始する。
用意した『タマゴサンド』と『小倉サンド』、それに『コーンポタージュ』もかなりの量を作ったのだが、すべて4人の胃袋に消えて行ってしまった。
余ったら『兵式飯盒』に保存しておこうとさえ思っていたが、逆に食材が今朝とお弁当分ですべて吹き飛んでしまった。
もうギルドへ出かけるので、『ユニ』と『ペガ』に『兵式飯盒』を1つずつ持たせる事にする。
中には先ほどお弁当用に用意した、『タマゴサンド』と『小倉サンド』、それに水筒も持たせる。
『裁縫』スキルで作ったのだろう、2人ともお母さんから手さげバックにお弁当を入れて喜んでいる。
特に教材も無い謎の学校、エルミタージュ学院。
パパもママもまだ学生なのだが、二聖獣を『小学校』へ連れていくため、ギルド会館を目指し出発。
5人と妖精でマンションの玄関を出ると、眩しい朝日が目に飛び込んでくる。
「わ~お父様、『ユニ』ちょっとだけお外見えるよ。街がとても綺麗だよ」
「こら『ユニ』。防護柵があるからって、ここ10階なんだから、あんまり身を乗り出したら危ないぞ」
「はいお父様」
「スズキ様・・本当のお父様のようなのです」
「なに言ってんですかルナお母様。そりゃ僕、パパ15年もやってましたから当然ですよ、当然」
「一郎、あんまり調子に乗ってると、あの子みたいに近寄らなくなっていくわよ」
「怖い事言わないで下さいよ美馬さん。せっかく僕、人生やり直してる最中なんですから」
「ふ~ん・・あんたがね・・。一体誰とやり直すつもりなのよ?」
「まずは自分自身とですって。美馬さん巻き込んじゃったら、また前世の二の舞になるじゃないですか?借金地獄だった前世の結婚生活もあれですし、僕はこちらではしばらく仕事に集中するんですって」
「一郎あんたね、何私との結婚生活疲れ果てたみたいな事言ってんのよ!それにもうすでに巻き込まれちゃってるんですけど?この子たちまで産まれちゃって、責任取れって言ってるの!」
「またまた~『聖獣』はノーカウントでお願いしますって」
「何がノーカウントよ!さっさと認知しなさいよ、認知を!」
「ママ、認知ってなに?」
「ええ!?えっと・・その・・」
「ほら美馬さん、余計な事言ったら『ペガ』たちが勘違いしちゃいますって。そういうのは『悪徳令嬢物』だけでお願いしますよ。『ペガ』、認知って言うのは、パパのような物忘れの激しいおじさんの事だよ。最近40代でも若年性認知症って増えてるみたいで、パパも最近物忘れ激しくて、昨日の晩御飯も何食べたか覚えて無いんだよ」
「スズキ様、それでは何も伝わらないのです。スズキ様が忘れやすいのは、病気のせいでは無いのではありませんか?」
「ねえお母様、『悪徳令嬢物』ってなに?」
「ええ!?こらスズキ様!『ユニコーン』ちゃんに変な言葉を教えないで欲しいのです!『ユニ』ちゃん、お父さんのおっしゃる事は聞いてはいけないのです」
「ひどいですよルナお母様」
「お母様が余計なのです!学院では絶対にその呼び方でお話されないようにして下さいまし!」
「そうだよ一郎。まだあんたと結婚なんかして無いんだからね?ジャンヌ恥ずかしいんだから、ちゃんと黙っててよね」
雑談をしながら10階のエレベーターホールに向かっていると、突然『1006号室』に住んでいるマリーゴールドさんの家のドアが開く。
「(ガチャ)あら、副長。おはようございます・・あらあら~まあ~オルレアンの聖女様じゃないですか~仲がよろしい事~」
「スズキ様・・わたくしの事を知っていらっしゃるようなのです・・」
「ちょっと一郎、もう私たちの事バレてるみたいだよ。なんとか上手く言ってよね・・」
「おはようございますマリーゴールドさん。それにマーガレットちゃんも。これから『小学校』ですか?」
「はい副長。そちらのお子さんは・・あらあら~まあ~仲が本当によろしい事~」
「ええ、僕と彼女たちの子供で(ムググッ!)うぐっ!?」
「ちょっとスズキ様!直接過ぎるのです!もっと他に言い方は無いのですかあなたは!」
「そうだよ一郎!私とあんたの子供だって、それじゃあすぐ分かっちゃうでしょうが!」
「あらあら~」
「むぐぐっ(バッ!)はぁ~はぁ~朝から命の危険が・・そうだ。マリーゴールドさん、こっちが『ユニ』で、こっちが『ペガ』って言います。ほら、『ユニ』に『ペガ』、ちゃんとマリーゴールドさんにご挨拶しなさい」
「はいお父様。『ユニ』です」
「『ペガ』です」
「まあ、礼儀正しい坊や達だ事・・うふふ・・なんだかお姉さん、ムチで叩きたくなってきちゃう」
「(2人)ぱぱ~怖いよ~(ササッ)」
「ちょっとマリーゴールドさん、僕の子供、調教しないで下さいよ。競走馬じゃ無いんですからね?」
「うふふ、冗談ですよ副長」
「あんた・・本気だったでしょ?・・そういえばマリーゴールドさん、昨日のしもべ達は朝7時集合とか言ってましたよね?」
「そうなんです副長。仕事もありますから、マーガレットを先に『小学校』に預けておこうと思いまして」
「仕事とプライベートのギャップが激しすぎますねあなた・・ああ、そうそう。マーガレットちゃんと一緒に、『ユニ』と『ペガ』も今日から『小学校』に預けようと思ってまして」
「あらあら、マーガレット。副長の大事なお子さんたちです、仲良くなさい」
「はいお母様」
マリーゴールドさんの一人娘、マーガレットちゃんと、うちの子の2人『ユニ』と『ペガ』が自己紹介し合っている。
10階のエレベーターホールで話をしていると、マリーゴールド家が住む『1006号室』の隣の『1007号室』のドアが開く。
ここは『ベネチア』から引き抜いた時に家族も一緒に連れて来た、『ダリア』さん一家が暮らす部屋だ。娘のグランブルーちゃんも一緒に、ダリアさんが2名で出てきた。
「あら副長、おはようございます」
「おはようございますダリアさん」
「まあ・・まあまあ・・」
「ああ、えっと・・こちらは聖女のルナ様とジャンヌ様」
「お初にお目にかかります。ルナと申します」
「ジャンヌです。主人がいつもお世話になっております」
「主人!?副長が!?」
「あっ」
「ちょっとマミ、あなた日本の自宅マンションにいるって、今完全に勘違いしたでしょ?」
「(かぁ~)マミ言うな、マミ!自分の家から出て来ちゃったから、完全に勘違いしちゃったじゃないのよ!」
「まあまあ落ち着いて美馬さん、ど~ど~」
「私は馬じゃ無いのよ!」
「副長、私もご挨拶を。『ベネチア』から参りましたダリアと申します。ギルドでは副長の部下として働かせていただいております。さあグランブルー、ご挨拶なさい」
「グランブルーです。お母さんがいつもお世話になっております」
「礼儀正しい良い子ですね、さすがダリアさんの娘さん。ほら『ユニ』、『ペガ』もご挨拶」
「『ユニ』です」
「『ペガ』です」
「こっちの『ユニ』が僕とルナ様の子供で、こっちの『ペガ』が僕とジャンヌ様の子供・・(ググッ!)むぐぅ!?」
「スズキ様はいつもいつも!その紹介の仕方が直接過ぎるのです!恥ずかしいって言ってるのです!」
「そうだよ一郎、私たちの子供って完全にバレちゃうでしょ!」
「あら」
「まあ」
「あっ、副長だ!リンダ、エミリー、なんか副長が聖女様たちと子供と一緒にいるよ~」
「げっ!サリーさん・・夜勤だったリンダさんまで、どうしてみんなここに・・」
「スズキ様、この方たちは一体・・」
「はは、ルナ様。ここの10階フロア、社宅も兼ねてるんで、僕の5エルフの部下全員いるんですよ」
「ちょっと一郎、あんた今日の夜覚えてなさいよ」
『ギルド会館第二タワー』10階には10室の部屋がある。
『1010号室』のサリーさん、『1009号室』のリンダさん、『1008号室』のエミリーさんたちと、出勤途中に全員と出くわしてしまう。
結局全部バレてしまい、ルナお母様とジャンヌお母様が大変にご立腹されたのは、言うまでも無い。




