167.人生のやり直し
聖獣『ユニコーン』と『ペガサス』が、浴室で二聖女に石鹸の『シャボン』で浄化されている。
台所で料理に使ったお皿とコップを洗い終わってひと段落する自分。
先ほどニンジンを蒸かしている間に作ったポテトチップは、魔法瓶の魔法の保存機能を持つ『兵式飯盒』の2つ分に収めて『アイテムボックス』に格納してある。
『アイテムボックス』から大衆浴場『ウインダム』で補充しておいた『コーヒー牛乳』や『レモン牛乳』を取り出し、同じく『兵式飯盒』に入れてみる事にする。
もしこの実験が成功したら、ダンジョンや戦時中の保存食として、あらかじめ食事を作っておいて『兵式飯盒』に収まるだけ収納しておけば、しばらくは食事に困らなくなるだろう。
食べきれないにせよ、後の闇の黒装束との戦いに備えて、今度多めにお米を炊いて、いくつかは『アイテムボックス』に収納しておいて間違いないだろう。
余ったら普通にお昼の弁当として食べる事も可能、これは本当に便利なアイテムだ。
しばらくすると、浴室の方から妖精『カーバンクル』と、聖獣『ユニコーン』、『ペガサス』が飛んでやってくる。
ピカピカの体になった2頭の天馬、
どうやらお風呂のシャボンでピカピカに綺麗になったようだ。
「(バッサ バッサ)ひひ~ん。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
「(バッサ バッサ)ぶるる。ぱぱ、たらこ、ぱぱ、やらしい」
「『ペガ』だけ何だかおかしいぞ・・(ズシッ)重い・・ニンジン食べて、2頭とも太ったのか?」
「マスター、私もお風呂いただきました。とっても良いお湯加減でした」
「え?妖精もお風呂入るの?」
「はい、もちろんでございます。どうなさいましたマスター」
「今度ぜひ・・」
「ちょっとスズキ様、今妖精様に何をお話されようとされていましたか?」
「そうだよ一郎、あんたまたやらしい事言おうとしてたでしょ?聞いてたんだからね」
「2人とも・・天使様ですね・・」
「え?」
「恥ずかしいからマジマジ見ないでよ」
お風呂に入るまで神官姿だったルナ様、修道服を着たシスタージャンヌ様はお着替えして、白い絹の服を身に纏う天使になっていた。
肩出しの白一色の服に、金色の風呂上がりの髪が肩を隠す。
ジャンヌ様も、普段髪を止めているリボンをほどき、可愛い女の子に変身してしまった。
今日1日修道服を着て、頭の髪の毛が隠れていたジャンヌ様も新鮮に見える。
「ああ、ごめんなさい。あんまり可愛かったんで見とれてましたよ、はは。僕もお風呂いただいてきますね。はい、この子たち返します」
「ちょっとスズキ様」
「なによそれ~」
『ユニコーン』と『ペガサス』を両肩から降ろしてそれぞれのお母さんへ渡し、1人浴室へ向かう。
浴室には洗濯機があり、小型だが上限20キロのドラム型洗濯機が配置されている。
そういえば2人に洗濯の事話すのを忘れていた。
洗濯機の中に、サービスと思われる洗濯ネットがいくつか入っていたので、1つを取り出して服を中に入れる。
お風呂場のドアを開けて、風呂に1人で入る。
シャワーも付いており、こちらで『シャボン』と呼ばれる石鹸はオルレアン市場でも手に入れる事が出来る。
公衆衛生の基本はお風呂、大衆浴場『ウインダム』でも置かれ、平民にも安価に手に入る石鹸の存在は、オルレアンの公衆衛生の高さを物語る。
それに引き換え、『ギルド本館第一タワー』10階のギルド長室の『ラウンジ』ときたらやたら酒臭い限り。
清潔なルナ様が、愛するお父様をわずか1日で見限ったのもうなずける。
年代物のお酒が並んだ部屋、あそこは男の世界。
男のロマンは、女の子には分からないだろう。
お風呂を上がって浴室で着替える。
『アイテムボックス』に着替え用の農民服が入っているので、来ていた農民服と着替える。
鏡を見るまでも無い、まったく同じ服をあと2・3着は常備している。
ここから無属性専用法衣『インフィニティ』を羽織れば、馬子にも衣裳、天下のオルレアンの副ギルド長に大変身。
天馬の鳴き声が遠くからこちらへ近づいてくる。
「(バッサ バッサ)ひひ~ん。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
「(バッサ バッサ)ぶるる。ぱぱ、たらこ、ぱぱ、やらしい」
「『ユニコーン』ちゃん、そっちはスズキ様がお着替えしているのです」
「はは、ルナ様。もう着替え終わりましたんで(ズシッ)肩が重い・・お2人も洗濯していきますか?僕の家電3種の神器、今から夜間モードで静音運転しますけど」
「スズキ様、家電3種の神器とはどういう意味でしょうか?」
「一郎、それじゃあルナお姉様に伝わらないでしょうが。いい加減その古いネタ言って、わたしにしか伝わらない表現使う癖やめなさいよね」
「またまた美馬さん、分かってるくせに」
「はいはい、それで洗濯機使う訳ね。そもそも動くのこれ?」
「50ヘルツの冷蔵庫が万事稼働してますんで、雷の結晶石で洗濯機もいけると思いますよ。さすが日本製、この木なんの木スズキの木ですよ」
「意味分かんないわよそれ。じゃあお部屋に戻しといた私の修道服と下着も持ってくるから・・あんたの農民服と一緒に洗うの嫌なんですけど。洗濯機の中で混ざるし」
「ああ、それなら(パカッ)ほら、洗濯ネット付いてたんですよ。服王宮にそのまま持って帰ります?」
「そっちの方がもっと嫌よ。ルナ姉、一緒に洗おうよ」
「はい、よろしいのですかスズキ様?」
「はい、2人の分の洗濯ネットです。動くかどうか分かりませんけど、とりあえず試してみましょう」
2人に空の洗濯ネットを渡すと、それぞれ自分たちの部屋に戻り、今日1日来ていた服を洗濯ネットに入れて持ってくる。
ドラム式洗濯機に、洗濯ネットに入れた服の塊が3つ入れる。
「さて・・水は・・」
「ちょっと一郎、ホースどうする?」
「美馬さん・・ああ、水の結晶石、ちょっと『精錬』して・・はい、給水繋がりました」
「あんた家電量販店の方が再就職向いてるわよ・・電源は?」
「雷の結晶石・・ああ、コンセント・・はい、『精錬』・・どうですかね?」
「(カチャ)入っちゃったわよ・・いけそう?」
「スズキ様、ジャンヌ、『シャボン』がまだなのです」
「ルナ姉の言う通りよ。あんた水だけで回す気?」
「こちらが水のタイプの『シャボン』なのです、わたくしの使っているものをどうぞ」
「ルナ様、ありがとうございます・・石鹸タイプ以外にも、液状タイプなんてあったんですね・・」
「スズキ様、こちらは王宮用に特別に・・市場には出回っておりませんので・・」
「美馬さん、全自動の投入口ありますけど、手動で『シャボン』入れた方が良いですかね?」
「私に聞かれても分かんないわよ・・入れる?」
「じゃあやってみます、ダメなら別の方法を・・ああ、ボタン・・えっと・・」
「ここでしょ?・・ほら、やっぱり・・」
「えっと次は・・すすぎは1回ですかね?」
「馬鹿でしょあんた、日本のアタックじゃ無いんだからね?」
「じゃあ念のため2回に・・」
3人であれこれ相談しながら、給水用と排水用のホースを水の結晶石につなぎ、電源を雷の結晶石にセット。
液状タイプの『シャボン』をルナ様から借り、洗剤投入用の口にとりあえず流し込んでみる。
オルレアン史上初、家電3種の神器、洗濯機のスタートボタンを3人一緒に押してみる事にする。
「(3人)せ~の」
(ピコッ・・ブゥゥ~ン ザザ~ン~)
「(3人)おお~」
「(バッサ バッサ)ひひ~ん。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
「(バッサ バッサ)ぶるる。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
「(3人)おお~」
回る回る洗濯機が回る。
なぜだろう、自分の着ていた服が綺麗になっていく。
透明なケースから、洗濯機の中がグルグル回るのを3人でしばし見つめる。
これ、ずっと見ていられる。
「不思議なのです、ずっと見ていられるのです」
「わたしも~」
「僕も」
「(バッサ バッサ)ひひ~ん。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
「(バッサ バッサ)ぶるる。ぱぱ、ぐるぐる、ぱぱ、ぐるぐる」
『ユニコーン』と『ペガサス』もしばらく浴室の上空をメリーゴーランドのように旋回する。
しばらくして3人は我に返り、リビングまで戻ってくる。
リビングに戻るなり、上空を飛んでいた『ユニ』と『ペガ』が、力尽きたかのように羽を委縮させ、自分の両肩に舞い降りてきた。
「(フラフラ~)ぱぁぱぁ・・」
「(フラフラ~)ぱぁぱぁ・・」
「マスター、どうやらお眠の時間のようです」
「たしかにそうですね、もう『ユニ』も『ペガ』も目がうつろですよ」
「スズキ様、わたくし『アイテムボックス』に小さなカゴがあるのです。『西洋教会』の慰問の際に、小さな子供と遊ぶ時に使っているお人形を入れるカゴが2つ」
「ジャンヌも裁縫用のフカフカの羽生地の素材があるから、お姉ちゃんのカゴに敷いてベッドにしてあげよう」
「さすが女子ですね2人とも。そんな素材僕ありませんよ」
ルナ様がお人形用の小さなカゴを2つ『アイテムボックス』から取り出し、ジャンヌ様の出した羽生地のフカフカした素材を、2人のママが敷き詰めていく。
リビングの隣にある畳の部屋に移り、自分は今日2人が就寝する布団をタンスから出して畳の上に1つ布団を敷く。
布団の両脇に、左に『ユニコーン』のゆりかごを、右に『ペガサス』のゆりかごを畳の上に置く。
2人のママ、ルナ様が自分の肩から『ユニコーン』を抱いてゆりかごへそっと置く。
ジャンヌ様も『ペガサス』を抱いて、ゆっくりとゆりかごへ置く。子供たちはすぐに眠りについてしまった。
「ふふ、『ユニコーン』ちゃん、ずっと飛びっぱなしで疲れていたのです。お腹も一杯になって、すぐに眠ってしまいました」
「ルナお姉ちゃん、『ペガサス』ちゃんも寝ちゃったよ。凄く寝顔が可愛いよ」
「じゃあ2人とも、こっちの畳の部屋の仕切り閉めちゃいますね。こっちの部屋の結晶石の照明も消しますんで、2人は今日はこっちの畳の部屋で、『ユニ』と『ペガ』と一緒に寝て下さい」
「(2人)はい」
「マスター、私は『聖獣』様のお側におりますので、何か変化があればお伝えしますね」
「ありがとう『カーバンクル』、君は夜眠ったりするの?」
「いえ、妖精はヒューマンのように生身の体ではありませんので、眠る必要はありません」
「そうなんだ・・24時間働けるんだね君」
「はい?」
ヒューマンの体が24時間眠らずに過ごせたら、きっと24時間働かされる世の中になるに違いない。
『妖精界』を恐怖に感じつつ、子供たちを隣の部屋に寝かしつけ、聖女2人と中央にソファの置かれているリビングに戻る。
普段は畳の部屋の仕切りは開放してリビングと一体利用しているが、仕切りを占める事で部屋を1つ設ける事ができる。
突然ジャンヌ様がおねだりモードになり、こちらにしがみついてくる。
「ねえねえ一郎~(ガシッ)」
「ちょっと美馬さん、引っ付かないで下さいよ」
「美馬言うな、美馬。ポテチは?」
「まだ食べる気ですか?」
「さっき一杯作ってたでしょ?」
「覚えてられたんですか・・」
「あんたじゃ無いんだから、忘れるわけ無いでしょ!テレビは?」
「分かりました、分かりましたから離して下さいよ(パッ・・)では家電3種の神器のテレビをさっそく・・見れるかどうか、まだ試して無いんで」
「じゃあ見れないかも知れないって事!?本当に映るんでしょ、ね?」
「僕も初めてつけるんで分かんないですって。えっと雷の結晶石のコードにつないでっと・・(ブンッ!)ではリモコンを・・(ポチッ)あっ・・地上波はやっぱりダメみたいですね」
「はぁ~少し期待しちゃったじゃないのよ・・」
「スズキ様、その機械はどのような物なのでございますか?」
「ああルナ様。この画面に人や景色が動いて映るんですよ。今から映しますね」
「ちょっと一郎、地上波、今ダメって・・」
「試してみますね美馬さん。僕『アリゾナプライム』会員なんで。説明書に書いてあったんですけど、テレビ購入者限定でDVD作品が無料でダウンロードできるらしいんですよ。これならDVDプレーヤーが無くても、無線LANで日本から電波が飛んでくるみたいですね」
「ちょっと私にも何言ってるかさっぱり意味分かんないんですけど・・ここ日本じゃ無いんだからねあんた?電波がくるわけ無いでしょこのオルレアンに?」
「リモコンのこのアイコン・・(ポチ・・ビュン!)やっぱり『アリゾナプライム』会員のトップページですね・・」
「ちょっと一郎!なんで日本の『アリゾナプライム』会員のトップページ映るのよ!」
「まあまあ美馬さん落ち着いて、大きな声出しちゃうと『ペガ』たちが起きちゃいますって、どーどー・・あっ、美馬さん。どうもテレビは1日1回ですけど、DVD作品の好きなドラマや映画ダウンロードできるみたいですよ。試しに1つ押してみますね(ポチッ)」
「ちょっと馬鹿!セガールの映画『沈黙の聖戦』にしなさいよ馬鹿!」
「あっごめんなさい美馬さん、そうでしたそうでした。自宅にいる気満々だったんで、美馬さんのDVDコレクションそこの棚に全部あるものだとばっかり勘違いしちゃってましたよ」
「もう~馬鹿~。本当に1日1回なの?また明日も来ないといけなくなっちゃったじゃ無いのよ!」
「なんでそうなるんですか?今日1日だけって約束したじゃないですか~」
「ううーもういい!それで、何を押した・・馬鹿!『大雑把過ぎて誰にも伝わらないモノマネ選手権2020』選んでんじゃないわよ馬鹿馬鹿!」
「ジャンヌ、そんなにスズキ様を叱らないの。もう良いではありませんかそれで。先ほどスズキ様がお作りになったポテトチップが食べたいだけなのでしょ、あなたは?」
「さすがルナ様、妹のジャンヌ様の事分かってらっしゃる。美馬さん美馬さん、このアナホルズの2020年選手権、僕死んじゃったんでまだ見て無かったんですよ~さあさあ、ポテチとお飲み物持ってきますから。ルナ様は『レモン牛乳』でも良いですか?お風呂上がりの一杯もまた格別なんですよこれ」
「はい、おねがいします・・です」
「一郎、私の『イチゴ牛乳』は?」
「分かってますって美馬さん。(かつ かつ かつ ガチャ!・・)はい『イチゴ牛乳』です。ルナ様、『レモン牛乳』です、どうぞ」
「はいなのです!とても・・嬉しいのです・・」
「ちょっと一郎、なにルナお姉様と良い感じになってんのよ?顔がやらしいんですけど」
「はいはい、ごめんなさいって。さあ、座って座って。さあジャンヌ様、お待ちかねのポテチですよ、ポテチ。夜しっかり食べて、3人で太りながら見ましょうよ」
「太る・・(青ざめるルナ)」
「ちょっと一郎、ルナお姉様がポテチを恐れてるでしょうが?ルナお姉様、こいつのそばから離れて」
「ジャンヌ・・今日はあなたがスズキ様の左に。わたくしは・・右に座るのです」
「えっ?そんな大サービスの日なんですか今日?それなら明日も来ていただいて、明日の『アリゾナプライム』のダウンロードはセガールの『沈黙の聖戦』にしましょうかね?」
「本当、一郎!明日も来るよ!絶対!」
「ジャンヌ、お父様のお許し、まだいただいておりませんよ?」
「ううっ・・お姉ちゃんからも言ってよ~行きたいって言ってよ~」
「はいはいお2人とも始めますよ。たしかサンダース様とは今日だけの約束なんですから。僕は明日、映画『聖女のミサ、上から見るか下から見るか』、ポテチ食べながら1人で見るんですから、邪魔しないで下さいよ本当に」
「ちょっと一郎、セガール見たいよ~(ギュギュ!)」
「ジャンヌは引っ付き過ぎなのです。スズキ様から離れるのです」
「はいはい、もう見ますね(ポチッ)」
(パパパパ~ン パ~ン パ~ン)
(「それでは次の挑戦者です、どうぞ!」)
(パッパッパッパッパッ~)
(「いらっしゃいませが、エアロスミスに聞こえる、葛飾駅前のコンビニの店員・・えあろすみす~」)
「(3人)あははは」
『ギルド会館第二タワー』10階自宅マンションで、聖女姉妹とのはじめてのお泊りの時間が過ぎていく。
2時間半の爆笑タイムに、3人のポテチの食べるペースも進む。
夜のとばりがすっかり落ち、『アリゾナプライム』の番組も終了。
3人で歯磨きを終わらせて、ルナ様とジャンヌ様には先に『ユニ』と『ペガ』の部屋で寝るように言うと、2人から声がかかる。
「スズキ様はまだ休まれないのですか?」
「今日ギルドの5名の部下がまとめてくれた報告書に目を通しておきたいんです。明日の朝には指示を出しておけば、『ギルド本館第一タワー』の『病院』や『小学校』フロアの充実につながりますんで」
「ねえねえ一郎、『ネバーランド』は?」
「美馬さん、明日にはエルミタージュ学院で『ネバーランド』のアルバイトも募集を開始します。明後日の火曜日には開園する予定ですよ」
「凄い、行きたい!私も誘ってよ」
「まず『キャスト』の社員教育しないと、ジェットコースターも動かせませんって美馬さん」
「そんな計画全部、一郎が1人でやるの?」
「はい、外政は副ギルド長のセバスさん。オルレアンの内政は僕が全部担当します」
「そんなの全部1人でやるの大変だよ一郎」
「そうなのですスズキ様。わたくしたちにも、何か出来る事があればお手伝いさせて欲しいのです」
「ルナお姉様の言う通りだよ。何かあったら私たちにお話してね?」
「ありがとうございますお2人とも。今後は王宮のシャルル=ドゴール女王陛下や、『西洋教会』へはアイリスを通じて交渉しないといけない事が山のようにありますから、その時にお2人にはお力になってもらいますね」
「はいスズキ様、なんなりと申して下さいまし」
「ちゃんと言ってよね一郎。私も力になるから」
「はい、頼りにしてますお2人とも」
「ジャンヌ・・」
「ルナお姉様・・」
「どうされました、お2人とも・・(チュ)え?」
「スズキ様、あまりご無理をされないように。お早くお休み下さい」
「今日のお礼なんだから、勘違いしないでよね。それと・・無理しないでね。お休み」
「ああ、ええ・・お休みなさい」
聖女2人から、ほほにお礼のキスをもらう。
2人はこちらに手を振りながら、『ユニコーン』と『ペガサス』が待つリビングの隣の畳の部屋の仕切りを閉める。
リビングの結晶石の照明を、ソファのあたりだけ照らす小さな電球色に付け直し、畳の部屋に明かりが漏れないようにする。
ソファに横になりながら、仰向けに、片手に5エルフの報告書に目を通す。
今後の『ギルド本館第一タワー』の運用方針、エルミタージュ敷地内の『ネバーランドリゾート』の運用、金を集めいずれは『大陸間横断鉄道』を実現する。
特に当面の資金源としてあてにしている『オルレアンネバーランドリゾート』。
『大蔵省』担当のリンダさんと、『経済産業省』のマリーゴールドの報告書によれば、見込み収益にかなりの期待が持てそうだ。
この収益を原資に、前世日本に存在した福利厚生施設の充実から着手したい。
『風の結晶石』や『水の結晶石』の存在で、実質上下水道のライフラインは不要。
さらに『雷の結晶石』と『火の結晶石』により、送電線とガスのパイプラインまで不要の魔法の国オルレアン。
すでに機能している既存のライフラインはそのまま使用し、学校や病院、果ては警察、消防といった貧困層を社会的に保護し、教育を通じて平民層まで生活水準を引き上げるのが、当面のギルドの課題になりそうだ。
強大な軍事力を高め、『ヘルヘイム帝国』に対して『四国同盟』をまとめながら対峙し、いずれは『闇のクリスタル』を封印する・・。
まるでおとぎ話の中にいるようなこの時間・・報告書はすべて目を通した・・段々と眠たくなってくる。
いつしか馬小屋の草のベッドで目を覚ます頃から思っていた。
目を覚ますと、そこが日本ならどれだけ良かったか。
ただ・・日本で目が覚めたところで、マミはおろか、あの子と3人の幸せな日々が戻ってくる保障はどこにも無い。
それが叶わない夢ならば・・もう一度、このオルレアンで自分は・・人生をもう一度やり直せるのかも知れない。
それが、実際に転生したマミがいるこのオルレアンにおいて、自分は一体どんな人生をやり直したいのだろうか・・。
今は仕事の事で頭が一杯になり、その結論に達する事無く、意識が夢の中へと、消えていくのだった。




