表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/301

99.第4章最終話 ズーポロプ

 宿屋の201号室から飛び出し、隠れる場所を探して宿屋の裏手にある馬小屋に逃げ込む。


「(ひひ~ん)」

「(ぶるる)」


 馬たちの姿が目に入らない。奥のブースの干し草の(かたまり)まで走り込むと、夕日を浴びて大きく伸びる人影が1つ現れる。


(かつ かつ かつ)


人の歩いてくる音が聞こえる。


「逃げないでよ、一郎」

「ジャ、ジャンヌ。ふざけるなよ」

「一郎君、前にも私たち・・こんな感じで2人っきりになったよね・・」

「こんな感じって・・」


「あの時も、会社で一緒だったでしょ?」

「会社!?」

「ふふ」


 なんでオルレアンのヒューマンのジャンヌが、会社なんて単語使うんだよ・・確かに心当たりはある・・そう、あれは・・マミが、()()()お見合いがあった日曜日の次の日の・・月曜日。

 マミも元は会社の同僚だったから、彼女とは一緒に働いてた女の子だった。最初に就職した会社で、月曜日に残業してて・・コピー用紙切れたから・・倉庫に、コピー用紙取りに行った時・・・。


「・・そんなわけない・・お前が・・お前が、嘘だ!」

「一郎君・・私たち・・夫婦だったでしょ?」

「なんで・・」


「結婚記念日・・私、ずっと夜、待ってたんだよ?・・寂しかった・・一郎君・・全然帰ってこないんだもん・・」

「なんでそれを・・」


 結婚記念日・・残業で帰りが遅れちゃって・・それは、マミしか知らないはずの出来事。


「あの子にちゃんと『レモン牛乳』買ってくれてた?朝は毎日、あの子あれしか飲まないから、買い忘れてたりしてないでしょうね?」

「嘘だ・・嘘だ・・」

「こらあんた!やっぱり買い忘れてたでしょ!」


「オルレアンにいるジャンヌが、なんであの子の事知ってる?なんで『レモン牛乳』知ってる?」

「・・それが答えよ」

「・・・う、嘘だ・・」


 (こし)()ける。上半身だけ起こし、近づいてくる制服姿のジャンヌが、自分の方へ笑顔で近づきしゃがみ込むと、手に持つ金色のギルドカードを見せてくる。


「この毎月振込まれてくる金貨3枚・・ふふ、律儀(りちぎ)に約束守ってきたの、ずっと知ってたの」

「金貨3枚!?毎月・・たまたまだろ!」

「・・・私がプロポーズした時と同じ格好(かっこう)ね、私達。ビックリしたその顔、大分(だいぶん)若いけど・・本当にあなた、一郎なんだね」

「なっ・・なっ・・」


「アイリスお母様とルナお姉様、2人は()き腕どっちよ?この前の食事会、どっちのお手てで食べてた?」

「右手・・はっ」


「ふふ、じゃあ私は?」

「(ごくりっ)ひ、左手・・・」


「そこで気づかなかった?」

「・・・」

「・・本当、鈍感(どんかん)


 (こし)()けて、逃げ出したいのに両手しか動かない、腰から下が動かない・・。両手を()わせて、体を後ろへ、自然と体が、逃げていく。

 ジャンヌは両手を地面について、逃げる距離と同じ分四つん這い(よつんばい)でこちらに迫ってくる。


「マイナンバーカードは作らないし、役所にも行かないし」

「ああ・・なんでそれ・・」


「遊園地は入場券も買い忘れるし、ジェットコースターも怖がって乗らないし」

「嘘だ・・うそ・・」


「・・ねえ、一郎?」

「なっ・・・なに?(ごくりっ)」


 ジャンヌが人差し指を出して、自分の(あご)の下をつんと突き上げる。満面の笑みのジャンヌの顔が・・マミそっくりのその顔が眼前(がんぜん)に迫る。


「一郎、私がプロポーズした時、なんて言ったか覚えてる?」

「(ごくりっ)お・・覚えてる・・日曜の次の・・月曜・・会社で・・あの日の事は、今でも・・はっきりと」


「ふふ、いい子。(おこ)らないから言ってみて?」

「(ごくりっ)・・・マ、『真美(まみ)』が・・自分の名前・・あんまり・・子供の頃から・・好きに・・なれなくて・・」


「ふふ、うんうん、そうそう・・それでそれで?」

「(ごくりっ)・・・お、お前・・旧姓が・・『美馬(みま)』だから・・」


「ふふふ、うん、いい子・・それで?」

「(ごくりっ)・・・名前が・・『美馬真美(みままみ)』だから・・名前が・・好きに・・」


「はい、よくできました。それで私、こう言ったんだよね?」

「そ、それを言うなジャンヌ!」


「ふふふ・・ねえ鈴木君、お願いがあるの」

「言うな・・言うな・・」


「私にも・・鈴木君の名字(みょうじ)・・一緒に・・使わせて欲しいの」

「言うな・・いう・・」


「ねえ鈴木君、一緒に・・私と・・結婚(けっこん)しない?」

「ジャンヌ・・・真美(まみ)・・・」


「ねえお願い・・ス・ズ・キ・くん?」


「はぁ・・はぁ・・」


「(かつ かつ)あら、こんなところで何してるの2人とも?」


「あっ、ミューラ先生!」


 ミューラが夕日の差し込む馬小屋に現れるや、ジャンヌが体を起こしてミューラに()けよる。


「さっき一瞬やらしいオーラがすると思ったら、やっぱりスズキ君だったのね。ジャンヌ様、大丈夫ですか?」

「ミューラ先生~あいつがね、あいつがね、やらしい事しようとしたの」

「まあ!ちょっとスズキ君!一体なに・・を・・スズキ君?どうしたのスズキ君?」


 腰を抜かし、放心状態(ほうしんじょうたい)になる自分にミューラが声をかけているようだが。


「スズキ君、気分が悪いの?大丈夫?」

「はぁ・・はぁ・・」


 ミューラが近くに寄って話しかけてくれる。


「ちょっとジャンヌ様、スズキ君いじめたりしてないですよね?」

「え~私なにもしてないもん~」

「スズキ君、大丈夫スズキ君?」


 ミューラの優しく話しかけるその声は・・自分の耳に・・届いては来なかった。


第4章 <復活する光と闇> ~完~


【第4章 登場人物】


《主人公 スズキイチロウ》『水属性』。オルレアン連合ギルド所属銀等級冒険者。『2重上位昇進』スキルで異世界を駆け抜ける。


《マミフレナ=アイリス=ダルク》

『光属性』を持つ聖女の1人。『光のクリスタル』の使徒。石化から復活。エルミタージュ85期生にして、主人公の同級生。


《マミフレナ=ルナ=ダルク》

『光属性』『水属性』を持つ聖女の1人。『水のクリスタル』の使徒。性格は母似、草食系、思春期。主人公の嫁にそっくり。双子姉妹の長女。


《マミフレナ=ジャンヌ=ダルク》

『光属性』『風属性』を持つ聖女の1人。性格は父似、肉食系、パパ大好き。主人公の嫁にそっくり。双子姉妹の次女。


《ジャック=ハート》

『雷属性』の騎士。『トロント』王国、ケンブリッジ王立学院からの留学生にしてハート家伯爵。聖女ルナの許嫁。ライン=ハートの兄。


《ライン=ハート》

『雷属性』の騎士。『トロント』王国、ケンブリッジ王立学院からの留学生にしてハート家伯爵。聖女ジャンヌの許嫁。ジャック=ハートの弟。


《シャルル=ドゴール女王陛下》

オルレアン王国女王にして、シャルル7世襲名。絶対的な権力を持ちながら卓越した統治により、オルレアン全国民・兵士より絶大な信用を得ている。


《ジェフ=ジョン》

『水属性』のブロンズ冒険者にしてエルミタージュ学院100期生。ルナ様親衛隊『月の雫』のメンバー。


《クラウド=エリス》

『水属性』のブロンズ冒険者にしてエルミタージュ学院100期生。ルナ様親衛隊『月の雫』のメンバーにして、85期生クラウドの実娘。


《クラウド》

『火属性』の戦士。『炎の鎧』『炎の盾』を持つ。エルミタージュ学院85期の卒業生にして、主人公の同級生。エリスのパパ。


《ミューラ》

『火属性』のエルフ。『火のクリスタル』の使徒。王立学院エルミタージュの教師にして、オルレアン連合ギルド所属の銀等級冒険者。主人公の第1村人。心優しきエルフ。


《ガイア》

『土属性』のドワーフ。『土のクリスタル』の使徒。銀等級冒険者。主人公の師匠。スキル『高等精錬』の使い手。


《サンダース》

『雷属性』オルレアン連合ギルド長にして、金等級冒険者の武闘家。通称「セガール」、聖女双子姉妹のパパ。


《セバス》

『火属性』のエルフ。オルレアン連合副ギルド長にして、ミューラの実兄。独特の話し方が特徴。


《アクア=マリン王女》

死別した両親の第一王女にして王位継承権第一順位の立場。『ベネチア』のトップ。


《キグナス将軍》

『ベネチア』王宮兵士団の将軍。アクア王女の両親にも仕えていた老兵。ダルク家の過去を知る人物。


《サラ》

『水属性』のエルフ。ミューラによく似た青色の髪のエルフ。


《サム国王》

『マドリード』王国国王。サム7世を襲名。『ベネチア』とは長年の同盟関係。ある理由によりアクア王女に頭が上がらない。


《奈落》

闇の黒装束リーダー格。性格は残忍。


《諸刃》

黒装束の影の1つ。


《刹那》

黒装束の影の1つ。その正体は・・。


《円華》

黒装束の影の1つ。大人の女性の艶美な声を発する謎の影。ゴブリンを瞬時に召還する謎の力を持つ。





【ご視聴の皆様へ】

ここまで読んでいただきありがとうございます。現在完結目指して執筆中。


「続きが気になる」「面白そう」「更新頑張って!」という方は応援よろしくお願いします。

・ブックマークに追加

・↓評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」をしていただくと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ