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蒟蒻を廃棄する話ではない話

蒟蒻を廃棄する話ではない話。小話10(ほらほら「ホラー」だよとホラを吹き、ほったらかしのほら穴があったら入りたい)

作者: たでんだた
掲載日:2020/07/26

「焼き肉冷凍ファーム営業中」

「蒟蒻を廃棄する話ではない話」

「蒟蒻を廃棄する話ではない話。小話1(砂糖漬け)」

「蒟蒻を廃棄する話ではない話。小話2以降」

この作品


の流れですが、この作品だけを読んでも雰囲気ホラーになるつもりで作成しました。

(せみ)の楽園、蝉の国。

ジジジジジと鳴く生きた蝉。

軽く、空っぽな蝉の脱け殻。

鳴き疲れ、命果てた蝉の死骸。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


三日前にも歩いた学園の中庭。

蝉の国を山手線(やまのてせん)の電車が走る。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


蝉の鳴き声だけに満たされた世界に(とら)われて、わたくしはわたくしでなくなる。

この場にいる自分は果たして、ちゃんと生きて存在する人間なのか、空っぽなだけの体躯なのか、蝉なのか、蝉の脱け殻なのか、はたまた蝉の死骸なのか。


三日前の出来事が頭の中をループする。


蝉の脱け殻を見つけ、優しく優しく()まみ上げる。

嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き……。

蝉の脱け殻の脚を一本ずつ外した蝉占い。

三日前と違うのは、一本目を「嫌い」から始めたこと。

だって、もう答えは分かっている。

「嫌い」には出来ない。


中庭のシンボルマーク、大きな(くすのき)

楠の周りに蝉の死骸が落ちていた。

(あり)(むら)がり、解体し、運搬する。

既に失われた片方の羽。

空を飛ぶ蝉の死骸。

わたくしの肩に当たり、落下する。

クスクスと笑う、華やかな蝶々達。

脚六本を失い繭玉(まゆだま)になった蝉の脱け殻。

一番華やかな蝶々のもとに歩み寄る。

一番華やかな蝶々の手を取り、手の平に繭玉(まゆだま)を乗せてやる。

蝉の国を木霊(こだま)するのは(はかな)い蝶々の断末魔。

蝉の国に迷い込んだ蝶々達は散り散りになり霧散(むさん)する。

また(あり)が群がるだろう。


蝉の楽園、蝉の国。

ジジジジジ……と鳴く生きた蝉。

軽く、空っぽな蝉の脱け殻。

鳴き疲れ、命果てた蝉の死骸。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


(くすのき)が言う。ここで電車を降りなさい。

楠が言う。私は駅だと。


目を開ける。

キーン、コーン、カーン、コーン……キーン、コーン、カーン、コーン

昼休憩の終わりを告げるチャイムの音。

楠はただの楠になり、駅は消え、山手線も消えていた。


今この場にいるわたくしは人間。

ちゃんと生きて存在する人間。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 企画から参りました。 中庭から蝉の国へふと誘いこまれた主人公が、チャイムの音でまた元の世界へ戻ってきたような感覚を一緒に味わいました。 幼い子どものなかには、本当にこうした体験をする子もい…
[良い点]  面白かったんですけど、蝉の抜け殻や死骸に対する現実での忌避感が強かったせいか、逆にホラーとしては感じなかったです。  赤福の話(あれ? 濃すぎてタイトルが思い出せない)を読んだ後だったか…
2022/08/17 21:02 退会済み
管理
[良い点] 蝉、蝉の脱け殻、蟻、蝶々、楠、その一つ一つが合わさってゾワゾワした気分を味わいました。 ゾワゾワした気分のあと主人公が生きた人間としり、主人公の見ていた白昼夢の世界に引きずり込まれてい…
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