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第3話 捜索(2)

7時だとあまりPVが増えないので8時投稿に変更します。

 日曜日。

 土曜日まで授業のあるソラに合わせてミウを探しに行くという活動は日曜日に行うことになっていたのだ。


 一週間が7日というのが合理的かどうかは別として、コロニーでも日曜日は安息日として休日扱いだ。人はおいそれと、それまでの習慣を捨てることはできない。勿論、十進数に合わせて日付も管理しようという主張をする人もいるのだが、システムのベースであるOSでの曜日表記を七曜日で行っていることもあり、今更変えていくのは色々な面で「面倒」という、ごく合理的な理由で、実際に変更するまでの動きにはつながっていない。


「具体的にどこに行こうか」


 朝食を食べながらコウはソラに今日の方針を尋ねた。

 こういう点で企画力の無さは若い頃からは変わっていない。

 かつてネギ先輩にユキナとのデートプランを相談していたのと同様に、ミウの調査プランを娘に丸投げしていた。


「ライブ会場がいいと思うよ。一応、今日の出演予定は確認してあるよ」


 ソラは父親の期待にしっかりと応え、プランを練ってあった。


「ライブ会場か……」


 コロニーではライブ会場に足を運ばなくても室内で臨場感溢れるライブを観ることは簡単にできる。それでも人々は自分の推しのために会場まで足を運ぶのだ。魂の籠もった歌声を聴くには現場に行く必要がある。人々はそう主張していた。


「ライブ会場に行けば会えるかな?」

「さすがに会えるかどうかは解らないよ。出待ちをするか……無理矢理楽屋に押しかけるか。パパの権限でどうにかならない?」

「その権限が一切無いんだよ」

「アドミニストレーターだと何でも出来るわけじゃないんだ」


 娘ですらこの認識である。

 アドミニストレーターの職権に関してはコロニー社会で誤解されていることも多い。

 だが、人間に余計な権力を与える無意味さを人類はその歴史の中で学んできたのだ。アドミニストレーターはあくまでも管理を行うだけの職種であり、権力者では無い。


「パパたちが出来る事は少ないんだよ」

「そうなんだ……」


 説明をしても何をしているのか解って貰えない職種なのである。


「ところで、電子アイドルは楽屋にいるの?」


 コウは疑問に思ったことをソラに聞いてみる。

 魂をもたないオブジェクト。

 舞台裏での扱いは謎だ。


「知らない。でも行ってみるしかないんじゃない」

「それもそうだな。よし、行こう! ライブ会場に」

「あれ? パパ、何だか喜んでいない?」

「そ、そんなことはないよ。でもパパの青春時代は移行全盛期だったから、ライブとかそういったイベントをしらないまま、こっちにきちゃったんだよね。なので少し楽しみだということは否定しない」


 ユキナに出会っていなければ、現実世界での出会いすら諦めていた青年だったのだ。

 何もかもがそろっている電子世界とは大きく違う。


「ふーん……そういえばパパとママはどうやって出会ったの?」


 結婚してからの話はセリやネギ先輩からも沢山聞いていた。

 だが、コウとユキナのなれそめをきいた記憶は無い。


「千載一遇のチャンスに思い切って声をかけようとして諦めたら、ママから声をかけられた」

「ママから?」

「うん、向こうは単に落とし物を拾ったお礼を言いたかっただけだったんだけどね」


 コウとユキナの出会いはほんの偶然だったのだ。

 あの出会いがなければ、ソラはここにはいなかった。

 『世界の子』は違う子が選ばれ、違った形での終わりを迎えていたのかもしれない。


「ま、運命の出会いってやつだ」

「パパ、そのエフェクト、キモいって」


 コウは表情を隠すために、また目をハートに置き換えていた。


 ユキナとの出会い。

 その後に起こった事件の事や、最終的な業務棟倒壊にまつわる話をソラには詳しく説明していないのだ。ユキナは事故でこちらにこれなかったとしかソラには伝えていない。

 この世界には、あの時のテロリストの一部や協力者達も強制移行され、その後、隔離されている。

 犯罪行為が行えないコロニーでは、移行前の犯罪者についても一定期間隔離後にコロニー社会に戻ってくる。


 憎んでいないか?

 そう問われれば答えに窮する。


 自分の中にある、表に出したくは無いおぞましい黒い感情。だからこそ、ソラにはユキナとの出会いと別れについて話すことを躊躇っていたのだ。


 ***


『第30回電子アイドルフェス ~朝から踊り狂え 電子のオタク達よ~』


 会場の前に着いたコウとソラは会場の入口に掲げられているモニタに浮かぶ文字を見て苦笑いを浮かべていた。


「既視感がすごいな」

「うん。それもわりとつい最近……」


 ミウを捜索するという方向で動き出すと、どうやらここに行き着くらしい。


「あの日、仕事をサボっていたんだから、あのまま入ればよかったなぁ」

「私も学校をサボっていたんだから、そのまま……」

「いや、高校生がそれは駄目だろう」

「う……正論……」


 軽くソラを睨み付けるとコウは再び会場の入口をみつめ大きく唾を飲み込む。


「この奥に沢山のオタクが……」

「いやなら、中に入らなきゃいいんじゃない? 別にライブ自体を観る必要はないでしょ」


 ソラの言葉にコウは悲壮な表情を浮かべる。


「ここまで来て、ライブを観てはいけないの?」

「パパ、観たいんじゃん……やっぱりオタクなんじゃないの?」

「憧れが無いとは言わない」


 コウの世代では知る事のできなかった若者文化だ。

 思いのほか血がたぎっていた。


「わ、わかった。そこまで力説しなくてもいいよ。うん、じゃぁ、入ろうか」

「よし、行こう!」


(パパって、こんなキャラだったっけ……)


 そもそもの目的を少し忘れているような、これまで知らない父親の一面を見て戸惑うソラであった。

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