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第3話 捜索(1)

 その日の夕方。

 帰宅したコウはソラと一緒に夕食を済ませた。

 そして、何度か躊躇ったあとゆっくりとソラに話しかけた。


「ソラ……」

「何、パパ?」


 その雰囲気に何か重たさを感じ、ソラは背筋を伸ばした。


(学校をサボったことを改めて怒られるのかな)


 結局、昨日は有耶無耶なまま終わってしまっていた。

 ならんかのリソースに対するペナルティがあるのだろう。

 お小遣いが少ないなか、なかなか大変な話である。


「あの……ミウって子の事、もう少し詳しく教えてくれないかな」

「え? なんで……」


 身構えていたソラだったが、全く想定外の話に一瞬肩の力を抜いた。

 だが、すぐにその表情が強張る。


「ママと似ているから?」

「うん」


 自分が毎晩、ミウの動画に母の姿を重ねていることを棚に上げ、自分の父親が電子アイドルなんかを気にしていることに無性に腹が立ったソラは強めの口調でこう言った。


「あんなの作り物だよ? たまたま似ているだけだよ」


 その様子にコウはゆっくり首を振った。


「ソラも解っているよね。ミウとユキナはちょっと似ているというレベルの話じゃないということを」

「それはそうだけど……だったら余計に気持ち悪いじゃん。ママと同じ顔の電子アイドルなんて」

「うん、そうだね。ただの電子アイドルだったら気持ち悪いね」

「そうでしょ」

「でも、ただの電子アイドルじゃなかったら?」


 その言葉の意味が解らずソラは訝しげにコウを見た。


「……それはどういう意味?」

「ミウがママの可能性がある……かもしれない」

「そんなことあるわけないじゃん!」


 ソラはわけもわからず激昂した。

 椅子から立ち上がり目に涙を浮かべてコウに捲し立てた。


「今さら何を言っているの! ママは死んじゃったんだよ。こっちには来ていないんだよ! ミウがママのわけないじゃん」

「ソラ……」

「なに!」

「ユキナは死んでいないよ……まだ生きているかもしれないんだ」


 コウの強い視線にソラは怯む。

 それでも勢いのまま、ソラが子どもの頃から踏まないようにしていた地雷を踏み抜いた。


「……誰もママのことを見つけられなかったって。みんな知っているよ! もう地球には誰も

残っていないんだよ!」


 コウはもう一度ゆっくりと首を横に振った。


「ちがうんだ、ソラ。パパは……まだユキナがどこかで生きているんじゃ無いかって……まだ僕のことを待っているんじゃないかって……ずっとそう思っていたんだ」


(そうだ。僕はユキナのことが整理できていないんじゃない。まだ君が死んだということを、これっぽっちも納得なんてしていないんだ)


「でも、だからって電子アイドルがママだなんて、そんなこと、あるわけないでしょ」

「だから調べてみたいんだよ」

「調べる?」

「ミウがどんな人物なのか。どこにいけば会えるのか」

「電子アイドルだよ?」

「でも、この世界では会うことができる」


 魂を持たない電子アイドル。

 それでも、魂をデータ化しているこの世界では、電子アイドルも、まるで生きている人間のように会うこともできる。違いは魂があるか無いのかだけの話だ。


「だったら、パパのお仕事で調べればいいじゃん」

「もうやってみたよ」

「え?」

「でも、仕事と全く関係の無い電子アイドルに関するプロジェクトにアクセスすることはできないんだよ」


 権限が足りないのではない。

 電子アイドルを担当している機関はコウのようなアドミニストレーターとは全く職種が違い、コウが今後、どのような権限を持とうと電子アイドルプロジェクトに関する情報にアクセスすることはできない。


「だから、ソラたち高校生の間で噂になっているようなことを知りたいんだ」

「やだ!」

「ソラ!」


 ソラのいままでにない反応に思わず声を荒げてしまったコウ。

 その声に驚き、ソラは目に涙一杯浮かべたまま、自室に飛び込んでしまった。


(……失敗した)


 ソラを怒鳴るような話ではなかった。

 ただユキナにつながる情報を少しでも知りたかったのだ。


 地球とは違い、検索サイトは一元的に管理されている。

 公開されているような情報は簡単にアクセスし知る事ができる。

 それでもコウには見つける事ができなかったのだ。何らかの理由でコウに対してだけ秘匿されているのか、最初から公開している情報が無いのか、判別がつかなかった。だからこそ電子アイドルという分野でミウのことを詳しく知ってそうな現役の高校生であるソラに情報を求めたのである。


「でも……失敗したなぁ」


 反省しても後の祭りであった。


 一方、部屋へ飛び込んだソラはベッドの上でジタバタとしていた。

 思い返せばこれまで父親にまともに叱られた経験などほとんどなかったのである。

 いつも頼りなさげな笑みを優しく浮かべているのが、ソラが知るコウの姿だった


「パパ……ママに会いたいのかな」


 ソラ自身も会いたい。

 それでも、溢れてきそうになるその気持ちを必死に抑えていた。

 ミウは自分の母親では無い。

 その事は理解している。

 だけど、立体映像で配信される動画の中のミウはユキナと同一人物としか思えない。


「私も会いたいんだよね……うん……パパに謝らないと」


 そう一人で呟いたソラは、倒れ込んだばかりのベッドから立ち上がると、ドアを開けテーブルに突っ伏して頭を抱えているコウに声をかけた。


「パパ、ミウを一緒に探しに行こうか」

「え?」


 コウは驚いたように顔を上げた。


「私も本当はミウがママにしかみえないの。だから一緒に探しに行こう」

「探すって……パパは高校生の間で噂されているミウの情報を知りたかっただけなんだけど」

「検索しても、ほとんど何も出てこないんだ。あるのは動画だけ。だから探しに行こう」


 そういって微笑んだソラの顔に、コウはふとユキナの面影を重ねたのであった。


できるだけ毎朝投稿するようにはしたいのですが、ストックがなくなったことと、リアルの方が超多忙なので、少し不定期更新になるかもしれません。

続き早く読ませろ! という方がいたら是非、ブクマ、評価、感想、レビューあたりで私に発破をかけてやってください。

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