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第2話 バッドエンド(5)

「『世界の子』の移行が早まった? どういう事ですか?」


 リュウジは緊急で入った通信に、怒声を上げる。

 ボイスチェンジャーで声の音質を変えているため、相手が誰なのかをリュウジは知らないが、タムラがいた組織から引き継いだ大事な情報源だ。これまで入ってきた情報に嘘はなかった。


「クリアポイントでの混乱を避けるために、民間人の移行を全て前倒しにし、最後の二週間は職員、関係者のみとする事になった」

「なら、最後の二週間はオマケってことですね」

「どう考えるかは、こちらは感知しない。あとはそちらで考えなさい」


 (こちらの情報も漏れている? ……まだ、炙り出せていないスパイがいるのか?)


 いつの間にか切れていた通信は気にせず、リュウジは思考を深める。クリアポイントが早まったのは情報として公開されていた。そのため、リュウジ達も計画を前倒しするという事で、各組織と話を進めていたのだ。それがここにきて、更に二週間早まった。


(潜り込んでいた情報部の人間(ネズミ)は始末したはずだ。あれ以外にも内通者がいたという事か……だが……それなら……)


「なぁ! 今の話を聞いてましたよね」


 室内にいた仲間に声をかける。


「はい」

「『世界の子』をターゲットにするのは諦めます。まぁ、子供を巻き込むのは、こっちとしても本意じゃないしね。実行日は変更なしで。予定通りクリアポイントに合わせて一斉蜂起、移行施設を潰しましょう。世界の子はいないけど最終便の前です! そして最終便で行く予定の職員を全て集め、人質にして、西日本に乗り込みましょう!」


***


「情報来ました!」


 情報部長の元に、部下が駆け込んできた。


「どうなった」

「予定通り、クリアポイントでの武装蜂起だそうです」

「そうか……最低でも民間人への被害は極小化できそうだな」

「はい」

「局長のところへ行ってくる」


 情報部長はそう言い、自分の部屋を後にし、保安局長のミウラの元へ向かう。


 保安局長の部屋には、ちょうど執行部長のクギがミウラに報告をしている所だった。


「お疲れ様です」

「何かあったか?」


 クギがこちらをジロリとみながら、こう言った。


「先ほど、『ハピネス』に近い組織に潜り込ませた者から連絡がありました。やつらの決行日(D-Day)は、やはり予定通りにクリアポイントとするようです」

「そうか……」


 本来は情報部の部長の方が部長職としては先任であり、情報部の部長が敬語を使う必要もなく、また、クギの口調は褒められるべきものではないのだが、二人はそれを気にする様子も無い。


「局長、情報部の損耗が多すぎる」


 そのクギは、情報部の犠牲について気にしていたようだ。

 ハピネスの情報を得るために潜り込ませていた情報部員は、クギ達がモグラ叩きとして潜伏地を急襲するたびに、死体となって発見されていた。


「気を使ってくれてありがとう。だが、我々も、犠牲になった職員も、これが仕事だとして納得をしている」


 情報部長の言葉にクギは頷く。


「これ以上の犠牲は現場の士気にも関わります。これから『ハピネス』本体を押さえるのは控え、周辺組織を中心に潰すようにします」


 保安局長のミウラは、ハピネスへの直接的干渉を諦めた。

 クギも、この状況ではと、特に反対はしない。情報部員の事を慮っての事である。

 そして、その意図は情報部長にも伝わる。


「ありがとうございます。それでは一旦、ハピネス本体への捜査は控えます。その代わり……」


「内部調査に注力します。クギ部長の言うとおり、間違い無く情報が漏れています」


 すでに、どこからか情報が漏れているだろうというのが、クギと情報部の見解だった。さらに、クギは独自のネットワークを使い、情報部長に関しては白という判断をしている。このため、早期から協力体制を構築しており、現在は保安局長、警備部長を含め、オペレーションセンター内の幹部クラスを全て疑っている状況だ。


 だが、まだ尻尾はつかめていない。


 ならば、公式的には情報部の活動は控え、執行部の調査能力のみでテロ組織に対応をしていく。情報部員は、内部調査に注力し、情報の流出を最大限防止する。


 これがクギと、情報部長が決断した方針だった。


 『ハピネス』のリュウジ、『執行部』の白鬼クギ――


 クリアポイントを軸にした二人の読み合いが複雑に絡み合い、人類が見いだしたはずの「幸せ」を黒く染めていく。

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