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第4話 裏切り(1)

「シライ君! こっちに来なさい!」

「はい!」


 出勤した早々、コウは室長に呼び出された。

 普段とは違う、その口調の強さに慌てて、コウは室長の前に立つ。


「なんでしょう?」

「あなた、何をやらかしたの?」

「はぁ?」


 突然の室長の言葉に、コウは何も言えずにいたが、次の言葉でさらに絶句する。


「読むわね。


 『

 電子移行室 シニア・オペレーター コウ・シライ殿

 電子移行オペレーションセンター社従業員規則 第二十四条及び第三十一条に対する違反行為について、査問会にて調査を行う。本日、十四時に第一会議室へ出頭する事

 』


 この通達は、組織的な調査として正式なものになります」


「どういう事でしょうか?」

「シライ君に対して、懲罰査問会が開かれる事になった……という事よ」

「懲罰……査問会?」

「ええ、懲罰的な査問という事なので、あなたの受け答え如何によっては、最悪の場合、懲戒解雇の上、電子移行法違反で刑事罰もあり得るという事よ」

「な、なんでですかー!」


 コウの声が室内に鳴り響いた。


***


 コウが指定されたのは、オペレーションセンターの最上階にある第一会議室……普段は、役員だけが参加する会議を行う、特別な部屋だった。


(噂では聞いていたけど、ここって、お偉いさんしか入れない場所だよな……なんでこんな所で僕なんかを……)


 テーブルは楕円形に配置されており、入り口側の楕円の頂点側にコウは座るよう指示された。その横に上司である室長が座る。


「シライ君、本当に何もやっていないのよね?」

「はい……そのはずです……心当たりが無いです」

「よし、だったら堂々としていなさい。きちんと釈明して疑いを晴らすわよ」

「はぁ」


 そもそもコウには心当たりが無いため、どうにもテンションが低い。

 コウが室長と、そんな話をしていると反対側のドアが開き、ぞろぞろと5人の男性が入ってきた。


(あんな所に入口が……廊下は無いし……どこから入ってきたんだろう……えっ?)


「え、そんな……総長?」


 最初に入ってきたのは全国の電子移行オペレーションセンターを取り仕切る最高責任者ともいえる総長だった。そしてその後ろにコウが務めるオペレーションセンターのセンター長、事務局長、保安局長、それにコウが見たことが無い2人が並んでいる。本来、センター長が、コウの職場のトップのはずなのだが……総長といる事で威厳も半減している。


「室長、これ、やばく無いですか?」

「しっ! もう黙ってなさい。査問が始まるのよ」

「でも、なんで総長が……」


 思わず小声で室長に話し掛けてしまったコウだったが、室長に睨みつけられて仕方なく黙り込む。自分の職場のトップに当たる総長。コウにとってはメディアのニュースに登場する人物であり、間違っても自分ごときの小物の査問に当たるような人じゃない。

 そして、このオペレーションセンターのトップ3にあたるセンター長に事務局長、保安局長。当然、コウも彼らの顔だけは知っていた。その後ろの二人も確か、どこかの部署の部長だったような――


 すなわち、これから始まる懲罰査問会は、ただではすまない。コウはその事に思い至り、慄いていた。


「君が、シライ君だね」

「はい!」


 総長から声をかけられ、思わず立ち上がり答えてしまう。


「ああ、いい。そのまま座っていてくれ。事務局長」

「はい……それでは、これより電子移行室所属のシニア・オペレーター、コウ・シライに対する懲罰査問会を開始します」


(拍手するところ?)


 総長の言葉に再び腰を下ろしたコウは、事務局長の開会宣言に、のんきにそんな事を考えていた。だが、その後の言葉を聞き、愕然とする。


「コウ・シライには現在、反移行組織であるAM2Cへの内通者としての嫌疑がかかっています」


 コウの口が開き、ぽかんと固まる。それを見て、事務局長はさらに続ける。


「具体的な懲戒対象の行為については次の三つです。一、一般開放エリア始業時間前にセキュリティ設定を解除した上で、一般人を中に招き入れた。二、一般開放エリアから職員通用口へ入れるセキュリティカードを、部外者へ無断で貸与した。三、公開を禁止されているコロニー内音声情報を無断で一般人に視聴させた。以上です」


 事務局長の言葉が終わると、続いて保安局長が話し始める。


「事務局長、ありがとうございました。事務局の報告に基づき、保安局警備部において、近隣を含めた監視カメラの情報をすべて精査。結果、事務局からのご報告の通りであった事を確認しております」


 そう言い、手元のリモコンを操作すると、コウの右手の天井からスクリーンが降りてきて、監視カメラの映像を流し始めた。


「そ、そんな……」


 そこにはコウがコーヒーとセキュリティカードを用意し、ユキナを一般開放エリアに招き入れる姿、そして何かを渡す仕草が映っていた。それを見て、コウは思わず立ち上がり叫んだ。


「違う! あの時はコーヒーを!」

「シライさん、今はまだあなたの釈明を聞く時間ではありませんよ」


 保安局長の隣にいた、コウの知らない男が口を開いた。


「でも……」

「シライ君、やめなさい!」


 室長がコウを止める。


 そして、画像はユキナをデモンストレーションルームへ案内した後の姿が映し出された。職員用ブースにユキナを招き入れ、その後、コウがカードを操作し、消音設定を解除した瞬間がアップで映し出された。


 そこまで見て、コウはそのまま椅子に座り込んでしまった。その様子を見つつ、再び保安局長が口を開く。


「以上の具体的な証拠を持って、コウ・シライの懲戒処分を検討するとともに、合わせて、AM2Cへの内通に関して供述を取る事が、当査問会の開催目的となります」

「結構」


 総長が微笑を浮かべながら口を開いた。


「シライ君、君の状況は限りなく黒に近いグレーだ。あの女性は誰だね? 何の目的で、あそこで何をしていた? 君は電子世界移行業務における特例法に基づき、当該容疑が晴れるまで拘束され、外部との接触は禁止される。我々も忙しい身だ。早く供述して欲しい。さて……それでは、君の釈明を聴こうか」

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