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花守りの蝶  作者: 花言葉
蝶を辞めたいって本当ですか?
7/33

1

 次の日、朝日が差し込む中、目が覚めた。侍女達が、髪の毛を整えてくれて、着物を着せてくれた。

 そして、二人を待っていた。

 カランカランと音がして、誰かが鈴付きのすだれを寄けたようだ。

「どなた?」

「陽太です」

 喜んで出ていくと、陽太は笑っていた。

「あの、すごろくよね?」

「はい」

 台を出していると、陽太が厳しい顔付きで、訊いてきた。

「才我の奴は、何か仕掛けてきましたか?」

「いいえ」

 台を出すと、笑顔に戻り。

「一勝一敗ですから、これからが勝負ですよ」

「そうね」

 サイコロを振ろうとしたその時、才我が現れた。

「やっぱり、抜け駆けか」

 才我は、つまらなさそうにそう言った。二人が、目から火花を出しているように見えてしまう。

「二人共、仲良くね」

 二人を抑えていると。

「花様は、僕が良いよね?」

「いや、俺だ」

「……え~と、それじゃあ、第三の手で」

「「えっ」」

「三人目とは、まだ会っていないでしょう、それなら、三人目にきちんと会うのが筋だと思うのよね」

 二人は、顔を見合わせて。

「「あいつはやめておけ」」

 同時にそう言った。

「そう言うわけにもいかないわ、厳選された蝶なのよ」

「あいつは、ずっとそろばんを弾いている、商業ばかなんだ。手が付けられないレベルだったよな」

「そうそう、個室にこもりきりだし……」

 陽太も才我も類の事は、気に入らないらしい。

「でも、私、行くわ」

 花は、覚悟を決めて立ち上った。


 ● 〇 ●


 乙を連れて、類の部屋を訪れた。

「入りますね」

 戸を開けると、畳の上は本だらけ。

「二二〇六八八、二二〇六八九」

 そろばんをはじいているようだ。

「類~!」

「……」

 類は、怒りをあらわにして、食い掛かって来た。

「計算の邪魔をするな~!」

「ひ~!」

 花は、びっくりして、声を上げてしまった。

「君は、私の計算の邪魔をした。いくらか弱いお姫様と言えど、許すことなど到底出来やしない」

「ごめんなさい」

「謝って済む事ではない」

 そこに乙が怒りながら。

「あなたこそ、蝶のくせに花様に会いに来ないじゃないの」

「ええ、今、忙しくって、それ所じゃありませんから」

「あなたは、王に成りたくないの?」

「なれればなりたいが、可能性のない事にかける趣味は無い、特に男女の色恋沙汰で決めるなど、ばかげている」

 そろばんを置いてそう言った。

「確か、花様でしたね。何だか、頭が良くなさそうですし、きっと、この国は、終わりでしょうね」

 花は、ついに切れた。

「あなただって、人が下手に出れば調子に乗って!」

「いいですよ、私は、蝶候補を降ります」

「わかりました」

 花は、怒りながら父の所へ向かった。


 ● 〇 ●


 王の部屋は、広く、二十畳近くある。袴をはいた父を見上げて。

「類様は、蝶を辞めたいそうですわ」

「それは、できない相談だね。蝶は、決まってしまったら、決してやめることが許されない役職なのだよ」

「でも、本人が辞める気満々です」

「それでもだ」

 花は、悔しくなった。蝶を替えられないなんて、不平等だと思っていた。

「どうして、蝶は、私が選んではいけないのですか?」

「占いとは、あいまいな様で、的を射る相手を選ぶ最高の方法だ。それに、歴代の姫も喜んで受けて来たと聞く」

 花は、蝶制度と言うよりも、類が嫌な事に気づき。

(あの人さえ避ければいいのか)

 花は、心の中でそう思った。

「しかし、花、蝶と疎遠になるのはよくない、一週間に一回は、あいさつ位してやりなさいね」

「はい」

すすっと下がった。

(何が、一週間に一回は、あいさつしなさいよ、とっとと片づけるために毎日通ってやるわ)


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