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次の日、朝日が差し込む中、目が覚めた。侍女達が、髪の毛を整えてくれて、着物を着せてくれた。
そして、二人を待っていた。
カランカランと音がして、誰かが鈴付きのすだれを寄けたようだ。
「どなた?」
「陽太です」
喜んで出ていくと、陽太は笑っていた。
「あの、すごろくよね?」
「はい」
台を出していると、陽太が厳しい顔付きで、訊いてきた。
「才我の奴は、何か仕掛けてきましたか?」
「いいえ」
台を出すと、笑顔に戻り。
「一勝一敗ですから、これからが勝負ですよ」
「そうね」
サイコロを振ろうとしたその時、才我が現れた。
「やっぱり、抜け駆けか」
才我は、つまらなさそうにそう言った。二人が、目から火花を出しているように見えてしまう。
「二人共、仲良くね」
二人を抑えていると。
「花様は、僕が良いよね?」
「いや、俺だ」
「……え~と、それじゃあ、第三の手で」
「「えっ」」
「三人目とは、まだ会っていないでしょう、それなら、三人目にきちんと会うのが筋だと思うのよね」
二人は、顔を見合わせて。
「「あいつはやめておけ」」
同時にそう言った。
「そう言うわけにもいかないわ、厳選された蝶なのよ」
「あいつは、ずっとそろばんを弾いている、商業ばかなんだ。手が付けられないレベルだったよな」
「そうそう、個室にこもりきりだし……」
陽太も才我も類の事は、気に入らないらしい。
「でも、私、行くわ」
花は、覚悟を決めて立ち上った。
● 〇 ●
乙を連れて、類の部屋を訪れた。
「入りますね」
戸を開けると、畳の上は本だらけ。
「二二〇六八八、二二〇六八九」
そろばんをはじいているようだ。
「類~!」
「……」
類は、怒りをあらわにして、食い掛かって来た。
「計算の邪魔をするな~!」
「ひ~!」
花は、びっくりして、声を上げてしまった。
「君は、私の計算の邪魔をした。いくらか弱いお姫様と言えど、許すことなど到底出来やしない」
「ごめんなさい」
「謝って済む事ではない」
そこに乙が怒りながら。
「あなたこそ、蝶のくせに花様に会いに来ないじゃないの」
「ええ、今、忙しくって、それ所じゃありませんから」
「あなたは、王に成りたくないの?」
「なれればなりたいが、可能性のない事にかける趣味は無い、特に男女の色恋沙汰で決めるなど、ばかげている」
そろばんを置いてそう言った。
「確か、花様でしたね。何だか、頭が良くなさそうですし、きっと、この国は、終わりでしょうね」
花は、ついに切れた。
「あなただって、人が下手に出れば調子に乗って!」
「いいですよ、私は、蝶候補を降ります」
「わかりました」
花は、怒りながら父の所へ向かった。
● 〇 ●
王の部屋は、広く、二十畳近くある。袴をはいた父を見上げて。
「類様は、蝶を辞めたいそうですわ」
「それは、できない相談だね。蝶は、決まってしまったら、決してやめることが許されない役職なのだよ」
「でも、本人が辞める気満々です」
「それでもだ」
花は、悔しくなった。蝶を替えられないなんて、不平等だと思っていた。
「どうして、蝶は、私が選んではいけないのですか?」
「占いとは、あいまいな様で、的を射る相手を選ぶ最高の方法だ。それに、歴代の姫も喜んで受けて来たと聞く」
花は、蝶制度と言うよりも、類が嫌な事に気づき。
(あの人さえ避ければいいのか)
花は、心の中でそう思った。
「しかし、花、蝶と疎遠になるのはよくない、一週間に一回は、あいさつ位してやりなさいね」
「はい」
すすっと下がった。
(何が、一週間に一回は、あいさつしなさいよ、とっとと片づけるために毎日通ってやるわ)




