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次の日、朝ごはんを食べた後、陽太が遊びに来てくれた。
「おはようございます。花様」
「おはようございます。陽太」
陽太の手には、桃色の花が束になっておさまっていた。
「贈り物です」
「ありがとう」
ニコッと笑うと、陽太の頬が少し赤くなった。
「あの……その~、喜んでもらえたなら良かったと思います」
「私はね、顔を合わせて、贈り物をもらった事が無かったの、だから、うれしかったのかもしれないわね」
イタズラっぽくそう言うと、陽太は、うれしそうだった。
「でも、そうですよね、花様は、お姫様ですから、毒や刃物などを送ってくる方もいるでしょから、ちゃんと調べるのも納得です」
「そうでしょう」
花は、陽太の持って来た花を花瓶に入れて、立ち上がった。
「ねえ、すごろくしない?」
「当然しますよ」
「この前は、負けちゃったから、次こそ、勝つわよ」
「負けず嫌いなんですね」
「悪い?」
ちらっと陽太を見て聞くと。
「いいえ」
陽太は、笑顔でそう言った。
(また、笑っている)
あの笑顔を思い出して、少し恥ずかしくなった。
「それじゃあ、私の番ね」
サイコロを転がすと、六が出た。
「やった~、一、二、三、四、五、六」
陽太は、笑顔のままだ。
「そういえば、蝶って、後、二人もいるんだったわよね?」
花は、思い出した様にそう言った。
「忘れていたのですか?」
「ええ、だって、会いに来ないから」
「花様は、もし、蝶達が、会いに来なければ、会いに行くつもりは無かったのでしょうか?」
「そう言うわけじゃないのだけど、なんだか、逃げられているような気がして……」
「他の二人は、怖気づいたのかもしれませんね」
陽太がニコニコと駒を進めながら話していた時、入口に人影があった。
「誰かしら?」
その影は、見るからに長身で、女性の着る着物のシルエットでもなかった。それに、かなりの大男だ。
「花様、危ないですよ」
「そうね、まるで、盗賊のような影ですもの」
陽太が戸を開けると。
「お前、いい加減にしろ」
陽太が軽々と持ち上げられた。
「誰か~」
花は、大声を上げた。しかし、よ~くみると。
「あら、水無月才我じゃない」
大男は、水無月才我だったのだ。
「何事ですか?」
乙が近づいてくる。
「毎回、毎回、蝶の集まりがあると言う文が送られてくるので、そこに行っていたら、誰もいないじゃないか、こんなことをするのは、お前位だろ、陽太」
才我の大声が響いた。
「まさか、気づくとはね、武官は、筋肉ばかりで脳が足りないと思っていたのにな~」
陽太は、悪びれた口調でそう言った。
「陽太、どういう事?」
「こいつはな、俺と類をニセモノの手紙で呼び寄せて、あんたの近くに行かないようにしていたんだよ」
「どうせ、類さんが気付いて教えてくれたんでしょう?」
陽太は、挑発するようにそう言った。
「わかっていたって、いつかはばれる事位、少し時間稼ぎをしただけだって、せっかく蝶に選ばれたのだから、王位まで欲しいじゃん」
陽太は、楽しそうにそう言う。
(やっぱり、陽太は、信用してはいけないのかもしれないわね)
花は、疑心暗鬼の気持ちで、陽太を見つめた。
「どうする? 会いに来ちゃったよ」
「才我さんよね?」
「ああ」
「私と二人で出かけましょう」
「は?」
才我は、不思議な物を見る目でそう言った。
花は、心の中で、陽太がいる王宮では、邪魔が入り、才我にとって不利な状況になるに違いないと思っていた。
「ふ、二人で出かける!」
陽太が驚いている。
「そう、才我の好きな場所で」
「……わかった」
才我は、頷くと、少し考えた。
「俺のよく行く、村に出かけよう」
「ええ、いいわ」
「ただ、着物をどうにかしてくれ」
「ああ、この着物じゃ、王宮から出られないわね」
花は、乙に村娘の着物を用意させた。
「花様、才我は、きっとよからぬことを考えているのですよ」
「私は、そうは、思いません」
陽太を追い出して、着替えに入った。才我は、外で待っている。
「お待たせしました。行きましょう」
花は、黄色い格子模様の入った着物を着て、部屋から出てきた。
「おう」
才我の大きな背中を追いかけた。




