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花守りの蝶  作者: 花言葉
花守りの記憶
32/33

6

 そして、婚礼の儀が始まる。

「花様の第一衣装を用意して」

 乙は、張り切って走り回っていた。

「花様、お幸せに」

 侍女達は、そう言って、着物を着つけた。

 まず、人が花と才我の乗った物を担いで国民に夫婦の姿を見せる、行列などの行事が行われることになっている。

「姫様よ」

 国民は、大喜びだ。楽器を弾きながら歩く音楽隊が、前を歩いて盛り上げてくれている。

 才我と花は、同じ鳳凰のあしらわれた着物を着て並んで座っている。

「良く揺れるわね」

「そうだね」

「あっ」

 才我に抱き着いてしまった。

「ごめんなさい」

「いいえ」

 才我は、何だかうれしそうだった。


 ● 〇 ●


 第二部は、誓いの書である。二人の愛を誓い署名するのだ。

 着物は、花の方は、鈴蘭国の姫だけあって、鈴蘭の模様が描かれている物へと着替えさせられていた。

「神の前に誓う、夫婦になる事を」

「では、署名を」

 筆を持たされて、名を書いた。

 すると、拍手が起こった。

「花様、お幸せに」

「花様、どうか、幸せにお過ごしください」

 先陣を切って拍手したのは、陽太と類だったようだ。

「あの二人、やるな」

 才我も思わず笑顔になり、ほめていた。会場は、笑顔と拍手であふれて、とてもいい雰囲気だった。


 ● 〇 ●


 最後に、酒を酌み交わすのだが、花は、白い着物を着せられて、頭に花などの飾りをつけられる。

「今回は、二つと違うのね」

「はい」

 侍女は、期待の目で頷いた。

 第三の儀は、個室でやることが多く、力のある人物しか入れないのだ。

 部屋の中へ入ると、才我は、黒い着物と袴をはいている。

「才我?」

「花」

 才我のエスコートで隣に座らされると、会は始まった。

「それでは、おめでたし」

 全員が、酒を持って、一口飲んだ。花ももちろん飲んだ。

「美しい花嫁ですね」

「そうですね」

 才我は、酒を酌み交わして、話をしている。

 花は、視線を落ちして、しばらく下を向いていた。

「そ~んな顔じゃ笑われちゃうよ」

 陽太が前に来てそう言う。

「えっ? なんで、あなたが?」

「僕も、なぜ呼ばれたのか全く分からないけど、でも、今は、花さんが笑ってくれるといいな」

「そうね」

 才我の隣で、笑顔を浮べた。

 会は、進み、国の重要人物達が、署名する時が来たのだが、みんな酔っぱらってしまっていた。

「いいよ、いいよ、書いたげるー」

 酔っぱらって名を書くものも多かった。

(あの人達、目が覚めた時、後悔しそうだわ)

 花は、心の中でそう思い、見つめていた。

 重要人物の署名は、集まったと思っていたのだが。

「私は、書かんぞ」

 大声で怒る人物がいた。

「どうなされましたか?」

「貴族出身でもない男が王など、認めぬ!」

 そこに、現王である、花の父が現れた。

「私の蝶制度に不満があるのだな」

「い、いえ」

 急に男は、しぼんだ様に小さくなった。

「この男は、立派に蝶制度で決まった男だ。何も言う事はあるまい」

「辺りの人は、拍手している」

「よっ、王の登場」

(そういえば、この人達、酔っ払いだった)

「例え、酒の席とは言えど、我が娘の婿について文句を言うのは、やめてもらえないだろうか? あまり、良い気がしないのでな」

「は、はい」

 いい具合に酒が回り、会はお開きになった。

「水無月才我と言ったな、花の婿よ。私は、五年前に目先の利益のために、蝶制度を待たず、刀助と花を婚約させた。しかし、蝶制度を待ってよかった。花が幸せそうだからな」

 王は、そう言って去って行った。

「花様、花様」

「才我~」

 花は、幸せそうな顔をして、酔っぱらってしまっていた。

「酒が回ってしまったようですね」

 才我に声を掛けられて、寝床に連れて行かれた。

「う~? ここどこ?」

「ここは、夫婦の間です」

「ふ~ふのま~?」

 花は、ふらりふらりとあたりを見て、歩いていた。

「花様、儀式は、終わったのです。俺達は、夫婦なのですよ」

「……」

 花は、うまく理解できなかった。

「才我、才我、月がきれいよ」

 空を見上げて、笑い合った。

 そして、花は、バタンと眠りについてしまった。

「花様……、いや、愛、愛しているよ」

 額に才我が口付けると。

「ふふふ、才我、私もよ」

 花は、寝言でそう言った。

「本当に、かわいらしいお姫様だ」

 才我は、隣の布団に入って、眠った。


 ● 〇 ●


「なあ、かえでよ、愛は、幸せになれるよな?」

 王は、花の母親の楓に聞いた。

「私が病気になって、かまってあげられなかったから、かわいそうだったわよね」

 楓は、ずっと、部屋で寝ていることしかできない状態になっていたのだった。

「そんなことない、愛は、楓の体が弱い分しっかりしていたから、大丈夫だろう」

「そうね」

 楓は、微笑んでいた。

「あなたが、5年前、愛に婚約者を立てた時、初めて怒ってしまったわね」

「楓が死ぬ前に、愛を嫁にしてあげたかったんだ」

「安心させるためにだったの?」

「ああ」

「そう」

 楓は、夜の風に当たり、月を見上げていた。


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