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そして、婚礼の儀が始まる。
「花様の第一衣装を用意して」
乙は、張り切って走り回っていた。
「花様、お幸せに」
侍女達は、そう言って、着物を着つけた。
まず、人が花と才我の乗った物を担いで国民に夫婦の姿を見せる、行列などの行事が行われることになっている。
「姫様よ」
国民は、大喜びだ。楽器を弾きながら歩く音楽隊が、前を歩いて盛り上げてくれている。
才我と花は、同じ鳳凰のあしらわれた着物を着て並んで座っている。
「良く揺れるわね」
「そうだね」
「あっ」
才我に抱き着いてしまった。
「ごめんなさい」
「いいえ」
才我は、何だかうれしそうだった。
● 〇 ●
第二部は、誓いの書である。二人の愛を誓い署名するのだ。
着物は、花の方は、鈴蘭国の姫だけあって、鈴蘭の模様が描かれている物へと着替えさせられていた。
「神の前に誓う、夫婦になる事を」
「では、署名を」
筆を持たされて、名を書いた。
すると、拍手が起こった。
「花様、お幸せに」
「花様、どうか、幸せにお過ごしください」
先陣を切って拍手したのは、陽太と類だったようだ。
「あの二人、やるな」
才我も思わず笑顔になり、ほめていた。会場は、笑顔と拍手であふれて、とてもいい雰囲気だった。
● 〇 ●
最後に、酒を酌み交わすのだが、花は、白い着物を着せられて、頭に花などの飾りをつけられる。
「今回は、二つと違うのね」
「はい」
侍女は、期待の目で頷いた。
第三の儀は、個室でやることが多く、力のある人物しか入れないのだ。
部屋の中へ入ると、才我は、黒い着物と袴をはいている。
「才我?」
「花」
才我のエスコートで隣に座らされると、会は始まった。
「それでは、おめでたし」
全員が、酒を持って、一口飲んだ。花ももちろん飲んだ。
「美しい花嫁ですね」
「そうですね」
才我は、酒を酌み交わして、話をしている。
花は、視線を落ちして、しばらく下を向いていた。
「そ~んな顔じゃ笑われちゃうよ」
陽太が前に来てそう言う。
「えっ? なんで、あなたが?」
「僕も、なぜ呼ばれたのか全く分からないけど、でも、今は、花さんが笑ってくれるといいな」
「そうね」
才我の隣で、笑顔を浮べた。
会は、進み、国の重要人物達が、署名する時が来たのだが、みんな酔っぱらってしまっていた。
「いいよ、いいよ、書いたげるー」
酔っぱらって名を書くものも多かった。
(あの人達、目が覚めた時、後悔しそうだわ)
花は、心の中でそう思い、見つめていた。
重要人物の署名は、集まったと思っていたのだが。
「私は、書かんぞ」
大声で怒る人物がいた。
「どうなされましたか?」
「貴族出身でもない男が王など、認めぬ!」
そこに、現王である、花の父が現れた。
「私の蝶制度に不満があるのだな」
「い、いえ」
急に男は、しぼんだ様に小さくなった。
「この男は、立派に蝶制度で決まった男だ。何も言う事はあるまい」
「辺りの人は、拍手している」
「よっ、王の登場」
(そういえば、この人達、酔っ払いだった)
「例え、酒の席とは言えど、我が娘の婿について文句を言うのは、やめてもらえないだろうか? あまり、良い気がしないのでな」
「は、はい」
いい具合に酒が回り、会はお開きになった。
「水無月才我と言ったな、花の婿よ。私は、五年前に目先の利益のために、蝶制度を待たず、刀助と花を婚約させた。しかし、蝶制度を待ってよかった。花が幸せそうだからな」
王は、そう言って去って行った。
「花様、花様」
「才我~」
花は、幸せそうな顔をして、酔っぱらってしまっていた。
「酒が回ってしまったようですね」
才我に声を掛けられて、寝床に連れて行かれた。
「う~? ここどこ?」
「ここは、夫婦の間です」
「ふ~ふのま~?」
花は、ふらりふらりとあたりを見て、歩いていた。
「花様、儀式は、終わったのです。俺達は、夫婦なのですよ」
「……」
花は、うまく理解できなかった。
「才我、才我、月がきれいよ」
空を見上げて、笑い合った。
そして、花は、バタンと眠りについてしまった。
「花様……、いや、愛、愛しているよ」
額に才我が口付けると。
「ふふふ、才我、私もよ」
花は、寝言でそう言った。
「本当に、かわいらしいお姫様だ」
才我は、隣の布団に入って、眠った。
● 〇 ●
「なあ、楓よ、愛は、幸せになれるよな?」
王は、花の母親の楓に聞いた。
「私が病気になって、かまってあげられなかったから、かわいそうだったわよね」
楓は、ずっと、部屋で寝ていることしかできない状態になっていたのだった。
「そんなことない、愛は、楓の体が弱い分しっかりしていたから、大丈夫だろう」
「そうね」
楓は、微笑んでいた。
「あなたが、5年前、愛に婚約者を立てた時、初めて怒ってしまったわね」
「楓が死ぬ前に、愛を嫁にしてあげたかったんだ」
「安心させるためにだったの?」
「ああ」
「そう」
楓は、夜の風に当たり、月を見上げていた。




