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花守りの蝶  作者: 花言葉
花守りの記憶
31/33

5

 部屋に戻ると、才我が待っていた。

「花様」

「才我、やっぱり、あの二人は、忘れているようで、忘れていなかったわ」

「そうだろ、呪いが全てではなかったんだ」

「二人を婚礼の儀に招待したわ。それが、私から、二人にできる最後の事だから」

 才我が腕を絡めて来て、花は、才我の腕の中でそう言った。才我のゴツゴツした腕と胸板に安心していた。

「それでも、あの二人より愛しているよ」

 耳元で、そうささやかれ、顔が真っ赤になる。

「才我、恥ずかしい」

「花様は、かわいいですね」

 頭を優しくなでられる。そこに乙が入って来て。

「お邪魔でしたね」

 急いで出って行った。

「乙! あっ……才我、離してもらえる?」

 才我の腕がゆるむ。

「花様は、婚礼の儀の準備は終わった?」

「まだよ」

「乙は、準備の手伝いに来たんだよ」

「じゃあ、撒いちゃだめだったんじゃない?」

「ごめんね、離れたくなくて」

 才我が、にやりと笑った。

(はずかしいよ~)

 花は、心の中でそう思っていた。


 しばらくして、乙がもう一度訪ねてきた。辺りを警戒している様だったので、何事だろうと思っていると。

「才我様は、おかえりになった?」

「才我を警戒していたの?」

「ええ、仲睦まじいのは結構ですが、婚礼の儀に間に合わなくなってしまったら行けないですから」

「そうね」

 ため息をついた。

「婚礼の儀で着る、お着物ですが、鳳凰、鈴蘭、無地と決まっておいでです」

「それなら、私が意見するところがある?」

「はい、同じ模様でも、似合うかどうかは、着て見ないとわかりませんからね」

「はーい」

 そして、着物を試着するため、何着も何着も着せられた。

「めんどうくさい」

 着物を着るのは、大変なので、疲れ切ってしまった。

「でも、どれを着るか、決まりました。もう下がっていいですよ」

 侍女達を下がらせた。

「乙~、私、もう無理」

「今日は、休みましょうか」

 寝間着に着替えて、布団に入った。


 ● 〇 ●


 次の日、婚礼の儀まで、三日となった。

「今日は、手紙を書きましょう」

 才我と乙と、一文を添えた招待状を書くことになった。

「俺は、字を書くのは、得意じゃないんだけど、いいのかな?」

 才我が困っていた。

「いいのです。直筆かどうかが大事なのですから」

 字を間違えると、乙が紙を替えてくれる。

(助かるわ~)

 花は、心の中でそう思っていた。


 数時間書いてかき上げた。才我も花もへとへとだった。

「肩が痛い」

 花は、涙目でそう言う。才我にマッサージしてもらって、一段落した。

「才我は、肩がこらないの?」

「ああ、鍛えていますからね、こりませんよ。陽太と類のも招待状を出しておいたので、安心してください」

「あの二人、来てくれるかしら」

「さあ」


 ● 〇 ●


 婚礼の儀まで二日となった。式の段取りの説明を受けていた。

「ここで、こうして、こうです」

 色々、指示されて、パニックを起こしそうになる。

「ああ、それは」

 仕切り役の大臣は、辺りの人達の動き一つにも厳しい。

「花様の婚礼は、盛大にして差し上げましょう」

 マニュアル版を持ち歩いてそう言っていた。

(いい人なのよ、いい人だけど……)

「花様、今、間違えましたね」

(いい人だけど、厳しい!)

 花は、心の中で、泣いていた。才我も困っていた。おぼつかない足取りで儀式の一式を取り行ったのだが、大臣は不満の様で。

「もう一回」

 結局、あと三回やらされた。終わったころには、疲れ切っていた。

「そうね、乙、少し体を伸ばしましょう」

 乙に体をもんでもらいながら、その日は終わった。


 ● 〇 ●


 婚礼の儀の一日前、ここまで来ると、みんな休みにしてくれた。

「才我様とお過ごしください」

 侍女は、そう言って去って行った。

「愛、おいで」

「うん」

 才我の腕の中で、優しくされていた。

「才我、私、幸せ者よね」

 才我は、ただ頷くだけ。

「才我、私……」

 才我が急に頬にキスしてきたのだ。

「えっ!」

「愛は、不安なんだろう、俺が王に成るのが」

「少しね、だって、才我は武官だから、戦の時、上に立つことになるでしょう。先陣を切るか、命を狙わると言う事だもの」

「そうですね、でも、俺が負けると思う?」

「……だって、うまくいかないときだってあるわ」

「そうですね」

 才我は、遠くを見つめて。

「それでも、信じて欲しいなんて、わがままですか?」

「……いいえ、私、信じるわ」

 才我は、愛おし気に抱きしめてくれた。


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