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そして、次の日、婚礼の儀を国民の前でやる日程が決まった。占いで四日後に決まったようだ。
「才我、婚礼の儀だって」
「がんばりましょう」
「ええ」
才我は、その日、少しだけ抜けて、いなくなっていた。
(どこにいったのかしら?)
不思議に思い、待っていると。
「どういうことなんですか?」
才我は、大慌てで、花に向かって声を掛けた。
「どう言う事なんですか、花様! なんで、陽太と類が花様の事を忘れてしまっているのですか?」
「それが、蝶の呪いだからよ!」
花は、力いっぱいそう言った。
「花は、蝶に好かれるの、それは、呪いのせい、悪い夢は、忘れさせてあげなくちゃいけないのよ」
才我は、ぎりっと歯ぎしりした。
「あの二人は、本当に呪いだけで、花様を好きになったとお思いですか?」
「ええ」
花は、開き直ったようにそう言った。
「それは、間違いです。人間の意思を呪いなんかで縛ることは出来ない」
「そうかしら?」
花は、あくまで、呪いのせいにしたいようだった。
「俺は、三人で、花様とバカ話をしながら、奪い合うのが、とても楽しかったのです」
花は、驚いた。
「才我、私だけじゃなかったんだ。楽しかったの」
花は、泣きそうになった。
「花様、良く考えて下さい、もしかして、強く望めば、戻るかもしれないじゃないですか、だって、俺達は、花守りの蝶なのですから」
「そうね」
花は、思わず駆け出して言った。
「陽太!」
「はい、陽太ですが」
背の低い、かわいらしい少年、陽太に声を掛けた。
「あの、私、花と言います」
「花さんですか、よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
「着ている着物を見ても、高級そうですね。お姫様ですか?」
「そうよ」
「えっ! 本物!」
陽太は、驚いて、ふふっと笑った。
「なんだか、あなたとは、初めて会った気がしませんね、これから、もっと仲良くなれそうな気がするよ」
「そうね、私達、友達になりましょう」
「いいよ」
陽太は、握手するように手を差し出したので握手した。
「なんだか、ずっと昔、好きだった女の子を思い出しそうです」
「!」
(やっぱり、消えているけど、消えていないんだ)
「婚礼の儀の時、見に来てくれる?」
「もちろんです」
陽太は、落ち着いた様子で笑った。
次に類の所へ行くと、仕事で忙しいようだった。
「類~」
声を掛けると。
「どこかで聞いた声のような?」
類は、不思議な事でも起こったような顔をしている。
「そうだ。夢に出てくる、天使の声だ」
「君は、天使なのかい?」
「いいえ」
「でも、私が、最も理想とする女性、言うならば、夢の中の天使にとても似ているような気がするのだが」
「そう」
(やっぱり、完璧に呪いだけじゃないのかも)
「その天使に会ったら、なんというの?」
「愛していると伝えるさ」
「そうなの、出会えるといいわね」
去ろうとした時、手を握られて。
「君じゃないのか?」
「ええ、違うわ、だって、私はこの国の姫で、四日後に婚礼の日を控えているの、他の男を誘惑しているひまなんてないわ」
「そうか」
類は、少し考えた後。
「婚礼の儀を見に行っても良いだろうか?」
「ええ、ぜひ来て」
笑顔でそう言うと、類は、笑ってくれた。
帰り道、考えて見た。陽太も類も忘れてはいたのだが、まだ、淡く花を想っている様だった。
(二人共、変わらないのね)
少し、うれしくなった。




