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その日、刀助は、国に帰って行った。
「あいつ、二度と来なくていいわ」
「そうです。そうです」
類が怒ってそう言う。
「でも、才我は、よかったですよね、花様に選んでもらえたんだから」
陽太がそう言う。
「ああ」
才我は、照れくさそうに返事する。
(ああ、もう、これは、見れなくなる光景なんだ)
才我が壁にもたれかかって、陽太と類が楽しそうに話をする。これが、花の日常になっていたのだ。
(さみしいよ……)
花は、心の中でそう思った。
才我が、花を見て、少し思った事がある様だった。
「花様……」
「才我?」
「少し来てくれ」
「ええ~、二人きりになるの~」
「もはや、才我と花様は、夫婦同然なのですから、誰かさんの不平不満を聞き入れる必要なんてないですよ」
類が怖い笑顔でそう言う。
「うん」
● 〇 ●
才我と二人きりになった。
「あの、鈴、助かった」
「ああ、あれは、才我が初めて出かけた時くれた物よ、だから、助けたのは、才我、あなた自身なのよ」
「花様は、俺を婿にすることを悩んでいるのか?」
「いいえ」
「本当か?」
「ええ」
「本当に?」
「しつこいわね、悩んでないわ」
「じゃあ、なんで、悲しそうなんだよ」
才我が大声でそう言った。
「だって、才我と陽太とはもう……」
「もしかして、蝶に選ばれた奴とは、もう会えないのか?」
「ええ、そんなところよ」
「そうか、それじゃあ、手放しで喜べないな」
「うん」
二人は、とても良くしてくれた。楽しい思い出だってたくさんあったのだ。忘れるなんて寂しい。
「でもね、才我と一緒にいたい」
「うん、わかった」
才我は、大きな手で優しく花の頭をなでる。
● 〇 ●
その夜、宴が開かれた。
「今日は、花の婿が決まったので、お伝えしようと思います」
そこで、花の周りを三人で囲い、花と花守りの蝶が入って来た。
「花守りの蝶、解散式」
「花の蝶に選ばれたのは、水無月才我だ」
「「おお~」」
歓声が上がった。
「武術に長けて、先日の決闘も見事だった。彼に不満は無いだろう?」
「「はい」」
「では、花から、蝶へ祝福の口付けをしてもらう」
「はい」
(これは、儀式よ)
花は、国民の前では、余裕を持った態度をとる様にしているので、恥ずかしさを隠して、優雅に口付けた。
「契約成立だ」
「これで、才我は、花の婿だ」
会場は、大盛り上がりだ。
「花、なぜ、真名を教えなかった」
父にそう言われて。
「明日、言います」
チクチクと胸が痛んだ。




