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花守りの蝶  作者: 花言葉
決闘の約束
26/33

10

「花様」

 花は、侍女達に辺りを囲まれていた。飲み物から、扇子などを渡されて、顔を隠して座っていた。

「花様の将来がかかった決闘です。さぞや、ひやひやなさっているのでしょう」

「そうね」

(そういえば、私の婿が決まるのよね)

 刀助などと結婚したくないのだった。

(才我がんばって)

 花は、心の中で祈った。

「花様、ごめんなさい」

 陽太が落ち込んでそう言う。

「侵入に失敗したの?」

「はい」

「でも、陽太が殺されなくてよかったわ」

 笑顔で言うと。

「何で、みんなそんなに優しいのですか? 仮にも僕は、失敗したのです。もっと叱ってもいいのですよ」

「叱るなんて、しないわよ、陽太は悪くないもの」

「……花様」

 陽太は、感極まって泣き出した。

「ごめんなさい、失敗して、でも、本当に許してくれるのなら、次こそがんばります」

「そう」

 陽太の頭をなでた。

 類が近くに寄って来て。

「もうすぐ、始まりますよ」

「ええ」

 余裕がある様に返事をした。

「東、水無月才我 西、亀壺貴士かねつぼたかし

 闘技場の中央に才我と貴士が並ぶ、二人とも大男だが、貴士は、品が無いのだ。才我は見るからに品が良い。

「いいとこの坊ちゃんかい?」

「いいえ、立派な武官ですよ」

 槍を構えて、そう言う才我、貴士は長剣をかまえた。

 ガキンと音がして、槍と剣がぶつかり合った。力で押す貴士、しかし、槍に重い攻撃をしても、受け流されているようだ。

 ガキンガキンと剣と槍の弾き合いが続く。

「類、状況は?」

「才我は、わざと剣を受けて隙を狙ってそうですね」

 双眼鏡をのぞきながらそう言う。

 ガキンガキンと音が良く響く。

(才我、がんばって)

 花は、心の中で祈った。その瞬間。

「最初に攻撃が入ったのは、才我だ。腕を切りつけたぞ」

「!」

「よかった」

「花様、才我は、勝ちますよ」

 類がそう言った。

 だんだん貴士の動きが鈍ってくる。

「どうした? どうした?」

 解説の人が戸惑っている。

「類、今、光っている物が見えた。花様が狙われているようですよ」

 陽太がそう言って花の前に立つ。

「見えないわ」

「今、あなたが殺されるわけには、いかないのです」

 陽太は、そう言って苦笑いした。


 才我は、貴士に耳元で。

「西側の客席に毒矢を構えた男がいる。姫を殺されたくなかったら、負けを認め立ち去るのだ」

 そうささやかれた、西側の席を見ると、矢を構えた男が二人いた。

(花様!)

 才我は、少し悩んだ。しばらく、剣を受け流していた。


「花様、今は、隠れてください」

「いや、才我の戦いを見たいわ」

 チリンチリンと、花は、才我と初めて一緒に出かけた日に買った鈴をつけていたので、動くと鳴る事に気が付いた。

(才我は、この音を聞き取れる)

 花は、その事に、気がついたので、わざと、チリンチリンと音をさせて、客席を移動した。


(花様が、移動している)

 才我は、花達が毒矢に気付いたとわかった。

「ここから本気で行きますよ」

「はっ?」

 貴士は、不思議そうな顔をしていた。

 才我は、思いっきり、槍を貴士の腹に突き当てた。しかし、鎧を付けているので、打撃で驚かせることしかできなかった。

「なっ! 毒矢を打て」

 貴士がそう言うと、空の玉座が目に入った。

「何?」

「才我~、がんばって、負けちゃだめよ~」

 花が、客席の真ん中からそう言う。

「あっちだ! 打て!」

 毒矢隊が矢を放つと、陽太と類が弾き飛ばした。

「愛した人にけがなどさせない」

「そうです。僕も花様を愛しています」

 二人の告白に、つい、ぽけっとしてしまったが、才我は貴士を槍の柄で気絶させていた。戦いは、終わった。

「やった~! 才我の勝ちだわ」

 会場は、大盛り上がりだった。


 ● 〇 ●


 休憩室の才我の元へ向かった。

「才我~」

 花は、思いっきり抱き着いた。

「花様」

 才我は、優しく抱き返してくる。

「ああ~どうする? ラブラブしてるよ」

 陽太が嫌そうにそう言う。

「まあ、決闘で勝って何もないのも変ですよ、決闘で多いのは、姫が祝福のキスをすると言う風習ですかね」

 類がメガネを直しながらそう言う。


 ● 〇 ●


 陽太と類と才我と部屋に戻ると。

「花様、私は、あなたを愛しています」

「僕も、愛している」

「あの、あの……」

 花が戸惑っていると。

「いいんですよ。私達は、とっくにわかっていますから、花様は、才我がお好きなのでしょう」

「……ええ」

 花は、頷いた。

「そうか」

 陽太は、物憂げにそう言った。

「才我は、ずるいですよね。あんなに恰好よく決闘に勝たれたら、女の子は、好きにならざる終えないですよね」

 類が、涙をためてそう言った。

「類?」

 初めて、類が悲しみを露にしたのを見て、類も普通の人なのだと改めて思った。

「大丈夫、二人は、新しく歩いて行けるよ」

(だって、忘れちゃうから)

 花は、心の中でそう思った。


最後に、蝶として、花を守る宴が開かれる。

「お父様、私は、婿様を選びました」

「そうか、三人のうち、だれにした?」

「水無月才我にします」

「そうか、そうか、私の言った事を覚えているね?」

「はい、真名を明かす相手に選ばれなかった蝶の記憶から、私がいなくなると言う事ですよね?」

「そうだ。なぜ、そんな制度なのかと言うと、蝶の状態では、二人は、花を愛したままになる。それでは、二人の未来が心配だろう? だから、消すんだ」

「そうですか」

(少し、忘れて欲しくないなんて、欲張りかしら?)

 花は、心の中でそう思った。


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