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花守りの蝶  作者: 花言葉
決闘の約束
24/33

8

 そして、決闘の始まる日になった。闘技場の周りには、屋台が出て、にぎやかな雰囲気になっていた。

「闘技場って初めて来るわ」

 中央には、長方形に広く戦う場所を設けて、辺りの客席は畳が敷いてある。段々になっている観客席の一番前に花の席がある。

(負けないで才我)

 花は、心の中でそう願った。


 ● 〇 ●


 その頃、陽太は、侍女のお姉さん方に着物を着せられていた。

「まあ、似合うわ~」

「いえいえ」

(だから、嫌だったんだよ。でも、花様のためだし、がんばるぞ)

 陽太は、給仕の女の人に混じった。

 敵国の領地に侵入すると、刀助は、大柄の大男を側に置いて、命令するように、何かを言っている様だった。

「今回の決闘は、君に掛かっているんだ。負けたらどうなるかわかっているね」

 大男に刀助がそう話しかけた。

(あいつが才我の対戦相手か)

 お茶を運びながらそう思っていた。陽太は、女らしい足取りで、しずしずと歩いていた。

 敵国のガードも頑丈で、給仕もよく知られた者だけが、刀助と大男の所に物を運んで行けるようになっていた。

(僕じゃ、あそこに近づけない)

 そう思っていると。

「何? あんた新入り?」

 一人の女に声を掛けられた。

「は、はい」

 その場任せに返事した。

「新人は、ここに来ちゃだめって言われなかった?」

 怒っている様だった。長い黒髪の美少女に案内されて、新人達用の給仕の部屋に連れて行かれた。

(どうしよう)

 部屋は、狭く、すぐばれてしまいそうだと思った。

「はい、ここで新人は、研修してください」

 黒髪美少女に連れて行かれた先で、二人の女の子がおずおずと近づいて来た。

「あなたも新入りなの?」

「ええ」

 女らしくそう言うと。

「まだ、私達は、仕事をもらえないのよね」

 憂鬱そうに二人は言った。

(仕事をもらえないのなら、どうやって、あの大男にしびれ薬を盛ろう?)

 少し考えていた。

「私達、この決闘で人数が足りないから呼ばれたのよ。食器洗いを任されるから、手が荒れちゃうよね」

「そうね」

(食器洗い、食器に薬を塗るとか?)

 陽太は考えていた。

(でも、毒味されたら一発でわかられそう)

 こう言う、他国との決闘の場で毒味をしない奴は異常だと思う。

「ところで、新入り名前は?」

陽子ようこって言うの」

「陽子ちゃんね、よろしく」

「よろしく」

 陽太は、ニコニコして言った。


 ● 〇 ●


 しばらくして、仕事が入った。

「さあ、着替えて行きましょう」

「き、着替え~?」

 陽太は焦った。女物の着物を自分で着れない上に、詰め込んだ布がばれたら、男とばれてしまう。

(どうしよう……)

 冷や汗が流れる。

「どうしたの?」

「あの、私は、後で着がえて――」

「そんな、呑気な事言っていられないわよ、私達は、新入り、こき使われても文句は言えないのよ」

 目の前で、女の子が着物を脱ごうとしている。

(……やばいな)

「さあ、陽子も着替えて」

 そう言って、脱がされた。

「……陽子って……男なの? 胸もないし、腕もなんか女らしくない」

「えっと、そんなことないわ」

「じゃあ、上の襦袢脱げる?」

「……」

「男よ、男が侵入したわ~」

 大騒ぎになってしまっていた。

(ちっ、こうなったら)

 陽太は、泣くふりをして。

「私は、ただの観光客なのよ。女の着物を着るのが好きなのよ。それなのに、間違えて、ここに連れてこられて、どうしたらいいかわからなくなっていたのよ」

「……」

「オカマさんだったんだ」

 オネエ言葉で言ったのが良かったのか、服を直して、普通に外に出された。

「ごめんなさいね」

「いいえ」

 ひくつく顔を何とか抑えて、敵の本拠地から出た。

(は~、失敗した)

 才我の所に戻るのが、憂鬱だった。

(何て、報告したらいいんだ)


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