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花守りの蝶  作者: 花言葉
三人の婚約者
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2

 次の日になると、花は、叩き起こされた。

「蝶の方々に会うのですから、きれいな身なりにしましょう」

 髪をとかされて、重い着物を着せられる。

「蝶が、会いに来るのですか?」

「いいえ、主の間で待っているそうですわ、気に入られるように、美しくしてから行ってください」

 乙に花模様の着物を着せられて、急いで歩いて行く。

「お待たせしました」

 乙がそう言って、花を台座に座らせる。

 花は、辺りを見渡して。

(一番左が木崎陽太かしら? なんだか、幼さが抜けきらない感じね。真ん中は、水無月才我ね、少し怖そうだわ。右が、唄野類ね、確かにメガネをかけているけど、いい人そうね)

 一通りの印象を思い浮かべた。

(この中から、婿様を決めるのね)

 気に入らないわけでもないが、不安になる。

「一人、一人、自己紹介を頼むわ」

「はい、僕は、木崎陽太です。特に、取り柄なんてないですが、女の子を傷つけたりしませんよ」

「水無月才我、強くなるのが目標の人間だ。基本それ以外に興味はない」

「唄野類です。商人なので、旅をするのが好きです。よろしく」

「皆さんは、蝶に選ばれたのですから、私とは相性がいいのでしょう。きっと仲良く出来ると思います」

 花は、笑顔を作りそう言った。

 すると、唄野類が、台座の近くに来て。

「花様、もう、私と結婚しちゃいましょう。どうせ、この三人の中から決まるのです。迷うだけ無駄ですよ」

「あっ、あの~」

「いや?」

「……」

 花は、類の反応に困ってしまった。

「さっさと決めちゃいましょうよ~、私、次の商談まで、日が無いのです。花を守れだって? 勝手に決めて置いて、武士らに守らせていればいいじゃないですか」

 類は、投げやりにそう言った。

「類さん、ここも商談だと思えばいいのですよ、花様を手に入れたら、大きな店との契約より、お金になりますよ」

 陽太が、笑いながらそう言った。

「それは、ナイスな考えだね。陽太君、そう思えば、いい事だね。商談の相手は、中々折れてくれないのですが、そこがまた楽しいと言う……」

(類って、変わっている)

 ただの商業バカの様だが、蝶に選ばれる位だ、あなどってはいけない、それに比べて陽太は、何と落ち着いているのだろう。類を言いくるめてしまった。

(一番マークしていなかった陽太が、意外とすごいのかも)

 花は、心の中でそう思い、三人を見つめる。

「三人共、これから、どうします?」

「そうですね~、三人でお守りするのも良いですが、せっかくです。一人ずつ、守る役を交代しましょう」

 陽太が明るくそう言うと。

「一人ずつ……」

 才我が、顔をしかめた。

「女と二人きりになれと言うのか?」

「そうだよ」

「何を話したらいいのだ」

「隣にいればいいんだよ、守るだけなんだから」

「そ、そうか」

「元傭兵だった才我さんなら、花様の隣について座っているだけなんて、簡単な事でしょう」

「まあ、守るのならな」

 また、陽太が丸め込んだ。

(才我は、女の子が苦手なのかしら? それにしても、陽太は、才我が傭兵出身だって、良く知っていたわね)

 陽太は、他にも調べていそうだと思い、少し、怖くなった。

(私の事もしっかり調べ上げてそう)

 陽太は、笑顔を崩さない。

「まあ、三人共、今日は、あいさつだけで、明日から、私を守る蝶として勤めてください」

「「「はい」」」

 花は、すっと下がった。

(とんでもない人ばかりだ)

 花と相性がいいと言うことは、自分もあの三人と似ているのかもしれない。

 花は、心の中で青くなっていた。

「乙~!」

 仕方がなく乙に泣き付いた。

「あら? 花様」

 おまんじゅうを持っていた乙は、お茶の準備をして、縁側に座ってくれた。

「きいて、蝶は、なんか、すごい人達ばかりなの」

「それは、それは……」

「いきなり、求婚してくる人はいるし、女性と関わりたくない人もいるし、なんだか、腹黒そうな人もいるし……」

 花は、蝶制度を甘く見ていたと思い知った。

「王にふさわしい人じゃないのですか?」

「人として、大丈夫なのかと思う人が王なんかに成れませんわ」

「あら、凡人は王に成れないと言う人だっていますよ」

「……そうなの?」

 乙は、お茶を一口飲み。

「まだ、上辺だけしかご覧になっていないのでしょう。もしかして、良い方なのかもしれませんよ」

「そうかしら」

 花もお茶を飲み、まんじゅうを食べる。

「どんな方だったのか、もう一度話してみてください」

「一人は、いきなり求婚して来て、商談をさっさと片付けたいから結婚してしまえ、とか言っていたわ」

「唄野さんですね、あの方が王に成られたら、国は、活気づきますわ。唄野さんは、外国との関係がとてもいい様ですから、外交上手なのですよ」

「あっ、だから、商談」

「そうです。相手を大切にしているからこそ、遅れは許されない。相手の事も大切にしていらっしゃるのですよ」

 そう言われると、いい人のような気がしてくる物である。

「才我は、女が苦手らしいの」

「浮気なさらなくていいんじゃないかしら、女の方に現を抜かす方は、国の安定を乱す事もありますから」

「そうなの?」

「ええ」

「腹黒いのは?」

「相手をうまく利用する天才だと思います。きっといい国になるでしょう」

「そうか……」

 蝶の見立てが間違っているのではなく、花の見る目が無いのだと気づき恥ずかしくなってきた。

「なんで、乙は、そう言う事がわかるの?」

「あら、侍女は、うわさ好きなのですよ」

「?」

(うわさって、侍女達は、何を話しているのだろう?)

 花は、疑問に思い、乙を見つめる。

「あっ、ほら、昼食の時間ですわ、急ぎましょう」

 乙は、そう言い、花の前を歩く。


 ● 〇 ●


 花はいつも通り、部屋で食事を終えて、だらけていた。

(う~ん、いいお天気、お昼寝日和だ~)

 畳の上でゴロゴロしていると、もやもやも出ていくようだった。

「花様、いけません、着物が崩れます、起きて下さい」

「ええ~」

 乙は、厳しい口調で怒っていた。

「姫様なのですから、花嫁修業でもなさって下さい」

「は~い」

 花は、立ち上がり、琴の練習を始めた。

 コロテンシャンと音が鳴る。花は、一度始めたら、一曲できるようになるまでやめることは無いのだ。

「本当に、負けず嫌いですよね」

 乙は、一色懸命な花にそう言った。

 コロテンシャンシャンと言う音は、小一時間続いた。


 ● 〇 ●


 夜になり、布団の中で、蝶の三人の事を考える。

(みんな、個性的でいい人なのでしょうけど、私が好きになれるかは、まだ、わからないかな?)

 本当に、三人のうちの誰かを好きになる日が来るのだろうか。

 花は、天井を見つめて考えた。


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