7
何日かして、刀助は、証拠として、婚約証明書を持って現れた。
「これで、愛していた証拠は、持ってまいりました」
「本物ですね?」
「はい」
鑑定士の方に隅から隅まで見てもらった。
「本物の様です。筆跡も、判も正しい物です」
「さあ、俺を王に」
「ちょっと待って下さい」
類と陽太と才我が出てきた。
「あなたが、花様を愛していない証拠を集めて参いりました」
刀助は、ガタッと後ろに少し下がった。
「あなたは、女の方が大好きですね?」
「……」
「城下町の女性からは、女遊びの刀助で名が通っているとか」
「……」
「そして、本命は、遊郭の高級遊女の玉姫と言う方なのだそうですね」
刀助は、汗をポタポタたらしだした。
「玉姫への贈り物に国の財産の一割をささげたそうで、花様よりも、そちらの方の方に愛があるのではありませんか?」
類がづけづけとそう言うと刀助は。
「うるさい、書類上の愛でいいではないか、こちらは、婚約破棄を承諾していないそうですからね」
どうやら、刀助の後見人が、陽太の気づいた書類に気付いたのだろう。
「そうですね、書類の上では、婚約者でございますね」
陽太がそう言って、一枚の紙を取り出した。
「こちらの破談を承諾する紙、判が押されていません」
「そうでしょう」
刀助が余裕そうにそう言うと、陽太は。
「でも、こちらの、破談の書類は、判が押してあります」
取り出したのは、正式な場で書くものだった。
「こちらは、認めるために、侍女と官吏の判が押されています。こちらで確認を取った所、この判を使う者は、破談を認めました」
「そんなもの……そっちがでっち上げた――」
「あなたの国の侍女と官吏です。ちゃんと一筆書いてもらいました」
陽太は、力を込めてそう言った。
「あなたの味方をするはずの方も破断したものと思っておいででした。本当は、判をしっかり押した書類もあるのでしょう?」
「いいや」
刀助は、反論した。
「あることない事言われて、不愉快だ。お前達何者である」
「花様の、花守りの蝶でございます」
「花守りの蝶?」
刀助は、どこかで聞いたことのある言葉だと思い考えた。
「蝶か……、花様の真名は、蝶の一人にだけ明かされる。そう聞いていた」
「そうなの、実は、蝶は、正式な婚約者の事を言うのですわ」
「うそだ。だって、三人も婚約なんてできないはずです」
「あなたが、それを言いますかね?」
類が、メガネを直して、強気に出た。
「あなたは、花様と婚約中、日雲国の第二王女と婚約なさっていたのではありませんか? 私の勘違いでしょうか?」
「!」
刀助は、焦り出した。
「なんで、お前達は、そんなに詳しいんだ」
「調べましたから」
「この短期間で?」
「はい」
類は、メガネを押えながら返事した。
「お前達は、なぜそこまでするのだ」
「花様を守るためです」
「そう、僕も花様のためです」
「一応、俺もな」
「お前達が花に惚れているのは、もはやどうでもいい、花様、婚約を破棄なさりたいのなら、一試合するのは、どうですか?」
「一試合、一体何を競い合うの?」
「決闘です。花様の国をかけて」
「! そんな物、私には、何の得にもならないわ」
「お忘れですか、あなたと俺は、紙の上では、婚約者なのですよ。実際、そこの坊ちゃんが提示した証拠だけでは、破棄したと確実には言えないからです」
陽太は、歯ぎしりをした。
「俺は、君を愛していないよ、でも、結婚なんてそんな物だろう、書類上の婚約でいいじゃないか?」
「……」
花は、怒っていたのだが、何も言えずに座っていた。
(書類上の婚約、愛していない、私は、そんなの望まない)
花は、心の中では、そう思うが、下手に決闘と言う面倒な事を受け入れてはいけない事位は、わかっていた。
(どんないかさまを使ってくるかわからない上に、とても強い人を探し出すに違いない)
ここは、挑発に乗らない方がいい。
「少し、考えさせて」
蝶の三人と下がった。
「三人共、ご苦労様」
「でも、花様の婚約を止められなかった」
陽太が落ち込んでそう言う。
「すぐに、慌てて食い下がると思っていたのですが、刀助と言う男、あなどれない奴だったのですね」
類も困った様にそう言った。
「決闘、受けよう」
才我がそう言った。
「ばかか、武官は、これだから」
陽太が、声を荒らげた。
「決闘をまともにやる卑怯者がどこにいると思う? 毒とか、眠り粉とか、使うに決まっているじゃないか、相手は、絶対に負けないようにして来るさ」
「わかっています」
才我は、小声でそう言った。
「わかっているのなら、なんで、受けるなんて言うのさ」
「こっちも、何か使えばいいと思うのです」
「「!」」
相手が卑怯な手を使ってくるのなら、こちらだって卑怯な真似をして、越えてしまえばいいのだ。
「そうだよ、それだよ。こっちが上を行けば、円満解決だ」
「そんなにうまくいくとは思えないな」
陽太がジト目で類を見る。
「開催国をこちらにしてくだされば、三倍は、対策を練りやすく出来ますし、警備だって厳重にできます」
陽太は、まだ、承諾してくれない。
「陽太君、君は、失敗したんだ。今度は、才我に託しましょう」
「……ああ」
陽太は、悔しそうに返事した。
「花様、例え、才我が負けたとしても、あなたを守るだけの資料は、集めておきますから、安心してください」
「お願いね」
● 〇 ●
刀助のいる部屋に戻り。
「決闘をお受けします。ただし、私の国、鈴蘭国でも開催にしてください」
「わかりました」
刀助も負ける気は、全く無いようだ。
(そっちがどんな手を使って来ても、負けないわ)
火花が散っていた。
「決闘の開催は、二週間後としよう、そちらの準備もあるだろうから」
「はい」
刀助は、そのまま国へ帰って行った。




