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次の日、刀助について、大分資料がそろって来ていた。
「実は、女好きとかは、どうでもいいのよ」
「でも、大事ですよね」
類と資料を読んでいた。
「別に、側室や妾なんて珍しくないでしょう」
「そうですね」
類は、世界中から、一〇〇通も文を集めてくれたのだ。
「他にも、金遣いが荒い、ナルシスト、自己中心的であるなど、性格にかなり難ありの様です」
「確かに、小国の割には、立派な着物を着ていたわ。私に会うために新しく作ったのだと思っていたけど、そうじゃなかったのね」
花は、思い出して憤った。
「何回も、水面に映る自分を見たり、少々わがままだったのも性格だったのね、やっぱり、刀助は最悪だわ」
「でもね、この情報じゃ、相手はゆるがないのですよ。何か犯罪でも起こしていれば、切り込めるのですが……」
「そうね」
刀助と言う男は、わがままではあるが、絶対に犯罪を起こさない小心物の様だった。
(何て、うまく生きているの?)
「人を殺す事もあるみたいですけど、適当に犯人をでっち上げているし、本人がしたことじゃない、何て難しい相手なのだろう」
類は、お手上げの様だった。
「陽太なら、何か調べられたかしら?」
書庫へ走った。
● 〇 ●
書庫に着くと陽太は、夢中で本を読んでいる。声を掛けづらいので、しばらく見つめていた。
「……」
「……」
じーっと陽太を見ていると、陽太の方が気が付いたようで。
「花様、来てくれたのですか? もしかして、僕に見とれていたのでしょうか?」
「いいえ、わかっているでしょう、私がここを訪れたわけ」
「はい」
陽太は、本を開いて指差した。
「実は、手山国は、花様との婚約中、別な方とも婚約しているようです」
「うそっ!」
よく見ると、文献には、花にふさわしくない相手の理由の所に保険にしていると書かれていた。
「本当の事の様ね」
「ただ、これだけじゃあ、何にもできないんですよ」
「なんで」
「保険と言うのは、結婚の事じゃない可能性もあるからです。確実に婚約を保険にしていた証拠が無ければいけません」
「なるほど」
「そして、花様に不利な証拠が出てまいりました。破談になった時の書類なのですが、手山国は、大本には判を押しています。だが、完璧に切るための書物に判をしていないのです」
「!」
花は、口を押えた。実質破談になっていなかったのだ。
(どう考えても、あちらが有利だわ)
冷や汗が流れる。
「手山国の刀助の後見人がうまくやっているのだろうね、後見人さんは、素晴らしいと思います」
「そうね」
「大丈夫ですよ、花様、花様を渡したりしないから」
陽太は、目に力を込めてそう言った。
(陽太は、意地でも守る気でいるのね)
「手山国との不和は、婚約のことだけではありません、そこをついていけば、何か出てくるはずです」
陽太は、本を持ってそう言う。
「それなら、大丈夫ね」
「はい、花様、その代わり、僕達の花でいてくださいね」
「ええ」
陽太の切なそうな表情が目に焼き付いた。
(陽太は、余裕そうなことを言っていたが、まだ、何一つ見つかっていないのだから、不安なのだろう)
最悪、奪われることも考えているようだ。
花は、今の自分に出来ることは少ないので、部屋に戻って蝶達を思っていた。
(みんな、がんばってくれているんだもの、何かしたいわ!)
少し考えて、お菓子を差し入れしようと思ったのだが。
「花様のお菓子は、村の者が作って献上した物ですよ」
乙にそう言われて、作ろうと思ったなどと言えなかった。
「その、献上してくれた品は?」
「食べ物を管理する者が管理していますよ」
「あの、文を添えて、蝶に贈るのは、だめかしら?」
「文を添えるのですか?」
「はい」
花は、筆を持ち。
『ありがとう、感謝をこめて、蝶の方々へ』と三枚書いた。
(これで、少しでも伝わるといいな)
匂いの付いた和紙をはさみ、お菓子の横に添えた。陽太のいる書庫、類の自室、そして、武官の部屋に置いた。
花が選んだ物は、甘いまんじゅうと、渋いお茶である。季節の花を添えて、きれいに見えるようにしていた。




