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次の日も、刀助は、めげずに褒めちぎっていた。
(面倒くさい人ね)
花は、心の中でそう思っていた。姫と言う立場上こういう事は、よくあるのだ。
「蝶などと言う庶民より、俺のような王子の方が、君を幸せにできると思うのだけど、どう思いますか?」
「そうね~、私には、わからないわ」
(蝶の人の方が、何倍も格好いいわよ)
花には、蝶の人達は、裏が無いように見えた。花に、真実しか見せなかった様に思えたので、信頼できると思っている。
「花様?」
また焼けるようにあざが痛む。
(痛い)
痛みをこらえるのに汗が流れる。
(苦しい)
花は、刀助を見るのをやめて、あざを押えた。
「どうしたのですか?」
「あなたは、さっきまで、私を見ていたわよね? それなのに、気付けなかったの? 私が苦しんでいた事」
汗を流しながらそう言うと、刀助は、真っ青になる。
「大丈夫ですか、花様」
「近寄らないで」
あざは、刀助を拒んでいる事が良くわかった。
蝶制度と言う物は、花を守っているのか、それとも喰っているのか、わからないので、恐怖も生まれた。
「乙、私、刀助がダメみたいなの」
「そうみたいですね」
「蝶に会いたい」
ばたりと部屋で寝ついてしまった。
● 〇 ●
目が覚めた。そこには、陽太と才我と類がいた。
「みんな……!」
「お目覚めですか、花様」
類が優しくそう言う。
「なんで、みんながいるの?」
「乙様に呼び出されてしまいまして、心配したのですよ。乙様は、花様が、倒れたと言っていたのですから」
才我が照れくさそうに言う。
「乙、呼んでくれたの?」
「はい、花様が、蝶に会いたいと申しておりましてので、走って呼びつけました」
「ありがとう」
「ところで、あざが痛むそうですね」
「はい」
「実はね、僕達も最近何度か、蝶のあざが焼けるように痛んだんだ」
陽太があざを押えてそういった。
「それって、いつ頃だった?」
「この前の、昼の職務中」
「私は、午後の計算中」
「俺は、トレーニング中」
「それって、もしかして、同じ時間?」
「「「!」」」
「確かに、そうですね、太陽の位置を覚えていますか?」
「覚えていないよ、でも、もうすぐ夕日が出る時間だった」
「確かに、僕もそうだった」
「その時間、私のあざも痛んだの、刀助に迫られて困っていたら、あざが急に痛みだしたんだもの」
「大丈夫でしたか?」
陽太が、心配そうに訊いてきた。
「少し痛んだだけよ」
「そうじゃなくて、その男に何かされましたか?」
「いいえ、ただ、ほめちぎられたわ」
「そうですか、花様の好みじゃなかったようですね」
花は、何を心配しているのか、わからなかった。
「私達は、花守りの蝶です。花様が嫌だと思った時に、助けに行くように痛むのかも知れませんね」
類は、頭をひねっているようだ。
「蝶と花の絆は、深いのかもしれないですね」
「そうね」
花と蝶の絆と言うが、本当にこれは、絆なのだろうか?
花は、疑問に思っていた。
「花様、元気を出してください」
陽太が陽気に花の背中を押す。
「そうね、いつまでも沈んでなんかいられないわね」
「陽太様、上司がお呼びですよ。類様も書類の催促が来ていますよ。才我様も指導している弟子がお待ちですよ」
乙が、三人に出て行くように言った。
「そうでした」
「仕事中だった」
「弟子が待っている」
三人は、本当に用事があった様で、急いでいなくなった。
「みんな、私の為に来てくれたのかしら?」
「そうに決まっています。あの方々は蝶なのですから」
「そうよね、蝶だものね」
少しばかり、蝶と言う言葉で三人を縛っている気がした。
「みんな、花様がお好きなのですよ」
「えっ、好き?」
「はい、花として、立派に蝶を魅了したのですね」
花は、あまり心当たりがなかった。ただ、三人と、仲良くしていただけだったと思っていた。
「花様の母君も、三人の蝶に見事に愛されていらしたのですよ」
「そうなの」
「私が、仕える前でしたので、もちろん、ウワサですけどね」
乙は、笑顔でそう言った。




