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花守りの蝶  作者: 花言葉
とても迷惑な求婚
10/33

1

 次の日、刀助が、馬に乗って鈴蘭国を訪れた。

「こんにちは」

 刀助は、黒髪の美しい、美形で、さわやか、女の子なら飛びついてしまうような見た目だと思った。

(騙されないんだから)

「久しぶりだね。美しい花」

 ナルシストの様にそう言い、花の手を取る。

「そうね、久し振りですわね」

 苦笑いを浮かべて、返事した。

(ああ、この人、とても苦手な方だわ)

 刀助を嫌な物を見る目で見つめていた。ところが刀助は、その後も、花をほめちぎっていた。

「あ、ありがとう」

(ほめておけば喜ぶような、軽い女じゃないって言うのに、なめられているようでイライラするわ)

 刀助の恰好の良い顔が残念に見える。

「そんな素晴らしい花様に、ぜひ、私の妻になってもらえればいいのにとずっと思っていました」

「そうなの、でも、私は、蝶制度と言う物で、すでに婚約者がいるの、だから、ごめんなさい」

 花は、申し訳なさそうにそう言った。

「花様、そんな嫌々結婚するのではなく、気が合う人と結婚すべきです」

「そうかしら」

(あなたとは、気が合うわけがないでしょうけどね)

 花は、心の中でそう思っていた。

「その蝶と言う輩も大した人ではないのでしょう?」

「そんなことないわ、みんないい人よ」

 刀助は、眉をあげて、花を見つめ。

「ずいぶん、ご執心なのかな?」

「えっと……」

 困っていると、王が入って来た。

「亀壺君、出迎えに行けずすまなかった」

「いいえ」

 刀助は、笑顔を浮べる。

「でも、昔、婚約していたはずの花に婚約者もいて、俺を嫌っているのは、なぜなのですかね?」

「えっ?」

 花は、刀助が何を言っているのか、わからなかった。

(婚約なんて、していないわ)

 王は、冷や汗を流して。

「その婚約は、実は、五年前に破棄されているのです」

 刀助は、知らなかったと顔で言っていた。

「そんなはずは……」

「刀助の父上が、別な女性と婚約したいと断ってしまったのですよ」

 刀助は、しまったと顔で言っていた。

「でも、俺の心は、花様の物です。もう一度だけ婚約をし直せないか、考えてみてください」

「……」

 王は、悩んだ。

「少し考えてみよう」

「本当ですか」

 刀助は、嬉しそうである。

(お父様、しっかりお断りしてくださればいいのに、なぜ、お受けするようなことを言うのですか……)

 花は、心の中で、イライラしていた。

「それでは、花様、俺達も親睦を深めよう」

 向かい合い、話をすることにした。乙がお茶を持って来て、花の横に座ったが、部屋は静まり返っていた。

 しばらくして、刀助が口を開いた。

「君は、好きな人が出来たのかい?」

「えっと、え~? どうかしら」

 適当に答えた。

「私は、花様、君が大好きだった」

「ええ~……」

 下品な声を出してしまったので、口を押えた。

「婚約した日から、君を想わない日は無かった」

 花は、どうしていいかわからなかったが、心も体も、刀助から離れたいと思っている事だけは分かった。

(この人は、好きじゃない。大体、婚約者を乗り換えて置いて、手のひら返し何て、最低な人のする事よ)

 そう思っていた時、花のあざが焼き付けるように痛んだ。

「やっ、いたっ!」

「どうしたのですか? 花様」

 刀助は、心配して近づいてきたが、手を広げて追い払い、乙を呼んだ。

「乙、あざが痛むわ」

「大丈夫ですか?」

 そそくさと部屋に戻り、布団に寝かされた。

「乙、風邪じゃないのよ」

「でも、お医者様が来るまで、じっとしていてください」

 布団の中に入っているとあざはだんだん痛まなくなってきた。

(気のせいだったのかしら? それにしては、痛かった様な気がするのだけど……何なのかしら?)


 ● 〇 ●


 二時間が過ぎ、医者が来て、何でもないと言われて、安心した。乙が、着物を着せながら、あざを見つめ。

「しかし、そうなると、このあざは、何かに反応する、魔法のあざなのではないでしょうか?」

「蝶以外の男に反応するとか?」

「はい、そうかと思います」

(蝶制度中は、浮気が出来ない様にでもなっているのかしら?)

 廊下で声がする。

「鈴蘭国を手に入れるためなら、あの女位、落として見せるさ、女は単純な生き物だから簡単だ」

 刀助の声だった。

(やっぱり、国の力が目当てだったのね)

 乙もその声を聞いていた。

「一階の声の様です。何かに反響して聞こえたのでしょう」

「そうね」

「これは、私の予想ですが、花様のあざは、花様に危機を教えてくれているのかもしれませんね」

「そうかもしれないわね」

 あざをみつめて、そう言った。


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