索敵
【2019年7月8日 対馬海峡上空 午前10時12分】
「いやぁ、レーダーが有るとはいえ、こんなだだっ広い海の上でゴマ粒みてぇな船探すなんて、手間かかんなぁ。」
「でも、クルーザー程度の大きさなら何とかなりますよ。」
「漁船みてぇなやつはどうすんだよ。」
「……頑張ってください。」
F-2A二機は基地を発進した後、所属不明の艦艇が交戦意思があるのかどうかを確かめるため、艦艇を探していた。
チャフやフレア、対艦ミサイル等を搭載し、厳戒態勢で臨んでいた。
「まぁ奴さんに交戦意思があるにしたって、こっちが攻撃出来るかっていう話なんだがなぁ…」
「平和憲法について今一度国民全体が見直す機会が必要ですね」
「無闇矢鱈に戦争しろとは言わん、だが
非常事態のことも考えてくれって事だ。理想だけでもう国際社会では通用しない。」
「いやぁ、沖縄に米軍基地があって助かりましたよ。無かったら今頃どうなっていたか…。」
「そいつは北の国か?それとも中国か?」
「どちらにせよ、米国のバックが抑止力になっているので、まだ少し安心できますね。」
「米国基地はミサイルやらなんやらが飛んできても一々許可取らんで破壊するだろうしな。」
『«お前達、無駄口が多いぞ»』
無線越しにE-767から警告が飛んでくる。
もう訓練中の恒例行事となっているが、今は状況がまるで違う。
「へいへい、AWACSさんすいません」
『«………また減給を喰らいたいのかね?»』
「まずそんなことより総理大臣でも官房長官でもいいから万一のための攻撃要請をしてくれよ。こちとら命賭かってんだ」
『«まずは船影の補足を行え。話はそれからだ。»』
「……………俺コイツ嫌いだわぁ。」
「そういえば北朝鮮の総書記は2018年末の労働党内のクーデターが成功してから金韻縡になっていますが、最近見ませんね。核実験やミサイル実験にも立ち会っていないようにも…」
「金韻縡本人は元々前の総書記と妾との子だから、平民を第一に考えた北米寄りの政策を取り、国際社会との足並みを揃えようとして、核、ミサイル開発は中断、破棄していた。粛清なんてのも無くなった。もともと自分の母親が好きでもない総書記の妾になっていたのが嫌だったんだろう。少なくとも、先代までが行ってきた政策は殆ど潰されたしな。先代までの総書記の残虐っぷりは例を見ないし、兵士達のクーデターも成功したと言って良い。ただ、社会主義を徹底的に貫き通し、北米や欧州、NATOとかを徹底的に嫌う奴等からは疎まれていただろう。」
「敵は多かったんですね…」
「むしろ敵ばかりさ。そこで、今年年4月頃からさっぱり姿を見なくなっただろ?そして、核、ミサイル開発が再開され、再び輸出制限がされ、粛清も日常的に…何の因果関係も無いとは思えない。徹底的社会主義、西側諸国排斥の将校達の独断か、それとも…」
「......!大尉!あれを!」
「どうやら、例のお客様のようだ。...海保の巡視船もいたな。手厚い待遇だ。とりあえず上空にて待機、指示を仰ぐぞ。」
「了解。」
ノイズ混じりの音声が無線機から流れてきた。
«......よしっ、繋がった。こちら海上保安庁巡視船[ひりゅう]。航空自衛隊のF-2隊だな?»
「はい、こちら航空自衛隊築地基地所属第8航空団F-2隊です。」
«了解。只今本艦は不審船の対応にあたっている。貴隊の航空支援に感謝する。»
『«第8航空団に通達。ひりゅうの航空支援を行え。不審船の異常は逐次報告せよ。また、不審船には対空機関砲とSAMが搭載されているということだ。万一撃ってきた場合はフレアやチャフなどを駆使し回避せよ。しかし、不審船への発砲は禁ずる。»』




