4~2人の関係~
「そういえば、二人とも。種族と特性聞くのを忘れてた。……ちなみに僕は吸血鬼、特性は『自分に関する速度の変換』だ。…この特性についてはさっきの戦闘も含め、調査中だ。」
「ええと……私の種族は『天使』…特性は、ヒーリングね。ちゃんと確認はしてないけど。」
僕の問いにみゆが答える。
…天使。あからさまに凄そうだが、特性や種族に関して細かい説明が記されていない。
ヒーリング、はまさに回復系の特性だろう。自分専用なのか他人にも効果があるのかは分からないが。
「俺の種族は『巨人』…特性は……記載されていないな。」
巨人、というからには巨大化みたいなものがあるのだろうか。……レイチェルは、細かい事は端末を見ろ、とか言ってたけどどこにも細かい設定が見当たらないので分からない。
特性は記載なし、ということは特性に関しては人によって有無が異なるのだろう。
「そ、そうか。……とりあえず、拠点はあそこで良さそうだ。」
僕は前回のデパートより小さな、民家を指した。
その民家、中を探索したところほぼ崩れかけの廃墟となっており、今にも崩れそうだ。しかも使えそうな部屋も相当少ない。
……まあ、逆にそちらのほうがカモフラージュになるかもしれない。少人数である利点だ。
「今度こそ、眠りにつくとしますか…。」
けんじさんは荷物を降ろすと、ため息交じりに言った。
……今回は先のようなハプニングは起こるなよ…。
僕はまたしてもしっかりと眠りに就けなかった。…先のデパートのように二人が「始める」ことはなかったものの、元々睡眠時間が長い方ではないからだと思う。
『天使』や『巨人』などの種族に関しての情報が少なすぎる。どちらにせよ戦闘は繰り返されると思われる、情報を集める必要がありそうだ。
“俺”は眠りについた。
朝、目を覚ますと前回と同じく少し離れた場所で眠っていたミノル君の姿が見つからない。
「ミノル君は?」
俺はとなりですでに目覚めていた彼女、みゆきに問う。
「ミノルね~、よっぽど私達と生き残りたいみたいね。……私が起きる前からずっと外で走りっぱなしよ。」
「走りっぱなし?」
俺は聞き直すが、答えずにみゆきが指さした方向を覗き込む。
崩れ、瓦礫で坂ができた場所のその向こうの道路で青い閃光が長い道路を何度も往復していた。
走っているの意味は分からなかったけど、立ち上がらず俺はみゆきのほうを向き直す。
「ねぇ、昨夜のつづき、してくれないか?」
しかし、みゆきは少し頬を膨らませたので、
「そうだよね、無理だよね。……彼と話してくるよ。」
そう言って立ち上がった俺のズボンの裾をみゆきが掴む。
「ねえ、ミノルは多分、あなたに恩返しをしてあげたいんだと思う。」
「ん?恩返しって何の?」
「ほら、入学式。ミノルの事守ってくれたんでしょ?…あの子、そうゆうの気にする子だからさ。」
俺は軽くうなずくと、瓦礫でできた滑り台のようなさかをすべり道路へ出た。
「お、お~い!ミノル君?」
「ハ、ハイッ!?……ああ、けんじさんおはよう。」
道路を何度も往復していた青い閃光は止まり、ミノル君が目の前に現れる。
「あ、おはよう。…す、すごいね。何だい今の。」
「今のは……ただ…走ってただけです……。」
「あっ…そう…。」
ここで俺は昨日、ミノル君が言っていた彼の特性を思い出した。
「それで、みゆきに聞いたんだけど……入学式で絡んできた不良の事とか、色々と俺らのために頑張りすぎなくてもいいぞ。手伝えることがあったら言ってほしい。」
「ああ、うん。……ありがと。とりあえず、今のところ問題はそれぞれの種族や特性の詳細を把握する事だ。…ある程度戦闘した方がいいと思うんだけど、大丈夫?」
俺は少し顔をうつむけ悩む。
「……仕方ない状況だよな…うん、協力するよ。いざという時は君のほうが俺よりも頼れる気がする。」
“僕”はみゆを連れ、次の寝床を探すため歩を進めた。
このゲームの攻略法、必要な情報を得るための戦闘をすることだ。……しかし、むやみに戦闘を繰り返し命を危険に晒すのは愚策だろう。
戦闘は自己防衛のときのみ、その際に必要な情報を得る、というのが今のところ最も効率がいい方法だろう。
………なによりも先のけんじさんの言葉、僕は二人の命を任されている。
みゆの彼氏と知って僕の若い恋心は彼への敵意を抱いていたが僕が誰よりも、何よりも愚かだった。
彼を受け入れなきゃ…。従姉であるみゆが幸せなのは喜ばしい事じゃないか。
今朝、試しに少しの時間、いや結構走ってたか…。
走ってみて分かったことだが、やはり僕の予想は当たっていた。高速化できるのは移動速度や行動速度だけではない、思考速度もだ。……特性の名称の表記が気にかかっていたが、やはりそうゆうことらしい。
おそらく、細胞の活動を高速化して自己治癒も可能だろうが、なにぶん方法が分からん。……対して、思考速度だが、今朝走っていたおかげである程度は自分の走行速度に合わせて高速化できるようになっていた。
…………その時、僕らの足元に“4人目”の影があることに気が付いた。
どうも。実は6話執筆中のえじそんと申します。
こうゆう文章には全く慣れていない僕ですが、これからは前書き・後書きをできるだけ書いていこうと思います。
内容は分かりにくい設定の詳しい説明や雑談とかもあるかもしれません。最後まで読んでくれると嬉しいです。