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Speed to Misfortune  作者: エジソン/ezison
一章
13/16

13~虚構美少女~

 テツヤとその彼女、サユと合流して。

 僕ら合計8人は今まさに“ロボットポリス”と呼ばれるらしい、警察を感じさせる青と白を基調にした“変形不可機功種”との戦闘に勤しんでいた。

 テツヤとは……僕の記憶の一番古い一年、つまり13歳、中学一年生から中学卒業までの一番の親友だ。親友となった一番の理由はやはり、FPSという分野にお互い夢中だったからだろう。僕がこの“潜在意識の世界”に閉じ込められたのは高校一年の春なので、それほど時は経っておらず久しい顔ではない。……種族“巨人”。特性“硬化”。

 一応までに。

 カヲル、自称であるが僕の兄。種族は“変形可能機功種(マーキナー)”。特性『液体金属』。この特性の簡単な説明として、銃や車など周りから金属類を“飲み込む”ことで自分の物とし、自身の身体を自在に変形させられるというものだ。

 続いてウルフ、カヲルの同僚…本人たち曰くスパイらしい…。種族や特性は教えてくれず、謎に包まれた状況である。ワイルドで陽気、人に好かれるような性格でありながらもまだ謎も多い人物である。


 女性陣。

 ジョリー、アメリカ人。特性の名は不明ではあるものの、天使の羽を模したような機械翼こそが彼女の特性だろう。すなわち種族は“変形可能機功種(マーキナー)”だと思われる。大人の女性らしい雰囲気を纏い、豊かな胸を持つ大人の女性だ。

 それにミユ、僕の初恋の相手……と言ってもまだ恋愛感情というものが理解できていないのが僕だ。従姉に好きだと感じるのは当たり前と言えば当たり前だろう。……種族は“天使(エンジェル)”。特性は“ヒーリング”詳細は不明。


 そして、シンディー。謎に包まれる美少女だ。



 僕とミユ、ジョリー、テツヤ、サユちゃんはある程度戦闘に慣れ、とは言ってもジョリーは僕を殺そうとした第一の刺客だからな、少しくらい訓練を積んでいたのかもしれないが。

 上記のメンバーに加え、スパイ集団…命名は僕だ…であるカヲル、ウルフ、シンディーちゃんの。

 全員、合計8人。

 「うわあああああああああああっ!」

前言撤回、メンバーのうちほとんど、というか7人は戦闘に慣れたようだが……前回までは前に立ってみんなを守ろうと気張っていた僕についてはもしかしたら以前よりも戦闘に関して弱くなっているかもしれない。

 ウルフ曰く、初めのうちは自分の思う存分“光”の力を利用できたため、超高速で行動・思考できていたが時間が経った今は思うように光が利用できない、つまり最初から調子に乗りすぎたんだ、とのことだ。

 「“光”っていうのは何です?」

「うーん、詳しい事は説明がめんどくさいんだが……。俺たち人間は潜在意識の世界では人間ではない姿に変わるんだ。ちょうど、吸血鬼とかそういった“人外”に。……で、人外ってのは実は現実世界にもいてな、最も身を潜めてはいるが。その人外たちが特性とか他の呪文、いわば魔法を使用するのに使う力の源だ。」

「ふーん」

そんな会話をしたのはこの戦いが始まる前だ。


 そして今現在、僕は襲い来る大量のロボットポリスから必死に逃げていた。戦闘は決してか弱くはない女性陣に丸投げして、僕はある程度遅くなってしまった高速移動で。

 「戦えよ!」

とジョリーは文句を吐きながら空へ飛び上がり大量のミサイルの雨をロボットポリスどもへ降らした。

「そりゃ、多少気楽だろうよ、お前は!だけどあいにく僕は空を飛べないんでね」

「あんなかっこつけてたくせに!」

違う違う、あの時の僕が強すぎたんだよ。むしろ今の僕が正常なんだよ。という言い訳を逃げるのに必死な僕は口に出すことができなかった。

 あのミユですら、新たに買ったのか盾を利用しながらうまく戦っているというのだ。

 この時点で戦っていないのは僕とサユちゃんだけだった。


 このままでは格好がつかない、というものだろう。僕は振り返ってこちらにMP5の銃口を向けるロボットポリスに睨みつける。



 「サユちゃんってさ」

「はい」

戦闘が終わった僕らは、来たる最終戦争に向けてマップを徘徊、銃器やその他のアイテムを探し回っているところだった。ちなみに、今のところ成果はほぼ無い。

 しかし、あえて言うならば9mm弾10発、鉄製の古いヘルメット一つといったところだ。もちろん、使い所などなくカヲルが食べる事になった。

 それにしても、カヲルが、というか人間が鉄を食べる姿はなんともシュールなものだ。

「テツヤくんとはいつから付き合っているの?」

「えっ」

サユちゃんはそんな声を漏らすと顔を赤らめる。ただの暇つぶしのつもりだったんだけど、彼女は黙り込んでしまった。

 一応として。

 彼女の容姿は、茶色がかったショートヘアーで低身長、ミユにも負けない巨乳の持ち主である。いや、ミユよりも大きい気がする。うん、大きいな。

 無論、年齢の重ねて思春期と呼ばれる時期に入った今でも僕は親友の彼女に萌えたりはしない。

 たまたま、パンツが見えてしまっても。

 たまたま、はだけてしまっても。

 僕はそっと目をそらすだろう。

 僕は親友の彼女に萌えたりしない。


 「えっと、答えにくいなら答えなくてもいいよ。ごめん。」

「ありがとうございます。」

何故、感謝されるのかは一切分からなかったが、まあいい。

「ミノルさんは…」

「うん?」

「ミノルさんはテツヤ君とはどうゆう関係なんですか?」

ふと、サユちゃんは言う。

「うーん、どう出会ったかは正直覚えていないんだ。でも中学校3年間を楽しく過ごした仲だよ。」

と、僕。

 実はテツヤ君とはFPS仲だ、とか、まあ中学卒業してから僕は引きこもってて会ってないんだけどね、とか……そんな無駄な事実を伝えようともしたが、それはテツヤ君に失礼だろう。

「ところで、サユちゃん。度々話を変えて悪いんだけど、種族とか特性って教えてもらえる?」

「ああ、えっと。それ、テツヤ君にも聞かれたんだけど……種族は“竜使い(ドラゴントーカー)”って言うんですけど、よく分からなくて。特性はないみたいです。」

と。

 「おい、カヲル。聞いたか?」

「ああ」

反応したのはウルフとカヲルだった。

 聞くと。

 「人外にはな、特有の社会っていうのがあってだな。元を追えば、“賢者”と“戦士”、“暗殺者”という3つの派閥に別れていたんだ。……それぞれの派閥に“機功種”、“伝説種”、“亜人種”の3つの種族がひと種族ずつ所属している。」

長い長いその説明に、僕らがついていけるように「それで」とウルフは間を置く。

「その3種族×3派閥の9種族以外の種族の人外は“無派閥”と呼ばれているんだ。……人外全体の7割をこの無派閥が占めていることもあって、この派閥制度はすでにほぼ廃止状態だ。……しかし、どの派閥に参加しようとも、どんな種族が参加しようとも、それが自由になっただけで。バランスを保つために3派閥から代表(リーダー)をひとりずつ決めて治安を保っているんだ。」

ここでウルフは再度「しかし」と間を置く。

「その派閥間の状態は今までかなり良好だったんだが、賢者のリーダーが変わってからというもの、少し緊張状態にある。……ドラゴントーカーはその名の通り」

 ドラゴントーカー、竜と会話する者、つまり竜を操れるのだ。と。

「派閥別のリーダーなど関係なく、それだけで人外の王になれる力を持つのが“竜使い(ドラゴントーカー)”ってことだ。」

 長くなってすまない、と。ウルフはサユのほうへ目を向けた。

「それが、こんなところにいたとはね。」

「サユは、連れていかせませんよ。」

突然、テツヤ君は言った。

「もちろんだ。俺たちは王座なんぞ興味ないのでね。彼女を守るくらいの事はさせてくれ」



 「兄貴」

その夜。

 テツヤ君の信用を手に入れたウルフと、シンディー…ちなみに正しくはシンディらしい…とミユ、ジョリーはその廃墟を寝床にしていた。

 テツヤ君とサユちゃんは別の建物みたいだが。


 ともかく、僕は雪の積もった屋上で兄である…らしい…カヲルの二人っきりの状況だった。

「なのか?本当に」

と問う。それにカヲルは無言で頷いた。

「だったらさ、どうしてそんなに何を警戒してるの?」

 「はあ。ほんとはあまり話したくはないのだが。」

カヲルは軽い溜息とともに姿勢を変えて、屋上特有の落下防止フェンスにもたれかかった。

「ミノルと俺はな、どちらも記憶喪失しているんだよ。原因はまだ不明だが」

そのためにスパイをやっている、という事なのだろうか?

「じゃあ、昔の事は全然覚えていないんですか?」

「ああ、すまない。……ただ、仲は良かった気がするんだ。弟にだけは心を許せる、そんな関係だったように思う。」

 それでも、知りすぎるのは怖い。そんな事、この数年のスパイとしての活動で十分に実感しているんだ。と。

 やはり、よくわからないままな所が多いが、少しは理解できたような気がした。



 それから。

 カヲルはもう少しここにいる、と言うので僕は一人で皆の眠る屋内に降りて行ったわけだが。驚いたことである、シンディは立ったまま皆を見守っていた。さすがといったところだ。

 「驚いたな、こっちの世界でも眠くなるのに。」

「私は、元の世界でもあまり眠らない」

と、シンディは。いまだ無表情ながら言った。話してくれたという事は僕に少しくらいは心を開いてくれたという事なのだろうか?……いや、そんなことないか。


 「田中ミノル、私には感情がない。」

唐突な彼女の告白だった。

「な、う、うん。」

 何故、僕だったのかは分からない。

 だけど。

「感情を取り戻す手助けをしてほしいのだが。」



 次の日。

 僕らは前日と同じようにアイテム集めに出た。

飛行船本体にいる…と考えられる…レイチェルを殺すためには飛行船に潜入することが必要だが、入る方法などは考えているのだろうか?

「兄さん、ウルフ、準備が整ったとして、飛行船まではどうやって行くつもりか決めてるの?」

「ああ、もちろん」

と、ウルフは雪に埋もれた廃車の残骸をどけながら答えた。

「お前の兄貴が飛行機かロボットにでもなってあそこまで飛んでいくのさ。そうすれば飛行船内部の敵しか倒さずに済むしな。無駄さ戦闘はなるべく避けたい。」

「……え、ってことは、どういうこと?……兄さんはロボットならまだしも、飛行機の形に慣れるだじゃなくて空も飛べるの?」

と続けて僕が質問する。仕事をする手を止めはしなかった。

 「空を飛ぶくらいなら。弾を体内で作って発砲だってできる。」

ど、どうゆう設定なんだそれ?世界中の科学者が寄ってたかって解剖したくなるような体内だな。

「へ、へえ」


 生存者18人。そのうち8人が僕らであり、プレデターが残り10人のうちに何人入っているかはまだ分からないが、せめて、生き残っている生徒だけでも救いたい。

 そして。

 そして、僕自身もこの仲間たちと生き残る。プレデターとレイチェル達の目的を突き止めねばならないんだ。


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