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Speed to Misfortune  作者: エジソン/ezison
一章
12/16

12~兄弟?~

 「離せ!……もうお前は僕には必要ないっ!なんでここにいるんだ!」

ミノル?は起き出すや否や怒号を上げた。

「黙れ、何も覚えてないだろ。…ミノルを出せ、主人格だ。」

「また騙すつもりか!?」

「騙す?」

 大きなロボットとの激しい戦闘も決着がつくころ、さっと現れた男二人にミノルが攻撃され、気絶。……私たちも誘導され、今に至る。

 ミノルは拘束された腕を無理矢理にでも解こうと暴れる。いったい何の話をしているのかミユには分からなかった。

 ……ミユに分かったのはこの男性の正体だけだ。


 『記憶の共有とかは?』

僕は白い部屋で問う。

『記憶の共有って?今、君は“君じゃない君”が戦っているのを見ただろう?』

と、白髪の幼い少年が答える。

『だけど、僕達3人が“ここ”でお前と出会う前に見ていた記憶をお前に渡すわけにはいかない。』

今度は眼鏡の青年が付け加えて話す。

 『どうして?』

と問うが、ちょうど赤眼の少年が戻ってきてしまった。

『行かなきゃ。』



 「っ……。おはよう。」

目を覚ました僕は視界に移る4人に時間外れの挨拶を放つ。

「ミノル…?」

ミユは心配と不安が混ざった表情だ。

「俺が誰か分かるか?」

と声をかける金混じりの黒髪の男。鋭い目つきに長身、筋肉質な身体を高そうなスーツで包んでいた。

「いや誰です?」

僕の返答に男は安堵なのか呆れなのか、ため息を一つ吐いた。

「俺は?」

「あなたも分かりません」

続いて銀髪オールバックの男もだ。同じく、長身で筋肉質な身体をボロボロの迷彩服で包んでいる。そして二人揃ってクールな雰囲気をまとっていた。先の、ロボットとの戦闘の終盤に現れた男たちみたいだ。


 「俺の名はウルフ。」

銀髪オールバックが名乗る。

「それでこっちが同僚の…」

「…カヲルさん……」

ミユが続きを言った。

「知ってるの?」

僕の問いに今度は、カヲル…金混じりの黒髪が

「久しぶりだな、みゆきちゃん」

と続けた。

「お久しぶりです、カヲルさん」

「ちょ…ちょっと待って。話についていけないんだけど。」


 とりあえず移動しながら、とどこか目的地があるのか一旦その場を後にした。

「それで、ミユとカヲルさんは何の関係があるんです?」

僕が歩きながらジョリーを除いた他の3人に問う。

「カヲルさんは……」

ミユが言いにくそうにすると、

「……ミノル、お前の兄だ。」

と、カヲルが続けた。

 「ミノル、お前は生まれてから12年間の記憶がないな?」

「う、うん…。」

先にも説明した通り、僕は生まれてから12歳までの記憶がないのだ。僕は誰よりも僕自身の事を知らない。

 「僕は……僕が記憶を失う前の話をしてくれませんか?」

僕がカヲルに尋ねると、カヲルは首を横に振った。その向こうでウルフも同じく首を横に振ったのが見えた。

「どうしてです…?僕が記憶を失う前の事を知っているんでしょう?」

カヲルは少しうつむき、考え込んでから顔を上げると、

「部分的に切り取って話そう。」

と言った。ウルフはその向こうで不満そうな顔を浮かべた。

 「少し長くなるぞ…」

と、カヲルは前置きをした。

「……俺とミノルはだな、今はあんまり詳しくミユちゃんやミノルには説明できないんだが、アメリカにあるとある富豪の子として生まれたんだ。…今は重要じゃないし、言ってはいけないことになっている。」

「どうしてです?」

「それも言えない。すまない。ここを出れたら説明できるんだがな。……とりあえず、必要最低限のことだけ説明させてほしい。……まず初めに、ここはゲームの世界。………ではない」


 僕の斜め後ろをつくミユが驚きの声を漏らす。驚いたのは当然僕も同じだ。

「じゃあ、ここはどこなんです?私達はどこに閉じ込められてるんですか?」

ミユが歩く速度を上げ、僕の隣に顔をひょこっと出して尋ねた。

「ここは、いわば潜在意識の世界だ。」

聞き覚えのある台詞な気もするが、なんだっただろうか。

「……言い換えれば無意識、夢の世界ってことになる。仕組みを理解するのは簡単ではないことだが、誰かが“サーバー”となりその人物の夢の世界、つまり潜在意識に()の複数人が“アクセス”すると考えてもらえればいい。」

 カヲルの説明に思考が追い付いていたわけではないが、なんとなく把握した僕は、

「ここで死ねば、現実世界ではどうなるんですか?」

と問う。

「目を覚ますだけだよ……本来はな。」

「本来は?」

「ああ……だが、今回の“サーバー”であるレイチェルは何らかの原因があり、この潜在意識で死ねば、現実でも死ぬ。」


 やっぱり本当だったか…。

僕とミユは状況を理解するのにしばし時間を使った。

「生き残る方法はないんですか?……だいたいどうして僕達が?」

「生き残る方法はある、潜在意識はいわば夢だからな。夢のサーバーとなるレイチェルを殺すだけだ。……奴が言ってた“最後まで生き残ったら”っていうのは無論、嘘だろう。初めからミノル、お前を殺す気で立てられた計画だからな。……何故お前なのかは分からない。ただし、俺たちがアメリカで行っているのはいわばスパイ活動だからな。考えられる敵は多すぎる。」

という説明をしたのはカヲルではなく、銀髪…すなわちウルフである。

 そんなお前らの犯罪行為の報いに、僕達罪のない生徒100人を巻き込むな、というのが僕の持った“この時点”での本音だったが。

 「……さらに重要なことは、彼らが未来から聞いてることだ。」

「未来?」

「ああ、未来。()だ来ていない、で未来だ。」

いや、それは多分間違っているけれど。


 僕らはそれから、ウルフと兄の言う協力者を探して少し歩き回った。その間、わかったことは少なくあえて言うならば、自分の兄が静かすぎることとウルフの性格がいかに雑で野性的、すなわちワイルドかだった。

 「ねえ、私なんでこんな訳の分からないことに巻き込まれてるの?」

「……お前が大事な人材であるミノル君の命を狙ったからだな。」

ジョリーの問いにウルフが冷たく返す。

「しょうがないでしょ!私は罠にはめられたの!」

「知った事か。……お前は確かうちの会社の下っ端だったな。あまりふざけた口を聞くなよ。どちらにせよ、復職はさせないが。」

「なんでよ!この子守りながら生き残ればいいんでしょ?……誰も殺してないし!」

「だから!……反抗的な口調で俺に話しかけるな、と言っている。この腐れビッチが。」

「なっ、バッ…ビッチじゃ……。」

 否定しないんだな。


 僕らの背後で足音がした。その音を僕は聞きつけたが、僕よりも早く、その鍛えられた反射神経で振り返ったのはウルフ、カヲルの二人だった。

 しかし、背後の建物の上、僕らの上空から降ってきたのは短めの黒髪を持った美脚とキレなくびれ、整った顔は無表情で、貧乳以外は文句のない美少女だった。

 「よう、やっと来たな。シンディー。」

着地した美少女にウルフが話しかける。少女は無言、無表情、しかしながら愛想が悪いわけでもなくぺこりとお辞儀をした。可愛さだけはジョリーやミユの二大美女にも負けていないんだがな。なんだろう、こうゆう無感情な子はどうも好きになれない。

 「協力者っていうのはこの子だけですか?」

「いや、まだいるよ。協力してくれるか、今から交渉しに行くんだけどね。」

僕の問いにまたしてもウルフが答える。兄だと言い張るカヲルは今になっては進んで話してはくれなかった。

 「……っ…!」

少女、シンディーと目が合った。瞬間、僕はさながらショットガンでも撃ち込まれたかのように地に尻をつけて転んでしまった。

「何やってんのよ?」

ジョリーが僕の顔を呆れたように覗き込み問うが、答えようがなかった。なにせ、僕にもわからないんだから。たった一瞬、一秒にも満たない時間で僕は彼女の視線から“恐怖”を反射的に感じたのだ。

 『うあああああああああああああああああっっ!』

『………』

『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!』

頭の中で、白髪の少年、赤眼の少年、眼鏡の青年と思われる3人の声が響いた。

『彼女を失いたくないっ!』


 ?



 僕らは雪の降る道路を、先と同じように6人で歩いていた。

「どうだ、どんな話を聞きたい?話せることなら話すぞ。」

カヲルは口を開かないが、と付け加えるのを避けてウルフが言った。アメリカ人らしいので敬称は省略させてもらう。あえてつけてもミスターだし、ウルフさんでは違和感があると思われる。

「うーん…」

いざ、聞かれてみれば意外とわからないものである。今まで、具体的には13歳から今まで、それ以前の事が気になった事は数えきれないほどあるし、それなりに調べてみたりもした。しかし、いざ聞かれてみたら状況もあいまって恐怖すら湧き出した。

「…そうですね……僕の生い立ちは語れないんですよね、」

それはつまり、何も聞けないんじゃないか、というツッコミはひとまず置いておくとしよう。

「では、兄と僕の昔の仲とか、あと昔の性格とか、今思いつくのはそれくらいですかね。」

「ふーん、なるほど。すまないが、当時の事はほとんど知らないんでね。カヲルから、どうぞ。」

やっぱりあんた何にも話せないんじゃないかあっ!

 「………当時は、どうだろうな。仲は良かったんじゃないか?周りに比べれば。」

軽い溜息を吐いたカヲルは曖昧にそう答えた。

『そんな、本当に忘れちゃったのか……兄貴。』

やはり、僕はこの男が…どちらかと言えば男らしい彼が…自分の兄だとは容易に信じられなかった。


 僕自身が口を開くことは減り、カヲルはウルフにたまに話しかけられるだけで、ミユとジョリーは僕の背後で女子間の友情を育んでいた。

 潜在意識の中の自分と向き合う勇気もない僕は無言でウルフの招く道をついていった。

 「えっと、シンディーちゃん、だっけ?」

僕はふと貧乳少女に話しかけた。何故こちらには敬称をつけたのかは僕にもわからない。ただ、ミユ以外の女性との接点なんて今まで…少なくとも13歳から…無に等しい。

 「?」

と無表情のまま首をかしげる。そんな可愛い顔もできるのか。チートキャラだな。

「えっと、どうゆう経緯でここにいるの?」

「?」

「えっと」

「……」

「えっと」

「……ここを脱出するまでは言えません。」

話せるのな。

 いけない、年上かもしれないのについタメ口で話しかけてしまった。それにさっき感じた謎の、恐怖にも近い感覚が気になりもする。

 「あなたもスパイ何ですか?」

少女はコクリと頷いた。今は彼女からあの感覚を感じることもなかった。

「ああ……それとミノル、その子には感情がない。」

ウルフは振り向いてそう言った。背後で話すジョリーとミユの声が止んだ。

 “彼女には、およそ感情というものがない”……それは恐怖にも近い感覚には関係はないと思われるが、この先僕が対峙しなければいけない問題のような気もした。



 どうやら、タイミング悪く交渉相手のところへ到着したようだ。

 そこには僕にとっては懐かしい少年が一人の少女を引き連れて歩いていた。


次回からもこれくらいの長さで書けるように精進します

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